Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                

すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【コパ・アメリカ総括】中島という怪物をどう手なずけるか?

2019-06-28 07:04:27 | サッカー戦術論
森保ジャパンのプレー原則のなさが生んだ鬼っ子

 コパ・アメリカを戦った五輪代表チーム(+α)には非常に好感を持った。コパ・アメリカという大舞台にビビることなく、また格上の南米代表チームにまるで怯むこともなく、真っ向勝負を挑んで攻撃的に戦った。

 上田や前田、安部、三好、板倉、大迫など将来性のある魅力的なダイヤモンドの原石がキラ星のように光を放つ。垂涎ものの楽しみなチームだ。これに加えて久保や冨安がいるのだから、ロジカルな戦術さえ仕込めばどこまで伸びるかワクワクする。

 だが同時に出た課題に目を転じれば、どうしても「中島問題」に行き着いてしまう。森保ジャパンという集団にはゲームモデルもなければプレー原則もなく、であるがゆえに中島は「自由に思うがまま」プレーしてしまうのだ。

 持ち場の左サイドから中へ、中へと絞り、より中央でボールに関わろうとする。これがセンターレーンに渋滞を引き起こす。そしてボールを失い相手ボールになれば攻め残り、プレスバックもせず守備ブロックに穴を開ける。ボールを持つと「まずドリブル」が第一選択であるため、南米のズル賢い手練れに見破られ集団守備で潰されてしまう。

 中島のこの傾向は第一戦のチリ戦でハッキリ出た。次のウルグアイ戦ではやや修正されたが、第三戦のエクアドル戦ではまたぞろ復活した。

 もし森保ジャパンにプレー原則があれば「なぜ原則を逸脱するのか?」と本人に問えば済む話だが、あいにく森保監督は「柔軟に」「自由に」という極楽頭だ。このチームには中島のプレイスタイルを規制する縛りがない。

 ふつうのサッカーチームなら監督が直接話して修正するが、「自由にやらせて化学反応を見る」という森保監督が果たしてそんな機能を発揮するだろうか?

 中島という武器は正しく使えば敵を木っ端みじんに粉砕する力がある。だが使い方をまちがえればチームの内部から腹を食い破って自爆する。

 果たして森保監督は、中島の首に鈴をつけられるのか? 森保ジャパンを死に至らしめるのは案外、「内なる敵」かもしれない。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【フランス女子W杯・決勝T】審判に盗まれたゲーム ~日本1-2オランダ

2019-06-26 06:36:39 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
熊谷のハンドで万事休す

 なでしこジャパンが迎えた決勝トーナメントの1回戦。立ち上がりこそオランダがポゼッションしたが、時間を追うごとになでしこのパスワークが冴えわたり、次第にオランダはロングボール頼りの攻撃になる。

 だが双方1点づつ取った1-1の後半46分、オランダのシュートが熊谷の手に当たりなんとPKを取られる。シュートが決まり、日本は万事休した。熊谷のハンドは故意でも何でもなく、まるで交通事故にあったような幕切れだった。これで日本は決勝トーナメントを敗退した。

 前半はピッチを広く使うオランダに対し、日本はサイドを使わず中央に固執し攻撃が煮詰まった。だが1点先行された日本が長谷川のシュートで同点にすると、足が止まり始めたオランダは次第にアバウトなロングボールに逃げ始める。

 こうなるとなでしこのペースである。ボールを回収した彼女たちは縦横無尽にパスをつなぎ、特に後半27分に途中出場した籾木がキラーパスを連発する。いまにも日本のゴールが決まりそうな雰囲気だっただけに、熊谷のハンドは痛かった。

 だがなでしこの冒険はひとまず終わったものの、若い選手を育てて世代交代を進め、チームを強化してきた高倉監督の手腕は光る。東京五輪に向け、彼女たちの未来は明るい。若いチームだけに将来が楽しみだ。メンタル面でチーム状態に浮き沈みがあるのが大きな課題だが、メンタルトレーニングの強化などで克服してほしい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【コパ・アメリカ】決定力を欠き決め切れず ~日本1-1エクアドル

