大麦に属する裸麦のうち、もち性の品種のものを指す。
紀元前3000年頃までに、西南アジアで栽培化されユーラシア大陸全土とアフリカ東北部に伝播した。モチ性の大麦は日本・中国・朝鮮にしか分布しておらず、日本では中国地方・四国地方・瀬戸内海に面した諸県と九州北部の諸県の主に水不足の地域を中心に、もち米の代替品として昭和初期まで広く耕作された。
自家用として食されるケースが多く、もち米のかわりに使っていたことから「もちむぎ」「ダンゴムギ」と呼ばれたり、穂や粒の色から「スミレモチ」と呼ばれたりしていた。栽培の難しさから、次第に作付されなくなり、一時は途絶えてしまったこともある。もち麦が裸麦である点、および成熟してくると紫色が多くなる点については、脱穀しやすさや、モチ性とウルチ性を外見的に区別できるようにするという目的で、選抜や育種がされた結果ではないかと考えられている。
従来のもち麦品種は「米澤モチ2号」「四国裸93号」「ダイシモチ(四国裸95号)」などがあるが、中でも新品種の「ダイシモチ」は、六条渦性*1のもち性品種で、早生で短稈かつ倒伏に強く、また高β-グルカンで粒はやや硬く、精麦白度が高い。そのため、近年人気が上がってきた。成熟期の穂は紫穂で、粒は紫粒である。
穀類の中でも食物繊維の含有率が高く、白米の約10倍も含まれているため、機能性食品として見直されつつある。特に、血中コレステロールを下げる働きや、大腸ガンの予防効果があるとされる食物繊維のβ-グルカンが、米や小麦に比べて多く含まれている。糖質が少ないのも特徴の1つである。
こうした観点から、近年はさまざまな食品に利用されている。うどんへの利用は、もち麦独特の粘りが新たな食感を与え、ロールケーキやカステラの材料として用いても、しっとりとした和菓子のような食感に仕上がると評判になっている。
*1:渦性とは、半矮性[背丈が60〜80cm程の短い品種の特徴]で直立した厚く短い濃緑色の葉をつける劣性の矮性遺伝子を持つ品種のこと