ターボファンエンジンとは、ジェットエンジンの一種。航空機で広く使われている。
概要
ターボジェットエンジンの後ろに別のタービンを置き、このタービンでエンジン前部の大きなファンを回すことで空気流量を増やし、推力を増大させる。この形式は騒音が少なく、亜音速域での燃費が良いので、ほとんどの旅客機のエンジンとして使われている。[1]
ターボファンエンジンでは、まずエンジン前段に設置された大型ファンに空気が取り込まれる(この時点で空気は少し圧縮される)。取り込まれた空気の一部がコアエンジン(ターボジェットエンジン)に送られてエンジン排気噴流として排気ノズルから高速で噴出、残りの低圧圧縮空気はそのままファンの排気ノズルから低速の排気噴流としてエンジン全体を包むように噴出される。
ファン排気の空気流量をコアエンジン排気の空気流量で割った数値を「バイパス比」と呼び、この数値が高いエンジンほど効率が良いが、ジェット戦闘機ではバイパス比が1を下回るような低バイパス比ターボファン・エンジンが使われている。
ターボファンエンジンの開発
ターボジェットエンジンは「推進力の元となる排気ガスの速度が速すぎて低速域では効率が悪い」という弱点があった(ちなみに排気ガスの速度は機体の速度と同じくらいか、少し速いくらいが一番効率がいい)。
この弱点を解決するためにまず、排気ガスのエネルギーをタービンで拾ってプロペラを駆動するターボプロップエンジンが開発された。確かに低速での効率は向上したが、しかしプロペラそのものの限界として最高速度は実用的な範囲では700km/h程度が限界とされている。Tu-95?そんなものは知らんな…
でもやはりもう少し速度はあげたい。しかしターボプロップエンジンでは700km/hくらいが実用面では限界、かと言ってターボジェットでは音速を超えないと非効率。でも音速を超えたら衝撃波対策とか機体形状の見直しとかで厄介なことが色々待ち受けている。
特に民間機としては、できれば800~1000km/hくらいで飛べればちょうどいい落とし所となる。ターボプロップでは遅すぎ、ターボジェットでは速すぎる…てなわけで開発されたのが、ターボジェットエンジンの先または後ろにでかいファンを付け、「ファンの発生させる気流で推進力を発生させる」というターボファンエンジンである。
ターボプロップに迫る低速域での燃費の良さと、ターボジェットに迫る高速性を併せ持ったエンジンなので、特に現在の民間用ジェット機では主流となっている。
ギヤードターボファンエンジン
さて、ここでターボファンエンジンの効率を上げるにはどうしたらいいか。その方法の一つが「バイパス比を大きくする」ことである。
バイパス比を大きくするということは言い方を変えれば「ファンで発生させる推力を増やす」ということでもあり、特に高出力エンジンを製作する場合はほぼ必然的にファンの大口径化に行き着く。
しかしここで問題がある。ファンを大きくし過ぎると、特にコアエンジンの軸に直結させて回転させる場合、ファン先端の速度が上がりすぎて先端部で衝撃波が発生し、推力が低下してしまう。要するにプロペラでぶち当たったのと同じ問題に直面してしまう(そもそも高バイパス比のターボファンエンジンは、見方に よっては『進化したターボプロップエンジン』ということもできる)。
一方コアエンジン、特に内部の低圧圧縮機は高速でガンガン回転させたほうが効率がいい。あまり回転数を下げ過ぎると効率が悪くなる。
効率(燃費)を良くするにはファンはCPU冷却ファンの如く大口径をゆっくり、圧縮機は高速でぶん回すのがいい。さて、どうする。
その解法の一つが「ギヤードターボファンエンジン」である。
ギヤードターボファンエンジンは、ターボファンエンジンのファン駆動部分に減速機(遊星歯車減速機)を仕込み、ファンをコアエンジンより低速で回転させるようにしたエンジンである。
速度が違うならギアで回転数を変えてしまえばいいだけだ。これにより「低速回転のファン」と「高速回転のコアエンジン」を同居させることに成功、従来のターボファンエンジンよりさらに燃費を改善することが可能となる。