2019-06-25 11:50:45 | サッカー日本代表
だがフレッシュな彼らは魅力的だった

 勝てば決勝トーナメント進出が決まる一戦だった。日本はショートパスをつなぎ、多くのチャンスを作る。だが絶対的なシュートチャンスを何度も逸し、結局、引き分けてグループリーグ敗退した。ただ日本は急造チームながら試合を追うごとにコンビネーションが高まり、今後に期待できる内容をしっかり残した。

 日本のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKが川島永嗣。最終ラインは右から岩田智輝、植田直通、冨安健洋、杉岡大暉。セントラルMFは柴崎岳と板倉滉。右SHは三好康児、左SHは中島翔哉。トップ下は久保建英、ワントップは岡崎慎司だ。

 立ち上がり、日本はハイプレスで入ったが、逆にエクアドルにポゼッションされる。一方、日本の最終ラインからのビルドアップに対しては、エクアドルは前から激しくプレスをかけて圧迫してくる。このため日本はプッシュアップに苦しんだ。GK川島がリスキーなパスミスをし、「あわや」の瞬間もあった。

 エクアドルはアバウトなロングボールを放り込んでくるが、バネの利いた身体能力を生かしてそれをチャンスに変える。フィジカルで劣る日本にとっては、ある意味やりにくい相手だった。

前半15分に中島が先制ゴール

 だが、その劣勢を吹っ飛ばしたのが、前半15分の中島の先制ゴールだった。岡崎の裏抜けに反応しスルーパスが出て、敵GKがクリアしたボールを中島が拾って力強く決めた。しかし、それに対しエクアドルも前半35分、右サイドからのクロスをゴールにつなげて1-1と追いつく。

 以降、ハイボールに勝てるエクアドルはロングボールに走り込んではチャンスを作り、かたや日本は持ち前のショートパスをつないで精密に組み立てる。まったくタイプのちがう対照的な両チームの攻防は、しかし奇妙に拮抗して一進一退になった。

 柴崎は自陣ライン裏のカバーリングにまで顔を出し、ボールをキープしては前へつなぐ。獅子奮迅の働きだ。中島は得意のドリブルと、マーカーを引きつけてからパス出しする使い分けが巧妙だった。また久保はハイレベルで細かな技術を随所に見せ、決定的なラストパスを7本も出して見せた。

上田と前田が決定機を作るが……

 後半に入り、森保監督は選手交代で均衡を破ろうと立て続けにカードを切る。後半21分に岡崎を下げて上田綺世を。後半37分には三好に代えて安部裕葵。後半43分には板倉に代えて前田大然と、次々に攻めゴマを投入する。

 これで勢いづいた日本は上田が絶妙なオフ・ザ・ボールの動きから見事にチャンスを作るが、決め切れない。前田にも絶対的なシュートチャンスが1本あったが、シュートが相手GKの正面を突いた。結局、日本は16本のシュートを放ち、うち7本が枠に飛んだが1点しか取れなかった。

 とはいえ、得たものは大きい。上田や前田が好機を潰すのがハデに目立つのは、それだけ決定的なチャンスを作り出せる事前の仕込みやスピードがあればこそだ。今後の成長に期待したい。

 日本はコパ・アメリカという大舞台を若いチームで物おじせずに戦い抜き、爪痕を残した。フレッシュな彼らは、実に魅力的なチームだった。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【コパ・アメリカ】エクアドル戦のスタメンは誰だ?

2019-06-24 06:50:16 | サッカー日本代表
ウルグアイ戦のメンバーがベースに

 さあ明日は決勝トーナメント進出を賭けたエクアドル戦だ。日本は他グループの結果により、1点取って勝ちさえすればグループ3位で抜けられる状況であり、エクアドル戦では絶対に勝利が求められる。ではその運命の一戦のスタメンは誰だろうか?

