AAC(Advanced Audio Coding)とは、1997年にISO/IEC JTC 1のMoving Picture Experts Group(MPEG)において規格化された音声圧縮方式のことである。
概要
MP3を超える圧縮率を目指して標準化された音声圧縮方式。映像圧縮規格MPEG-2またはMPEG-4で使われており、デジタルオーディオプレイヤーや携帯機器、地上デジタル放送、BSデジタル放送などに採用されている。
2000年代初頭までは規格が古く対応機器の多いMP3が音声圧縮方式の主流であったが、2002年に発売され大ヒットしたデジタルオーディオプレイヤー「iPod」の主要な音声圧縮方式がAACであったため、iPodとiTunesの普及にしたがって急速にシェアを拡大した。
さらに2007年、Flash Player 9においてFlash VideoとしてMP4形式(映像にH.264、音声にAACを用いる)がサポートされたことで、YouTubeやニコニコ動画などの動画投稿サイトにアップロードされる多くの動画で用いられる音声圧縮方式がAACとなり、さらにシェアが拡大した。
AACの種類
AAC-LC(AAC Low Complexity)
AACの基本機能のみで構成されたもの。一般的にAACと言えばこのAAC-LCを指す。
MP3と比べて特に低ビットレートにおいて音質が良い。192kbps以上ではMP3との顕著な差はないものの、概ねAACが良質である。80kbps以下の低ビットレートでは音が破綻することがある。
ニコニコ動画やデジタルオーディオプレイヤーで通常使用する場合にはAAC-LCを用いればよい。
ビットレートは多いほど高音質になるが、ニコニコ動画に動画を投稿する場合は限られたビットレートを映像と音声にどのような比率で割り振るかが問題になってくる。どの程度が最適かは動画や目的等によってまちまちだが、一般的な動画であれば音声に128kbps以上のビットレートを見込んでおくと良いだろう。音楽がメインの動画などでさらに音質を重視したいと感じた場合は、より多くのビットレートを音声に割り振るとよい。
HE-AAC(High-Efficiency AAC)
通常のAACにSBR(Spectral Band Replication、スペクトル帯域複製)という疑似補完技術を組み込んだもの。
あらかじめ圧縮によって失われる高周波数部分を抜き出し、圧縮後も残る低い周波数の部分との関連を分析し、SBRという補助的なパラメータとして保存する。低周波数部分はAACとして圧縮される。再生する際は、中低音域のAACに加えて、圧縮の際にカットされて失われた高音域をSBRデータを元に復元して合成する。
AAC+SBRという形式のため、HE-AACに対応してないデコーダーでも、低音質にはなるもののAAC部分のみを再生できる特長がある。
AAC-LCより高圧縮であり、特に48~80kbps程度の低ビットレートで音の破綻を防ぐのに効果がある。一方でそれ以上はビットレートを上げても音質がそれほど向上しない性質を持つ。
SBRの性質上、ポップス、ロック、トランス、演歌などに向くが、クラシックやジャズには不向きである。
HE-AAC Version 2
AAC+SBR+PS(Parametric Stereo)という構成。
Parametric Stereoとはステレオデータをモノラル化することで圧縮率を高める疑似補完技術。モノラル化される際に失われる左右の音声特性は補助的なパラメータによってステレオに復元する。
AAC+SBR+PSという形式のため、HE-AACに対応してないデコーダーでも、低音質にはなるもののAAC部分のみを再生できる特長がある。
16~32kbpsといった超低ビットレートにおいて、音質の改善が期待できる。