なぜ日本の「49歳の女性たち」は世界で一番子どもを産んでいないのか…その裏の「残酷な現実」
実はOECD諸国の中で子どもをもたない女性の割合が最も高いのは日本である。2024年に49歳になる日本女性の28.3%は子どもを産んでいない。2020年の国勢調査を見ると45歳(2024年に49歳)の女性は約89.7万人いる。そのうちの約25万人の女性は子どもを持たない=無子なのだ。
その背景には、何があるのか。前編【「日本の49歳女性」は世界一子どもを産んでいない…!国際機関が発表した「衝撃のレポート」の中身】に引き続き、甲南大学教授の前田正子氏が解説する。
結婚への意欲はあった
日本の女性の無子比率が上がっているのは、何よりも未婚化が進んだことが要因だと思われるが、そもそも女性たちは結婚するつもりはなかったのだろうか。数年おきに実施される「出生動向基本調査」では18~34歳の未婚の男女に結婚意思について聞いている。
そうすると1975年生まれの女性が20~30歳だった時期には、未婚女性のなんと9割前後が「いずれは結婚するつもり」と答えている。逆に「一生結婚するつもりはない」は5%台である。しかし、結果として未婚率は5%よりはるかに高くなっている。最初から子どもを欲しくなかった人もいるだろうが、いつかは結婚したいと考えていたにもかかわらず、未婚となり子どもを持てなかった人もかなりの割合いるだろう。
それでは生涯無子になった女性はどういう人たちだろうか。これについて守泉理恵氏が「日本における無子に関する研究」『人口問題研究』(2019)75-1, pp.26~54において、「出生動向基本調査」のデータから分析している。例えば、未婚女性は年齢が上がるほど、未婚のまま子どもを持たないという、無子志向の人が増える。これは年齢が上がるにつれて何割かの女性が結婚・出産をあきらめるか、子どもを持つことに関心を失うからだという。
そして近年増えているのは、結婚が困難な無子女性だという。その原因はどこにあるのだろうか?守泉氏は25~39歳の独身女性を対象に分析し、無子志向の人が増えつつあるのは、「交際相手がおらず年収が100万円未満」というグループであることをみつけている。決して積極的に無子のライフコースを選んでいるわけではなく、低収入と交際相手がいないことから結婚や子どもを持つことをあきらめている、というのだ。未婚女性でも、恋人がいる人や年収が300万以上ある人の方が無子志向は低いという。