 森保監督は23日の記者会見で「ウルグアイ戦のメンバーがベースになる」と発言しており、とすれば以下のような布陣になりそうだ。

    〇岡崎(上田)
 〇中島〇久保(安部)〇三好
   〇板倉〇柴崎
〇杉岡〇冨安〇植田〇岩田
    〇川島

トップ下は久保か安部だ

 トップ下にはウルグアイ戦で先発した安部裕葵ではなく久保を入れたが、もちろんクオリティの高い安部の先発もある。

 ワントップは、「シュートを決める以外」の貢献度を買って岡崎とした。岡崎では点が取れないが、彼には前で潰れてもらって2列目が点を取る、という考え方だ。中島と久保、三好は積極的に裏抜けを狙ってほしい。

 または将来性のある上田綺世にもう一度チャンスをやる、ということも考えられる。

 上田は事前の仕込みの動きで決定的な形を作り出せるだけに、そのあと仕上げのシュートを外すと逆にものすごく目立ってしまう。だが、まったく気にする必要はない。シュートが決まるまで何度でもトライするまでだ。ただフィジカルが足りないのでプロの体を作る必要はあるが、未来に期待の大器である。

中島はドリブルを「見せ球」にせよ

 GK川島については、あのウルグアイ戦での魂のセーブを見せられては使わないわけには行かない。また柴崎はカバーリングやサイドチェンジなどで不可欠な中盤の核であり、貢献度は非常に高い。エクアドル戦でも期待したい。柴崎の相方は適任者がおらず悩ましいが、板倉に名誉挽回のチャンスがめぐってきそうだ。

 一方、中島に関しては、「南米の選手はズル賢い」ということを考える必要がある。立ち上がりに中島がキレのあるドリブルをすると、「コイツはやばい」と彼らは集団で潰しにくる。キリンチャレンジ杯のようなわけには行かない。いまのスタイルではコパ・アメリカでは通用しないかもしれない。

 とすればドリブルすると見せてマーカーを引きつけ、急所にパス出しするなどの工夫がほしい。「常にまずドリブル」でなく、状況に応じたプレイを期待したい。

 最後にCBの冨安、植田は不動。SBはウルグアイ戦でビルドアップに貢献した岩田、杉岡にがんばってもらいたい。

 さあ、決勝トーナメントめざしてエクアドルを叩こう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【コパ・アメリカ】攻撃的に戦うところに意味がある

2019-06-22 08:34:36 | サッカー戦術論
「5バックで守備的に」に陥らない

 今回のコパ・アメリカにおける森保ジャパンの戦い方は毀誉褒貶だが、ひとつだけ、認めてやりたいところがある。それは敵におびえ、勝ち点1を狙って守備的にやったりしない点だ。若い衆を集めて「おまえら、好きなように攻めてこい」って、えらく潔いじゃないか。

 日本サッカー界ではもう長い間、「結果を求めるなら守備的サッカーで」がスタンダードになっていた。実際、私も『日本が世界で勝つには? 結論なら出ている』という記事で、守備的サッカーのススメを説いたこともある。

 だが日本の状況は変わってきた。第一に、久保という若者が出てきた。そして森保ジャパンでは中島、堂安、南野という若手三銃士が結果を出している。先日もコパ・アメリカで、若い三好が胸のすくようなゴールを決めた。

 現にあのウルグアイ戦で日本は一歩も引かず、すんでのところでジャイアント・キリングを起こすところだった。

 ならばこの流れに乗り若手を盛り立て、そろそろ日本も攻撃的なパスサッカーで世界を目指すべきではないか? そんな機運が高まってきた。自然なことである。

ただし骨格になる戦術は必要だ

 ただし本能の赴くまま、自由に攻めればいいわけじゃない。

 まず森保ジャパンには、ヨーロッパ最前線の戦術を研究してほしい。例えばポジショナルプレイやトランジションを重視することだ。

 ボールを失ったら即時奪回を狙い、攻守の切り替えを速くしてリトリートせずその場でゲーゲンプレッシングをかける。これによりなるべく高い位置でボールを奪い、速いショートカウンターをかける。ヨーロッパの最前線ではスタンダードな戦い方だ。

 くれぐれもチリ戦のようにサイドハーフが攻め残りして守備の穴を開けるのではなく、もし第一プレッシャーラインを突破されたらSHがプレスバックしてスペースを埋め数的優位を作る。また同時に敵のカウンター攻撃に備えて偽SBを取り入れ、バイタルエリアを埋めておく。

 こんなふうにロジカルな戦術を備えた上で攻撃的に戦う。

 森保ジャパンには、ぜひそれを期待している。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【コパ・アメリカ】善戦したが勝ち切りたい試合だった ~日本2-2ウルグアイ

