フィリピン経済の課題…自動車産業振興の最新動向
フィリピン政府は自動車メーカーの現地生産を促進するための新たな支援策、RACE(Revitalizing the Automotive Industry for Competitiveness Enhancement)プログラムの導入を進めています。これはかつてのCARS(Comprehensive Automotive Resurgence Strategy)プログラムの後継となる施策であり、自動車産業の競争力を強化することを目的とするものです。
CARSプログラムは、2015年に当時のアキノ大統領によって発令され、フィリピン国内における自動車生産を促進するためのインセンティブを提供しました。CARSでは、最大3社の自動車メーカーに対し、一定の条件を満たすことで支援が受けられる仕組みでした。対象となる自動車メーカーは、最低20万台の特定モデルを生産する必要がありましたが、最終的に枠を活用したのはトヨタ・モーター・フィリピン(TMP)と三菱自動車フィリピン(MMPC)の2社のみでした。トヨタは「ヴィオス」、三菱は「ミラージュ」と「ミラージュG4」を生産していました。
新たに導入されるRACEプログラムは、CARSとは異なり、行政命令ではなく貿易産業省(DTI)によって主導される省庁レベルの施策として実施されます。このため、政府の一般歳出予算(2025年度予算)において、RACEのために2億5000万ペソが割り当てられました。CARSの経験を踏まえ、RACEではより多くの企業が参加できるような仕組みを整えることを検討しています。具体的には、現地生産の部品比率を増やすことで、企業がインセンティブを受けられるような仕組みになる予定です。
このRACEプログラムに対し、既存の自動車メーカーも関心を示しています。トヨタ・モーター・フィリピンは、RACEプログラムの延長が行われれば、次世代タマラオを新たに登録する意向を表明しました。また、DTIが新たなプログラムを立ち上げる場合も、同様に参加を検討するとしています。トヨタは最近、フィリピン・ラグナ州の工場に55億ペソの投資を行い、車両生産の強化や部品の現地調達比率の向上、新たな車両改造施設の設置を進めています。
また、三菱自動車もフィリピンでの生産拡大に向けた大規模な投資を計画しています。三菱自動車の幹部が最近マルコス大統領を表敬訪問した際、今後5年間で70億ペソの投資を行う意向を伝えました。この投資にはラグナ州の工場における新型車の生産が含まれており、同社もRACEプログラムへの参加を検討しています。
フィリピン自動車部品工業会(PPMA)は、政府に対し、国内の自動車製造および組立業の環境整備を求めています。PPMAによると、フィリピンはASEAN諸国の中で自動車産業の競争力が低下しており、迅速な対策が必要だと主張しています。ASEAN自動車連盟のデータによれば、フィリピンの2024年1月から11月までの自動車生産台数は11万6,650台で、ASEAN6ヵ国中5位にとどまりました。タイが136万台でトップ、次いでインドネシア(88万5,516台)、マレーシア(72万5,173台)、ベトナム(15万7,115台)となっており、フィリピンは大きく水をあけられています。
PPMAの会長は、「フィリピンの自動車産業は危機的状況にある。我々は自動車部品の製造能力を強化しなければ、ASEANとの競争から取り残されてしまう」と警鐘を鳴らしました。また、DTIに対し、自動車部品製造業を支援する施策の強化を求めています。
PPMAは、国内自動車産業の成長を促すための具体的な施策として、現地生産の義務化を提案しています。特に、フィリピン国内で組み立てられる車両の30%以上を現地部品で構成することを義務づけることが重要だとしています。また、所得税免除や原材料に対する関税の免除などの優遇措置を導入することで、業界の競争力を向上させることができると主張しています。
さらに、PPMAは輸出促進のための税額控除、機械設備の加速度償却、研究開発への税制優遇措置などの導入を提案しています。こうした政策が実現すれば、フィリピンの自動車産業の持続的な成長と競争力強化につながると考えられています。
このように、フィリピン政府はRACEプログラムを通じて自動車産業の振興を図るとともに、国内生産の拡大を促進しようとしています。一方で、業界団体はさらなる支援策を求めており、今後の政策動向が注目されています。
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