『昔みたい』(80)(1982.2.7.銀座文化)
何の気なしに映画館に入って見た映画。ところが、これが意外にいい映画で、見終わった後は、ちょっと得をしたような、いい気分になって映画館から出てくる…なんてことは最近少なくなっている。それは映画を選んで見るようになったからだが、映画なら何でもいいと思って3本立てを見ていた頃は、そんな掘り出し物をよく見付けたものだった。この映画は、全く期待していなかったこともあるが、久しぶりにそんな気分を味わせてくれた。
検事(チャールズ・グローディン)と再婚した女性弁護士(ゴールディ・ホーン)が前夫(チェビー・チェイス)の弁護をすることになるというコメディ映画で、監督はジェイ・サンドリッチ。
ニール・サイモンの脚本には、『グッバイガール』(77)で大いに喜ばされ、『第2章』(79)で期待を裏切られた、という思いがある。それ故、今日も初めのうちは、笑わされながらも、「相変わらずくさいセリフを使っているなあ」などと思い、さめた気分で見ていたのだが、いつの間にか彼の術中にはまって笑い転げていた。やはり笑いのツボを心得ている、ということなのだろうか。
というよりも、この映画の面白さはコメディエンヌとしてゴールディ・ホーンの存在感に寄るところが大きい。なぜなら、この映画は『グッバイガール』に比べれば遥かに出来は悪いはず。あの何とも言えないような温かさが見当たらず、ただの軽いタッチのコメディに終始しているからだ。それなのに見終わった後で気分がいいのは、これ、ひとえに彼女の魅力が際立っているからだと思うのだ。
ゴールディ・ホーンの全盛期の一本。「昔みたい」を、英語では「SEEMS LIKE OLD TIMES」と言うことを、この映画で覚えた。
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