2019-06-21 13:05:42 | サッカー日本代表
チリ戦の課題を解消した好ゲーム

 日本は立ち上がりから立て続けにチャンスを作り、早々に岡崎がシュートを2本外す。悪い予感がしたが、日本は右SHの三好康児が前半25分と後半14分にゴールを決め、ウルグアイを引き離しては追いつかれる白熱のシーソーゲームに。勝ち切りたいゲーム展開だったが、最後は引き分けで貴重な勝ち点1を得た。

 日本のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKが川島永嗣。最終ラインは右から岩田智輝、植田直通、冨安健洋、杉岡大暉。セントラルMFは柴崎岳と板倉滉。右SHは三好康児、左SHは中島翔哉。トップ下は安部裕葵、ワントップは岡崎慎司だ。

 ウルグアイはボールを失うと、自陣にリトリートして低い位置に4-4のブロックを作った。これで日本にボールを持たせ、ボールを奪い返せば速いカウンターをかけるゲームプランだった。

 そのためボールを持てる日本はよくパスがつながり、多くのチャンスを作った。ただしウルグアイにも多くの決定機があり、日本の倍以上に当たる29本のシュートを浴びた。強いシュートが何度もGK川島の正面を突くなど、日本はラッキーな面もあった。

 日本は相手のビルドアップ時、ボールをもつ敵CBに対し、前線の岡崎と安部が横に並び、背中で縦のパスコースを切る守備をした。日本は中盤の守備もよく、チリ戦のようなチョンボがなかった。

 右SBの岩田と左SBの杉岡は落ち着いてボールをビルドアップし、特に岩田はスペースがあるとドリブルでボールを運べる。また三好の1ゴール目は、逆サイドにいた柴崎からのすばらしいサイドチェンジが光った。試合展開からいえば、勝てるゲームだった。

ネガティブ・トランジション時に切り替えが遅い

 ただし課題も残る。岡崎は「いったい何本外すんだ?」というくらいシュートを外しまくった。しかも選手交代ではその岡崎を残したまま、2ゴールを上げた三好を久保と代えるという謎の迷采配もあった。岡崎の守備に期待したのだろうが、あれはない。

 また日本の選手はワンプレイ終わった後に、切り替えが遅い。3人位がボールウォッチャーになり、ウルグアイにフリーでシュートを打たせていた。中島のドリブルも集中守備で対策され、通用しなかった。

 いい試合はしたが、CB植田の意味のないファウルでPKを取られ、1点を失ったのが痛かった。日本は終始先攻しただけにどうしても勝ちたいゲームだったが、あとは次のエクアドル戦に希望をつなぐしかない。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【フランス女子W杯】決勝Tへ向け収穫を得る ~日本0-2イングランド

2019-06-20 06:47:45 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
MF三浦とFW菅澤の起用で活路を開け

 立ち上がりからなでしこは、イングランドにポゼッションされ苦しんだ。だが後半16分にFW横山に代えFW菅澤、後半17分にMF小林に代えセントラルMFの三浦が入り、ペースをつかんだ。負けはしたが、決勝トーナメントに向けスタメン候補にメドが立った試合になった。

 日本のフォーメーションはいつも通り4-4-2だ。スタメンはGKが山下。最終ラインは右から清水、熊谷、市瀬、鮫島。右SHが小林、左SHが遠藤。セントラルMFは杉田と中島。2トップは岩渕と横山である。

 前半のイングランドは正確なパスワークでポゼッションし、ボールを出し入れしながら押し上げてくる。ボールスピードも非常に速く、最終ラインから緻密にビルドアップする。「ロングボールのイングランド」というイメージとは程遠いサッカーをしている。

 一方、前半のなでしこジャパンはボールスピードが弱く、パスの角度も悪い。特に縦パスが入らない。フリーランニングも少なく、動きながらパスを受ける選手がいない。また前からのプレスの仕方も整備されておらず、イングランドのビルドアップをうまく制限できていない。そのため前半の日本はイングランドの正確なビルドアップからの攻撃をまともに受け、完全に守勢に回った。

選手交代で息を吹き返した日本

 だが後半10分台にMF三浦とFW菅澤が途中出場し、なでしこは息を吹き返す。セントラルMFの三浦はフィードがよく、鋭いダイレクトプレイで流れを作る。非常にいい選手だ。

