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ギルド

Flowのギルドのレビュー・感想・評価

Flow(2024年製作の映画)
4.6
【"ノアを剪定される世界"を走る一匹の猫】【東京国際映画祭】
■あらすじ
世界が大洪水に包まれ、今にも街が消えようとするなか、ある一匹の猫は居場所を捨て、旅立つことを決意する。

流れて来たボートに乗り合わせた動物達と、想像を超えた出来事や予期せぬ危機に襲われることに。
しかし彼らのなかで少しずつ友情が芽生えはじめ、逞しくなっていく。

彼らは運命を変えることが出来るのか? そして、この冒険の果てにあるものとは――?

■みどころ
大傑作!!
洪水に巻き込まれた猫のお話。 今年の東京国際映画祭はアニメ映画を多く観たのだが、その中では本作が抜きんでて素晴らしかった。
この映画は来年3/14に全国公開されるので是非鑑賞することをオススメしたい映画である。

とある黒い猫は水に入る事も泳ぐことも嫌がらない不思議な猫である。
彫刻家が住んでいた廃墟で寝ている猫は様々な動物がすんでいる森の中では一匹狼的な存在で他の動物と一緒に馴れ合う事は殆どしない。
そんなある日、森の中をうろちょろしていたら野良犬グループと出会う。彼らが摂った魚を喧嘩によって遠くへ飛んでいったため、これみよがしに漁夫の利をしてい追いかけられていた。
すると、鹿や鳥が大量に逃げると同時に巨大な洪水が襲う。
一度、洪水に飲み込まれるも陸地になんとかたどり着いた黒猫は彷徨っていくうちに陸地が徐々に浸水することを知る。

やがて窮地に追い込まれた時にある船が到着し、既に乗っていたビーバーと出会っていくが…

本作は大洪水に襲われた猫が様々な場所を旅するアニメ映画であるが、まずアニメーションの躍動感・爽快感・透明感が素晴らしい。
カメラワークやまるで本物のような動きを3Dで演出していて、猫や様々な動物が動物のように生活する生態としての保持・同時に動物社会ながら人間社会のようなコミュニティを現出する見た目動物中身人間らしさを表現するアニメーションが凄い映画だと思う。
既存のアニメーションのスペクタクルさ、ジブリ映画、新海誠作品とはまた違ったテイストの海外アニメーションでアニメの凄さを見る為だけに本作を観に行ってもお釣りが貰えるくらい凄いと思う。

またストーリーも素晴らしい。
本作は仲間を集めて大洪水に襲われた世界を旅をしていく。まるでONE PIECEみたいなジャンプ漫画要素で進行する中で動物としての生態を保持しながらも、世界の果て・終末へ近づく荘厳さというジブリ映画みたいな要素も内包しているストーリーラインが素晴らしい。

世界の終幕を前に船に乗る部分だけを引用するならば旧約聖書「ノアの方舟」を彷彿とさせるが、本作の特徴として「ノアの箱舟」における"ノア"の剪定という神秘と残酷が共存しているところだろうか?
舟に出会う事こそが超常的存在による"お前はノアだ"と指し示す一方で、仲間との出会い・ふとした出来事における変化・決裂等で動物側でも"お前はノアだ"と突き付けている。
つまり本作には旅をする中で意識・無意識・運命的に"ノアの剪定"が連続的に行われ、それによる喜怒哀楽や行動を動物で浮彫にしていくファンタジーさ・残酷さが共存したテイストを魅せている。
そこに神秘・青春・残酷さがあり、それを素晴らしいアニメーションと共に魅せる手腕に圧倒された大傑作でした。

オススメです!
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