安倍風刺川柳を掲載して即謝罪する失態を演じた朝日新聞が、
自民党と統一教会の関係を指摘する宮台真司氏のコメントの一部を
そのことを鮫島タイムスで厳しく批判した鮫島浩氏は、
舞台は、鮫島氏が記者職を解かれたあとに配属され、
Dr.ナイフ起用に社内からクレーム
2020年夏、私はとっておきの秘策を吉田貴文編集長に提案した。政治を読み解くツイートで6万人を超えるフォロワーを集めたハンドルネーム「Dr.ナイフ」を筆者に起用することだ。彼は実名、年齢、性別、職業などあらゆる素性を隠し、アイコンもイラストにして「謎のインフルエンサー」として注目されていた。論調はリベラルで、罵詈雑言はなく、親しみやすいキャラで政治の動きを解説し、新聞記事よりも格段にわかりやすい。安倍政権に抗議するツイッターデモも主導し、ネット界で存在感を高めていた。彼が寄稿してくれれば必ずPVアップにつながる。
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SNSの匿名筆者を朝日新聞の媒体の筆者に起用した先例はない。だがペンネームで活動する作家が実名を伏せて執筆した前例はいくらでもある。作家のペンネームが許され、SNSのハンドルネームが許されない理屈はない。課題はDr.ナイフが実在の人物なのか、誰かの成りすましではないのかという一点に尽きると私は考えた。
Dr.ナイフは私と相互フォローにあり、ダイレクトメールで執筆を打診すると前向きな返事がきた。私には素性を明かし、面会することも承諾した。私は執筆の環境が整ったことを吉田さんに伝え、彼も即座に了承した。
〈はじめまして、Dr.ナイフです。――知る人ぞ知る、ツイッターデモを引っ張るインフルエンサーがついに「論座」に登場!〉という記事が彼のアイコンとともに「論座」を飾ったのは7月26日だった。記事は大反響を読んでSNSで一気に拡散した。コメント欄には「ナイフさん起用、朝日すごい!」という絶賛が相次いだ。ツイッター界のアイドルがオールドメディアの言論界に乗り込んだのである。新企画は大成功だ、Dr.ナイフ連載は「論座」の目玉企画になる、と私の胸は躍った。
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これに猛反発したのが編集局長室だった。中村さんは2020年6月に副社長に昇格し、編集担当役員には社会部出身の角田克氏が就任。編集局長(ゼネラル・エディター)には国際報道部出身の坂尻信義氏が起用されていた。まずはSNS戦略担当のソーシャル・エディターから吉田さんへクレームが入った。朝日新聞は実名執筆を原則にしてきた、匿名インフルエンサーに執筆させるとは何事か、読者が記事の信憑性に疑念を抱くのではないか、という内容だったという。
吉田さんは対応に追われた。編集局長室に出向き、Dr.ナイフの素性を論座編集部は把握していること、寄稿内容はまっとうで読者の反響もいいことを説明したが、それでも連載継続は認めないと言われた。吉田さんが「Dr.ナイフさんを知っていますか? どんなツイートをしてきたか知っていますか?」と尋ねると、知らない様子だったという。マスコミにしばしば登場する学者や記者よりもツイッター界ではその名を知られ影響力の大きいDr.ナイフがどのような発信をしているのかを知らないまま、ハンドルネームというだけで連載拒否の判断を下したというのである。
私は呆れ返って言葉が出なかった。朝日新聞の紙面に寄稿してもらうと言っているのではない。朝日新聞が出遅れているウェブサイトに寄稿してもらうのである。小説家のペンネームが良くてSNSのハンドルネームがダメな理由は何だろう。紙の新聞は高尚でSNSは低俗だと見下しているのではないか。