 また一方のFW菅澤は強さがあってポストになれ、思い切りのいいプレイが光る。メンタルの強い選手である。裏抜けからの前への飛び込みと、強引なシュートが利いている。

 一方、最終ラインでは、市瀬が正確でボールスピードの強いフィードできっちり組み立てる。市瀬はビルドアップに欠かせない選手である。

 こうして日本は三浦と菅澤の投入により流れをつかみ、まったく別のチームになった。負けはしたが、2位通過で決勝トーナメントに進出。選手起用のヒントも得られたゲームだった。

 日本は決勝トーナメント1回戦でE組のオランダ、またはカナダと当たる。では、スタメンはどう組むべきだろうか?

 まず2トップは菅澤と岩渕で決まりだろう。一方、セントラルMFコンビは三浦と杉田がベストだ。決勝トーナメントに向け、日本はこの4選手をセンターラインに起用し、活路を見出すべきだ。

【日本の予想ベスト布陣】

    〇岩渕 〇菅澤

〇長谷川 〇杉田 〇三浦 〇中島

〇鮫島 〇市瀬  〇熊谷  〇清水

       〇山下

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【コパ・アメリカ/チリ戦検証】当たり前のことを、当たり前にやる

2019-06-19 06:08:05 | サッカー戦術論
平凡であることの大切さ

 0-4で負けた昨日のチリ戦を振り返れば、日本は随所で当たり前のプレイで負けていた事実が浮かび上がる。もちろん技術や経験の差によってもちがうが、当たり前のことを当たり前にやることの大切さを思い知らされた一戦だった。

 たとえば競り合いになったらカラダを入れ、ガッチリ1対1に勝つ。サッカーはその積み重ねだ。チリ戦ではこのインテンシティの高さで日本とチリの間に大きな差があった。また次のプレイに移行しやすい最善の位置にボールを正確にしっかり止め、しっかりと正確に蹴る。これも日本はできてなかった。

 ルーズボールには相手より素速く反応し、予測を速くし相手より先にマイボールにする。そしてイージーミスを絶対にしない。基本に忠実にプレイする。この点でも日本は劣った。

 また戦術的には、チリは(チリから見て)右サイドに開いてポイントを作り、サイドからクロスを入れてくるフィニッシュが多かった。日本はそれに対応してポジショニングを修正する必要があった。

 具体的には、中島が攻め残らず、しっかりプレスバックしてスペースを埋めると同時に数的優位を作るべきだった。試合の流れの中で読みを利かせて選手自身にそれができればベスト。でなければハーフタイムに監督が具体的に本人へ指示すべきだった。

 フィニッシュについては、日本はきれいに崩し、きれいにゴールすることにこだわりすぎる。そうではなく、例えばスピードのある前田の前に広がる広大なライン裏に、多少アバウトでもいいからスルーパスを放り込んで走らせる。これでマーカーと競らせて強引にシュートへ行く。そんな割り切りも必要だった。

 21日のウルグアイ戦では、これら「当たり前のこと」をしっかりやりたい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【コパ・アメリカ】大舞台初戦、ド本番の厳しい洗礼 ~日本0-4チリ

2019-06-18 13:02:44 | サッカー日本代表
日本はもっとやれたはずだ

 チリは思ったより緻密さがなくユルいチームだった。だがその相手に日本は各所の1対1で負け、ボールを簡単に奪われる。あっけないほどすぐ失う。ルーズボールも拾えなかった。日本はイージーミスが多く、パスワークもぎこちない。すべてがたどたどしいまま終わってしまった。

 日本のフォーメーションは4-2-3-1。GKは大迫敬介。最終ラインは右から原輝綺、植田直通、冨安健洋、杉岡大暉。右SHは前田大然、左SHは中島翔哉。セントラルMFは柴崎岳と中山雄太。トップ下は久保建英、ワントップは上田綺世だ。

 チリは(チリから見て)右サイドが開いてポイントを作り、サイドからクロスを入れるフィニッシュが多い。だがわかっていても同サイドの中島が中へ絞るためサイドにスペースができ、吸い込まれるようにクロスを入れられる。

