トランプ大統領の発言には、これまでの外交や国際金融の常識から大きく外れたものが少なくない。国際関係には長い歴史の中で衝突を回避するために、はた目には不可思議に見える慣習があるが、これを無視することは不必要な摩擦を生む。また、貿易収支の赤字を「損失」と表現し、国際収支の黒字・赤字を企業損益の黒字・赤字と同じように考えているように見えるなど、企業経営者としての手腕はあるのだろうが、一国の経済や世界の政治・経済の運営には不安を覚えさせる。 2月10日に行われた日米首脳会談では、広範囲な経済対話の枠組みを新設することで合意し、麻生太郎副総理兼財務相とペンス副大統領がそれぞれの交渉においてトップとなることになった。懸念されていたような為替レートや自動車などの個別具体的な要求が持ち出されなかったことに日本国内では安堵の声が聞かれる。しかし、経済対話の中で個別の話は蒸し返されることになるだろうし、そもそ