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傍目
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わきめ
ふりがな文庫
“
傍目
(
わきめ
)” の例文
私はアブに気がついたほど、まだ余裕があったが、アブの方では、人間などに
傍目
(
わきめ
)
も触れず、無念無想に花の蜜の甘美に酔っている。
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
ふと見れば、枯蘆の中の小家から現れた女は、やはり早足にわたくしの先へ立って歩きながら、
傍目
(
わきめ
)
も触れず大門の方へ曲って行った。
元八まん
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
うろつく者には、
傍目
(
わきめ
)
も
触
(
ふ
)
らず、粛然として廊下を長く打って、通って、広い講堂が、青白く映って開く、そこへ堂々と入ったのです。
雪霊続記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
わざと
傍目
(
わきめ
)
も振らず行ったり来たりして、疲れて家に帰った——そんな遠い遠い昔の事を
不図
(
ふと
)
偲い出して、又チェッと舌打するのである。
舌打する
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
うねる流を
傍目
(
わきめ
)
もふらず、
舳
(
へさき
)
に立って舟を導く。舟はいずくまでもと、鳥の
羽
(
は
)
に裂けたる波の合わぬ
間
(
ま
)
を
随
(
したが
)
う。両岸の柳は青い。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
この草屋の
聚落
(
しゅうらく
)
に帰って来て、ひと月に近い日を
傍目
(
わきめ
)
もふらず費し、わずかに五里何町かの道路をひらいた彼らの力を目の前に見たとき
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
彼は何か一つの目的が極まらないことには何もする気になれぬらしかった。その代り、これと思い込むと、
傍目
(
わきめ
)
もふらず突き進む方だった。
恐ろしき錯誤
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それ迄は幾分遊戯気分で追い廻していたものが、それからは
傍目
(
わきめ
)
もふらずに恋いこがれて、是非とも望みを
叶
(
かな
)
えずには
措
(
お
)
けないようになった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
黒々とした「のっぺい」(土の名)の畠の側を進んでまいりますと、一人の荒くれ男が、
汗雫
(
あせしずく
)
になって、
傍目
(
わきめ
)
もふらずに畠を打っておりました。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
最初は野を、山を、横っ飛びに、飛び歩いたものが、尋常に、
傍目
(
わきめ
)
もふらずに歩み行くと、かえってまた様子がおかしい。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
十四の時豪商の立志伝や何かで、少年の過敏な
頭脳
(
あたま
)
を
刺戟
(
しげき
)
され、東京へ飛び出してから十一年間、
新川
(
しんかわ
)
の酒問屋で、
傍目
(
わきめ
)
もふらず
滅茶苦茶
(
めっちゃくちゃ
)
に働いた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼女はそれを自分では気づかなかった。屋根の上を歩く夢遊病者のように、自分の
真面目
(
まじめ
)
な楽しい夢を、
傍目
(
わきめ
)
もふらずに平然と追っかけていた……。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
然
(
しか
)
し、ぼく達は、向うの新聞に、オォバアワアクであると、批評されたほど、
傍目
(
わきめ
)
もふらずに練習を重ねるのでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
エレヴェーターを出ると
傍目
(
わきめ
)
もふらず、真直ぐに、貴金属部へ靴先を向けた。ショウ・ウインドウを覗くと、パッと眼に入った大きなダイヤがあった。
梟の眼
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
「しかし、その前に俺は俺自身が何であるかを知らねばならぬ。そして俺に何ができるかを知らねばならぬ。そしてその後に
傍目
(
わきめ
)
もふらず突進しよう。」
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
越後勢は
悉
(
ことごと
)
く、お味方を右に見て、幾重にも幾重にも、分厚い縦隊を
押迫
(
おしせば
)
め、犀川へ犀川へと、こなたを
傍目
(
わきめ
)
に見捨てて
赴
(
おもむ
)
く態に見えますものの、実は
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
また修一に掴まりさうで、私は俯向いて廊下を小走り、外へ出ても
傍目
(
わきめ
)
もふらず身体を傾けて舗道を急いだ。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
謂はばこの世に
孤独
(
ひとりぼつち
)
の自分は、
傍目
(
わきめ
)
もふらずに自活の途を急がねばならぬ。それだのに、何故
這麽
(
こんな
)
…………?