 特に前半は、別にチリが圧倒的にポゼッションしてくるわけでも何でもなかった。両者は拮抗していた。日本は試合を通してけっこうチャンスも作った。

 右SHの前田のスピードを生かし、ライン裏を狙うボールをもっと積極的に入れていれば……。そして、もし前半に1点でも取れていれば戦えたはずだ。だがワントップの上田が絶対的な決定機を4度も外したのが痛かった。

 チャンスを逃し続けていれば、勝利の女神は愛想をつかして去って行く。すべての流れが悪くなる。そんなゲームだった。相手は決して強くなく、日本はもっとやれたはずだった。だがこれがコパ・アメリカという大舞台、ド本番の厳しさなのだろう。

 救いは久保が随所に光を見せたことと、GK大迫がキック力と落ち着いたゴールキーピングを見せたことだ。次は21日のウルグアイ戦。前を向いて戦うしかない。このままでは絶対に終われない。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【コパ・アメリカ】久保と中島の2シャドーが見たい

2019-06-17 16:40:30 | サッカー日本代表
初戦チリ戦、攻撃陣が何点取れるか?

 さて、いよいよコパ・アメリカ初戦のチリ戦が明日に迫ってきた。見どころはズバリ、攻撃陣が点を取れるかどうか? 久保と中島の2シャドーが見たい。

 相手との力関係でいえば、守備陣が失点するのはある程度しかたない、と見る。

 それより若くてイキのいい攻撃陣がチリを相手に何点取れるか? そこに注目している。

 ひょっとしたら世界は、とんでもない出来事を目撃するかもしれない。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【フランス女子W杯】なでしこのパスワークが冴え渡る ~日本2-1スコットランド

2019-06-15 06:35:48 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
初戦から一転、積極的な別のチームに

 思った通り、なでしこジャパンは萎縮し消極的になっていた初戦アルゼンチン戦とはまったく別のチームになっていた。動きがよく、積極的だ。彼女たちのデキ不出来は完全にメンタル次第だ。なでしこの敵は相手チームでなく自分自身である。

 日本のフォーメーションは4-4-2。スタメンはGKが山下杏也加。最終ラインは右から清水、熊谷、市瀬、鮫島。右SHは中島、左SHは遠藤。セントラルMFは三浦と杉田。2トップは岩渕と菅澤だ。

 この日のなでしこの積極性は、持ち前のパスワークにはっきり出ていた。パスコースは積極的な縦か斜めが多く、中途半端なバックパスや横パスがない。ボールを決してムダにせず、必ずつないでパスワークを成立させていた。

 また日本の選手はスピードがあり、走り負けせずルーズボールに敵より先に追いつく。だからこぼれ球がみんな日本ボールになる。それだけよく走っているということだ。

波状攻撃で岩渕が先制ゴール

 なでしこの攻撃は単発で終わらず、二の矢、三の矢があとに続く。シュートのリバウンドを拾ってまた攻める、という波状攻撃ができていた。前半23分に1点目を取った岩渕のシュートも、そんな流れから生まれたものだ。

 一方、ボールを奪われてもすぐプレスをかけて敵を自由にさせない。ネガティブ・トランジション(攻→守の切り替え)がいい。初戦で目立った守備での当たり負けもなく、フィジカル的にも堂々と渡り合っていた。

 もっともスコットランドはビルドアップと中盤の組み立てはよかったが、肝心のフィニッシュがロングボールの放り込みばかりで日本とすれば守りやすかっただろう。

ミスからの1失点が痛い

 悔やまれるのは、後半35分以降に波状攻撃を食らう中で生まれたミスからの失点だ。ボールを保持したCB市瀬がぼんやりした甘い横パスを敵に奪われ、ゴールされた。

 市瀬は小柄だが球際が強く非常に頼もしい選手だ。ビルドアップの第一歩になるフィードもいい。Jリーガーやなでしこら日本人選手が当たり前のようにやっている緩慢な横パスが、いかに危険か? 市瀬にとってはいい勉強になっただろう。

 それにしてもこの1失点を除けば、なでしこにとってはすばらしいベストゲームだった。攻守に彼女たちのいいところばかりが出た。やはりなでしこの命運を握るのはメンタルだ。早急にメンタルトレーニングの強化を徹底してほしい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【フランス女子W杯】初戦引き分け、なでしこの逆襲はあるか?

