労務相談やハラスメント対応を主力業務として扱っている社労士である私が労務顧問として企業の皆様から受ける相談は多岐にわたります。経済や社会情勢の変化によって労働問題やハラスメントの捉え方も変わり、従業員側のほうがむしろ強気に出られるような場面も見られるようになりました。
前編<適応障害で休職した「モンスター社員」がついた、被害者続出のありえない「大ウソ」>に引きつづき、適応障害を発症し休職した社員の復職をめぐるトラブルについて匿名化してご紹介します。
現職復帰をこばむ社員
U野さんが持参してきたK林さんの診断書のコピーには、適応障がいであること、治療のため3か月の休養が必要であることが書かれていました。
I社の社内規定では、入社後3年未満の社員は私傷病での休職期間が3か月と設定されており、状況に応じて休職開始から最大6か月まで延長ができることになっています。
現在、休職中のK林さんには休職期間満了の2週間前に総務部から復職見込みについて確認の連絡を入れ、主治医の意見書を求めるように依頼したそうです。
「そのプロセスは問題ないと思いますよ。意見書は戻ってきましたか?」
「それが、意見書と言うか、K林が出してきたのは主治医の診断書でした。一昨日届いたものがこれです。それで、先生のご意見を伺えればと思いまして……」
U野さんが持参した診断書の写しを拝見すると、治療経過は「良好」で「就業可」。つまりK林さんは復帰が出来る状況だということです。
これの一体何が問題なのかを確認すると、U野さんは眉間のしわを深くしてこう言います。