岸田首相が実現したいものは何か
安倍元首相の死去後、統一教会と自民党の関係に注目が集まり、国葬実施に反対する方々の運動が盛り上がっている。それにあわせて、岸田内閣の支持率が目に見えて下降した。
首相就任後9カ月の間に衆参両議院の二つの国政選挙を危なげなく乗り切った岸田首相は、安倍元首相の暗殺によって、潮目が変わったかのような困難に直面している。先手を打つかのように、8月10日に内閣改造を行ったが、効果がなく、かえって手詰まり感を演出してしまっている。
今後3年ほどの間、国政選挙がない可能性がある。本来であれば、実施したい政策に落ち着いて取り組むべき黄金期間だ。だが残念ながら、日々のニュースでは、心配な要素ばかりが目に付く。統一教会や国葬実施といった突発的な問題への「国民の理解」を求めることには忙殺され、政権としてどんな政策を遂行したいのかが見えてこない。
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本来であれば、官邸や自民党執行部に、信頼できる腹心の部下を置き、突発的な問題への対応などを切り盛りする役目を与えることができればよかった。しかし、残念ながら、岸田内閣の布陣は、派閥均衡を重視した人事によって成り立っている。調整、調整、調整の声が聞こえてきそうである一方で、危機対応に秀でているような印象は受けない。
安倍元首相は、もちろん第一次内閣での空回りへの反省があったからだろう、特に第二次内閣では閣僚に自分の意思が反映されやすい布陣を取った、官邸のスタッフについても各省庁から一本釣りで献身的に貢献してくれる人物を集めて、司令塔機能を高めた。
岸田首相の場合、政治家の首相補佐官が新設されたといった制度的な話題や、各省庁からより年次の高い幹部級官僚を官邸に送らせている、といった話題を作ったとしても、それがどのように実質的に機能しているかについては、見えてきていない。
結局は、首相が何をやりたいか、である。それが明白でなければ、全てが意味をなさない。混乱が広がっているように見える今だからこそ、あらためて実現したい理念を再確認してほしい。