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ギルド

キネッタのギルドのレビュー・感想・評価

キネッタ(2005年製作の映画)
3.3
【再現を通じて事件に潜む狂気に漸近して染まった人達】
■あらすじ
ギリシャ南部の海辺の町キネタ。オフ・シーズンのホテルは閑散としている。そのホテルで働く女、カメラマンの男、事故を起こした高級車に執着する男の3人は、町で起きた連続殺人事件を再現しながらカメラに収めていた。エスカレートする彼らの行動は狂気を帯びていき…。ランティモスがリゾート地キネタを舞台に描く大胆で野心的な単独長編監督デビュー作。トロント国際映画祭やベルリン国際映画祭など数々の国際映画祭で上映され高い評価を獲得した。

■みどころ
墨田区・菊川のカフェ併設型ミニシアター「Stranger」とのコラボレーション企画「JAIHO × Stranger Presents ヨルゴス・ランティモス特集」より。
連続殺人事件の再現ドラマ撮影する3人のお話。

映画は全編通じて"無機質・機械的に人間を配置し操作している"と言わんばかりの動きをする。
連続殺人事件について、高級車に執着する初老の男がプロデューサーとしてカメラマンの男とホテル従業員の女に指示をしながら撮影を進める。
その一方で3人共に突拍子もない行動を重ねていき、その中で人が倒れてしまってもまるで壊れた人形・機械を直そうと雑に対処する。
ひたすら省略的で人間の内面が見えない突拍子もない行動による不気味さが支配する作品…と読めなくもない。

同じヨルゴス・ランティモス作品で話をするとロブスターや聖なる鹿殺しの神的ルール設定を省略したような作品か。
ぶっちゃけ話に大きな起伏がない割に手振れしまくるカメラワークで乗り物酔いしそうになったが、終盤にかけて手振れが少なくなるのは現実と空想の混在なのか単に撮影監督が新入社員による荒削りなのか?
よく分からん。

ギリシャの海が広がる美しい情景とは対照的に登場人物たちの無機質で人間味が一切ない機械的な振舞をするのが不気味さを加速してて、それが同じ構図で同じやり取りで何度も繰り返されるのを狂気とか不条理さと呼び、同時に連続殺人事件の"狂気"へ漸近しているとも言える実験的な一作。
この無機質さというのがロブスター・聖なる鹿殺しに通ずるのだと思うし、どこか嫌な気分になる所作はロブスター・聖なる鹿殺しだけでなく女王陛下のお気に入り以降に受け継がれているのだろうな~とも感じる一作。

彼らからすると連続殺人事件は空想の領域で、再現するにつれて事件の"怖さ"を転写しているような…まるで灯台の光を神のような存在へ昇華して手に取ろうと人間の狂気さが発露していくライトハウス的な露悪が逆に良いのだなと。

余談だが、あのカメラワークのブレッブレだけはマジで分からん。
単に技量の問題で、でもあの粗削りなカメラワークから伝わる現実と虚構を再現するために魚眼レンズを使い始めたのか?とうっすら感じた。
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