役員報酬が一番多かったのは、日産自動車CEOのカルロス・ゴーン氏で約8.9億円。ただこれ以上に高額の配当収入を得ている人がいる。配当金調査でわかった、「隠れお金持ち」を紹介しよう。
配当収入が報酬の20倍以上
今年から始まった高額役員報酬開示。3月に決算を迎えた企業から順に、「1億円プレイヤー」たちの名前が続々とあがっている。先日は、ユニクロを率いるファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏の役員報酬が3億円であることが明らかになり、世間の話題をさらった。
しかし実は、役員報酬だけを見ても本当の億万長者が誰かはわからない。ケタが違う額の配当金をもらっている人が、ゾロゾロいるからだ。
早稲田大学商学部准教授の久保克行氏が言う。
「たとえばユニクロの柳井正氏は役員報酬こそ3億円ですが、ファーストリテイリングの株式を2800万株ほど持っている。直近の有価証券報告書によれば、同社の年間配当金は230円。単純計算で役員報酬の20倍以上、約65億円の配当収入を得ていることになるのです。
もちろん配当というのは企業業績が悪化すれば無配(配当金ゼロ円)になることもありますが、そうでなければ一株あたり数十円から1000円台の額が出る。100万~1000万株ほど持っていれば、億ものおカネが手元に入ります。それに配当収入は株式を手放しさえしなければ、ほぼ毎年入ってくる。つまり、配当収入は役員報酬より安定した高収入源だともいえるのです」
本当の億万長者は、役員報酬ではなく配当収入を見て、初めて分かるということ。
では、1億円以上の配当収入を得ているお金持ちたちを紹介しよう(以下、配当収入は直近の通期有価証券報告書から判明した配当金・持株数から単純計算で算出した)。
断トツに高額の配当収入を得ていたのは、任天堂相談役の山内溥氏。
約1400万株を持つ同社の筆頭株主であり、年間配当金が930円なため、配当収入はざっと131億円となった。
「創業一族の3代目として弱冠22歳で社長業を継いだ後、ファミリーコンピュータやゲームボーイを生み出したカリスマ経営者です。長者番付の常連でもあり、『Wii』が大ヒットした'08年には、米経済誌フォーブスが選ぶ『日本の富豪40人』でトップになっている。ちなみに同誌が試算した、山内氏の総資産額は約8100億円です。
任天堂は米メジャーリーグのマリナーズの筆頭オーナーで、イチローが年間最多安打を達成したときには、5000株(当時5800万円相当)をプレゼント。行きつけにしていた京都大学医学部附属病院が老朽化しているのを気にかけ、『京大病院にふさわしい病棟を建ててほしい』と私財75億円をポンと寄付したことでも有名です」(任天堂関係者)
そんな山内氏の自宅は、京都市東北部の左京区内に建っている。江戸後期に建てられたというが、大きな中庭が広がっている趣のある邸宅のようだ。