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
母君
(
はゝぎみ
)
の
頼
(
ほ
)
にキスして
行
(
ゆ
)
き給ふ愛らしさ、
傍目
(
わきめ
)
にも子を持たぬ人の覚え
能
(
あた
)
はぬ快さを覚え申し
候
(
さふらふ
)
。
巴里
(
パリイ
)
とははや三時間も時の違ひ
候
(
さふら
)
ふらん。
味気
(
あぢき
)
なく
候
(
さふら
)
ふかな。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
一、穴場の入口の開くや否や、
傍目
(
わきめ
)
もふらず本命へ殺到する群集あり、本命主義の邪道である。他の馬が売れないのに配当金いずれにありやと訊いて見たくなる。
我が馬券哲学
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
と思ふと、私の傍を一人二人づつ、旅姿をした男女が通つて、
傍目
(
わきめ
)
もせずに下つて行く。私も急いで降りようとしてゐると、後方から小足におりて來る人がある。
夢
(旧字旧仮名)
/
吉江喬松
、
吉江孤雁
(著)
それは二つの道のうち一つだけを選み取って、
傍目
(
わきめ
)
もふらず進み行く人の努力である。かの赤き道を胸張りひろげて走る人、またかの青き道をたじろぎもせず歩む人。
二つの道
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
彼は
懼
(
おそ
)
れて
傍目
(
わきめ
)
をも
転
(
ふ
)
らざりけれど、必ずさあるべきを想ひて
独
(
ひと
)
り心を
慄
(
をのの
)
かせしが、
猶
(
なほ
)
唯継の
如何
(
いか
)
なることを言出でんも知られずと思へば、とにもかくにもその場を繕ひぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
お勢は紳士にも貴婦人にも眼を
注
(
と
)
めぬ代り、束髪の令嬢を穴の開く程
目守
(
みつ
)
めて一心不乱、
傍目
(
わきめ
)
を触らなかった、
呼吸
(
いき
)
をも
吻
(
つ
)
かなかッた、母親が物を言懸けても返答もしなかった。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
眼に見えぬ糸に曳かれるように、
傍目
(
わきめ
)
もふらず頼正は、スーッ、スーッと歩いて行く。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そうして唯一人の人へ對する堅い信念に繋がれて
傍目
(
わきめ
)
もふらなかつた幼ない昔を
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
傍目
(
わきめ
)
もふらずかたことと驅けて來るのを見ると、器械力と云ふよりも一動物の運動といふ感じがするのである。忽ち停車場に達する。笛を鳴らす。停車する。人々が停車場の構内から出る。
少年の死
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
我と我身が
怨
(
うら
)
めしいというような悩みと、時機を一度失えば、もう取返しのつかない、
身悶
(
みもだ
)
えをしても及ばないくいちがいが、穏かに、寸分の
透
(
すき
)
もなく、
傍目
(
わきめ
)
もふらせぬようにぴったりと
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
彼は決心したらしく
傍目
(
わきめ
)
も振らずにズンズンと歩き出した。彼は表門を出て坂を下りかけてみたが、
先刻
(
さっき
)
は何の苦もなくスラスラと登って来た坂が今度は大分下り
難
(
にく
)
い。彼は二三度
踉
(
よろ
)
めいた。
愛か
(新字新仮名)
/
李光洙
(著)
私は通りへ出ると、口笛を吹きながら、
傍目
(
わきめ
)
も振らずに歩き出した。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
童
(
わらべ
)
こそはひたむきなれ
傍目
(
わきめ
)
ふらず飛び
逸
(
そ
)
れ球をひた走り追ふ
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
傍目
(
わきめ
)
も振らずに元の蔵の中へ。——
銭形平次捕物控:055 路地の小判
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
うろつく
者
(
もの
)
には、
傍目
(
わきめ
)
も
觸
(
ふ
)
らず、
肅然
(
しゆくぜん
)
として
廊下
(
らうか
)
を
長
(
なが
)
く
打
(
う
)
つて、
通
(
とほ
)
つて、
廣
(
ひろ
)
い
講堂
(
かうだう
)
が、
青白
(
あをじろ
)
く
映
(
うつ
)
つて
開
(
ひら
)
く、
其處
(
そこ
)
へ
堂々
(
だう/\
)
と
入
(
はひ
)
つたのです。
雪霊続記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
四人が席を立った時、藤尾は
傍目
(
わきめ
)
も触らず、ただ正面を見たなりで、女王の人形が歩を移すがごとく
昂然
(
こうぜん
)
として入口まで出る。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