2019-06-12 09:34:46 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
メンタルに火がつくのが遅いのはいつものこと

 なでしこジャパンはフランス女子W杯の大会初戦で、格下のアルゼンチン相手に勝ち点3が取れず引き分けに終わったーー。

 さあ大変、と世間では大騒ぎだ。だが結論から先にいえば、私はまったく心配していない。なぜならなでしこにとって、このテの展開はいつものことだからだ。

 例えば2017年末に開かれた東アジアサッカー連盟(EAFF)E-1サッカー選手権でも、なでしこは初戦の韓国戦(レビュー記事)に勝ったがまるでいいところなしだった。だが続く第2戦の中国戦(レビュー記事)では、まったく別のチームに変身した。原因は何か? メンタルだ。

 つまりメンタル起因で大会初戦にデキが悪いのは、何も今に始まった話じゃないのだ。現になでしこジャパンは過去にも今回同様の困難な局面で態勢を立て直し、盛り返してきている。

 さて、では次の試合はどんな展開になるのか?

 第2戦で戦うスコットランドは、初戦のイングランド戦で負けている。つまり彼らにとって日本戦は、絶対に勝ち点3がほしい試合である。とすればスコットランドは自陣にスペースができるのを恐れず、前にかかって攻めてくるはずだ。なでしこジャパンの思うツボである。

 攻撃が得意ななでしこにとって、敵に自陣へ引かれて守りを固められるより、「撃ち合い」になったほうが攻め勝つ可能性が生まれて有利だ。

 前がかりでくるスコットランドは、自陣に必ずスペースができる。なでしこから見れば、ボールさえ奪えばカウンターのチャンスになる。そこで確実に得点できれば、絶対に勝てる。

 次のスコットランド戦に期待しよう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【フランス女子W杯】大舞台に萎縮し力を出せず ~日本0-0アルゼンチン

2019-06-11 16:30:30 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
前半は持ち前のパスワークも鳴りを潜めた

 2019フランス女子W杯が開幕した。なでしこジャパンは、パルク・デ・プランス(パリ)で行われたグループリーグ初戦のアルゼンチン戦を惜しくも0-0で引き分けた。

 なでしこは大舞台での初戦とあって萎縮したのか、特に前半はボールがまったく足に付かない様子で、トラップミスしてはボールを弾いていた。

 それでも後半は持ち前のパスワークで相手ゴールに迫ったが、引いて守って引き分け狙いがミエミエのアルゼンチン相手に得点ならず。特に日本はフィジカルで劣るのが歴然で、ボールの競り合いになると相手にカラダを当てられ吹っ飛ばされていた。

 そこで思い出されるのはこの記事で書いたような、日本人のアジリティを生かした接触プレイすら起こらないようなスピーディーなパスサッカーだ。テクニカルななでしこジャパンが持てる実力さえ発揮できれば十分、実現できるスタイルだと思う。2戦目以降に期待しよう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【森保ジャパン】永井と久保が示した「個の力」 ~日本2-0エルサルバドル

2019-06-10 12:10:05 | サッカー日本代表
修正された3-4-2-1

 この日、3-4-2-1が2度めのお目見えをしたが、トリニダード・トバゴ戦のときほどの違和感はなかった。同戦とくらべ両ウイングバックのポジショニングが高くなり、敵のDFラインからのビルドアップを制限する「ハメる守備」もできていた。

 例えば4バックのエルサルバドルに対し、1トップの永井と2シャドーの南野、堂安がボールを保持した敵CBにプレスをかけてボールを右サイドに誘導し、右WBの伊東が前に出てボールを刈り取るプレー原則が利いていた。

 この日、右WBに入った伊東純也はスピード、反応ともにすばらしく、ボールを奪い切り込んで折り返すまでの動作に淀みがなかった。

 また右のストッパーを務めた冨安はポジティブ・トランジション(守→攻の切り替え)が速く、ボールを奪ってすぐ彼の1本目の縦パスが味方のカウンター攻撃の第一歩になっていた。逆サイドへと振る長いダイアゴナルなサイドチェンジのボールもすばらしかった。

