★★★★☆
あらすじ
名門大学に入学した垢抜けない青年は、上流階級の美しい同級生に惹かれる。131分。
感想
庶民の主人公が、上流階級の美しい青年に心惹かれる物語だ。序盤は歴史あるキャンパスを舞台に、どこか文芸作品的な雰囲気を漂わせている。主人公はふとしたきっかけで青年と仲良くなり、やがて夏の休暇を彼の実家、ソルトバーン(Saltburn)で共に過ごすよう誘われる。
彼の家は、貴族の領地の大邸宅といった感じで、日本人的感覚で考える金持ちとはスケールが違う。これぞ階級社会と思えるものだった。庶民の主人公が呆気に取られてしまうのもよく分かる。
ここで主人公は青年と友情を深め、その家族や友人たちとも交流を図る。これもまた、郊外で過ごしたひと夏の思い出的な文芸作品ぽい雰囲気がある。二人の関係も考えると、映画「君の名前で僕を呼んで」的でもあった。
主人公の密かな思いが二人の関係にどう影響し、どう変化していくのかと思っていたら、ここから思わぬ方向に話は進んでいった。その転換のきっかけとなった、青年が入った後の浴槽で行われた主人公の行為は気持ち悪かった。そして、主人公の不審な行動が目立つようになる。
主人公が青年に惹かれながらも、何の苦労もせず恵まれた環境にいることに憎しみを覚えるのはよく分かる。彼らに悪意はないのだろうが、主人公がより低い階級出身であるように偽ったら、より関心を示すようになったのも感じが悪い。
上流階級の人々の歪さや滑稽さを示すシーンも多い。中でも、大事件が起きても何事もなかったように過ごそうとするシーンは印象的だった。周りが何とかしてくれる環境にいつもいるから、これもそうしていればなんとかなるのでは?と期待して思考停止している。金持ちならではの発想だ。
余談だが、こういう人たちに政治家をやらせると、領土を取られても取られてない振りをしてやり過ごそうとしたりするから良くない。周りにも取られたと言うなと圧をかけたりする。
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間近で見れば大したことのない彼らだが、主人公のような庶民は近づくことすら難しい。浴室での行為や青年の姉にやった行為のように、彼らの排せつ物のようなものをおこぼれとして貰いながら、別の世界で生きているだけだ。階級社会の欺瞞が透けて見える。
中盤以降は、そういう作品だったの?と驚かされる映画だ。音楽も映像も良く、ニヤリとさせられるユーモアもある。最後まで目が離せない展開で面白かった。どういう気分で見ればいいのか分からなくなるラストシーンも良い。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 エメラルド・フェネル
製作 ジョージー・マクナマラ/マーゴット・ロビー
出演 バリー・コーガン/ジェイコブ・エロルディ/ロザムンド・パイク/リチャード・E・グラント/アリソン・オリヴァー/アーチー・マデクウェ/キャリー・マリガン