奴らは死ぬにきまっている場合でも、
傍目
(
わきめ
)
もふらず死そのものに向かって突進して来るのです。奴らは怪物です。ハラキリを
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
うっとり聞き入っている邦夷が、そうかあいつが、か、と、
傍目
(
わきめ
)
にちらりと
一瞥
(
いちべつ
)
して、それが安倍誠之助の面上にぴしりと
鞭
(
むち
)
のようにおちた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
彼らには立ち止まって見るだけの
隙
(
ひま
)
がない。彼らは利己的な本能に駆られて、
傍目
(
わきめ
)
も振らずに直進したがる。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
私は
殆
(
ほとん
)
ど一時間半も曙楼の近所をうろうろしていた訳です。———彼女は来た時と同じように、そこから十丁余りある自分の家まで、
傍目
(
わきめ
)
もふらずに歩いて行きました。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼らは私たちの「逆廻り」を、うさんくさそうな
傍目
(
わきめ
)
を使って、あわれむが如き
素振
(
そぶ
)
りでゆき過ぎた。サッとかき曇った空模様は、何かのたたりを暗示するように思わせた。
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
ちょうど演奏の
了
(
お
)
わる時刻だったので、やがて制服姿の彼が肩をすぼめながら、おそろしい厳粛な表情で、
傍目
(
わきめ
)
もふらずとっとと二人の前を行きすぎようとしたことがあったが
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
味方にしては
傍目
(
わきめ
)
多く使うとて、名乗りかけて引き組み、遂に遠藤の首をあげた。
姉川合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
傍目
(
わきめ
)
もふらで行く人は誰ぞと尋ぬれば、あれは隣村の漢學の先生といへり、棺のかざりより、白張提灯のひかり、香花の色まで見極めて行く人は誰ぞと尋ぬれば、あれはこの村の畫工にて
山家ものがたり
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
米友は、鼻の先で返事をしながら、
傍目
(
わきめ
)
もふらずに鍬を使っていました。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
が、何だか地体は更に解らぬ。依てさらに又勇気を振起して唯この一点に注意を集め、
傍目
(
わきめ
)
も触らさず一心不乱に
茲処
(
ここ
)
を
先途
(
せんど
)
と解剖して見るが、歌人の
所謂
(
いわゆる
)
箒木
(
ははきぎ
)
で有りとは見えて、どうも解らぬ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
広い造営の庭には、
傍目
(
わきめ
)
もふらずに、多くの者が汗にまみれていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鶯やまれに
梓
(
あづさ
)
の
下枝
(
したえだ
)
に
傍目
(
わきめ
)
すれども鳴く音しめらず
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
其
(
そ
)
の
鐵
(
てつ
)
の
如
(
ごと
)
き
健脚
(
けんきやく
)
も、
雪
(
ゆき
)
を
踏
(
ふ
)
んではとぼ/\しながら、
前
(
まへ
)
へ
立
(
た
)
つて
足
(
あし
)
あとを
印
(
いん
)
して
上
(
のぼ
)
る、
民子
(
たみこ
)
はあとから
傍目
(
わきめ
)
も
觸
(
ふ
)
らず、
攀
(
よ
)
ぢ
上
(
のぼ
)
る
心細
(
こゝろぼそ
)
さ。
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
男は正面を見たなり、女は
傍目
(
わきめ
)
も触らず、ひたすらにわが
志
(
こころざ
)
す
方
(
かた
)
へと一直線に走るだけである。その時の口は堅く結んでいる。
眉
(
まゆ
)
は深く
鎖
(
とざ
)
している。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
長く見つめていると吐き気を催すような、それらのまがまがしい蝋細工の間を、三人は
傍目
(
わきめ
)
もふらず歩いて行く。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
何によらず
傍目
(
わきめ
)
もふらずに、てきぱき片着けて行かなければ気のすまない彼女に、今日といふ観念の少しもない、どんな明日を夢みてゐるのか解らない木山の心理などの解りやうもなかつたが
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
傍
常用漢字
中学
部首:⼈
12画
目
常用漢字
小1
部首:⽬
5画
“傍”で始まる語句
傍
傍若無人
傍見
傍人
傍輩
傍観
傍杖
傍題
傍道
傍眼