永井と久保には継続的にチャンスをやるべきだ

 日本のフォーメーションは3-4-2-1(後半に4-2-3-1へ)。スタメンはGKがシュミット・ダニエル。3バックは右から冨安、昌子、畠中。右WBは伊東、左WBは原口。セントラルMFは小林祐希と橋本拳人。2シャドーは堂安と南野。ワントップは永井謙佑だ。

 セントラルMFの橋本は堅実に中盤のスペースを埋め、ボールを前へと配給する。及第点のデキだろう。日本がボールを握ったこの試合では、シュミット以下、守備陣には静かな時間が流れた。ただし冨安は守備とフィードに八面六臂の活躍だったが。

 前述の通り日本はウイングバックのポジショニングが高く、前からの守備と攻撃に利いていた。スピードで圧倒した伊東だけでなく、左の原口もアシストをマークするなどハードワークした。

 そして千両役者はこの日ワントップを務め、2ゴールを上げた永井謙佑である。ライン裏へのボールに反応して見せる裏抜けがシャープで、スピードスターの面目躍如。年齢を考えれば遅咲きだが、しっかり結果を出した以上は今後も使ってやってほしい。

 一方、この試合でA代表デビューしたトップ下の久保建英は、ワンプレイ見ただけでモノがちがうのがわかった。縦パスを受けて敵をかわし、シュートを打ったプレイでは、コンパクトな振りとボールの爆発的な球速に目を見張った。ボールを受ける前にもよく周りを見ている。

 結果を出した永井と頭角を現した久保には、今後も継続してチャンスをやるべきだろう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【森保ジャパン】このチームは劣化の一途を辿っている ~日本0-0トリニダード・トバゴ

2019-06-06 13:27:51 | サッカー日本代表
ぶっつけ本番(?)の3バックが初お目見え

 まるで試合前に全員を集め、「はーい、今日は3バックな」と、ぶっつけ本番で試合をやったような状態だった。森保ジャパンはお披露目のデビュー戦以降、数試合で見せた目の覚めるようなデキから一転、試合を追うごとに劣化している感がある。

 チームを貫く「約束事」のようなものがまるで見えないのだ。

 例えばジャズのライブでいえば、コンサート当日に数合わせで急にメンバーを集め、あとはぶっつけ本番のアドリブだけで演奏しているような有り様だ。「11人でストリートサッカーをやっている」とでもいえばいいだろうか。

ポゼッションだけはできるが……

 日本のフォーメーションは3-4-2-1。スタメンはGKがシュミット・ダニエル。3バックは右から冨安、昌子、畠中。WBは右が酒井、左は長友。セントラルMFは柴崎と守田。2シャドーは堂安と中島。ワントップは大迫だ。

 一方、トリニダード・トバゴは4-3-3で、日本ボールになれば4-3のブロックを作り前の3人が前残りする。そのため日本は前へボールを運びやすく、ポゼッションだけはできた。だがフィニッシュが致命的に甘い。

 ポゼッションできるため日本のシュート本数は25本と、トリニダード・トバゴの5倍に上った。だが完全に崩し切った形は少なく、コースを切られた状態で強引に打ったケースが目立った。

 いちばん目についた修正点はウイングバックの動きだ。3バックならば両WB、特に酒井はもっと攻撃的にプレイしてよかった。例えばサイドで片方のWBとセントラルMFのうちの1枚、シャドーの1枚がワンユニットになるような積極的なコンビネーションの形が見られなかった。

遅攻一辺倒で切り替えが遅い

 また特に前半は後ろ半分で漫然と横パスをゆっくりつなぐ場面が多く、急所を突く鋭くて速い縦パスがなかった。遅攻一辺倒なのだ。例えばクサビのボールを縦に入れ、その落しを受けてパスまたはシュート、のような縦の連携がない。

 ネガティブ・トランジション(攻→守の切り替え)も遅く、日本はボールを失った次の瞬間にすぐ敵のボールホルダーにプレッシングする動きが見られなかった。最初の「堤防」となるべき第一プレッシャーラインが日本は機能しなかった。

 特に柴崎は相手ボールに切り替わったらそこでワンテンポ入れてボールを見てしまい、間髪を入れずプレスをかけることができていなかった(柴崎に限った話ではないが)。

 これで今年9月にW杯アジア2次予選が始まったら、一体どうなるんだろうか? そう考えると空恐ろしくなってくる。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする