先日から放送が始まった「恋する小惑星」。
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一般に「女の子同士のきゃっきゃうふふ」が定番のきららアニメとはいえ、アストロアーツやビクセン、国立天文台などが協力していて、かなりガチな内容になっているとの事前情報があって、期待していた人も少なくないはず。
で、こちらでも視聴しましたが、いい意味で「らしからぬ」非常に丁寧なストーリー展開。その分、ツカミという意味ではやや弱めに感じましたが、キャラクターに好感を持ってもらうということに重点を置くなら、各メンバーの性格もはっきり出ていて非常に良い導入だったかと思います。
で、ストーリー関連はともかくとして(ぉぃ、天文マニア的には星空や機材の描写がどうだったのかが気になるところ。軽く検証してみましょう(^^;
冒頭の、キャンプ場の夜空。みらとあおが初めて会った場面ですね。正面に見えるのが木星です。
あおが「アストロガイド星空年鑑2008」を持っていたところからすると2008年の夏のようなので、新月だった2008年8月1日20時の夜空を再現してみるとこんな感じ。
アニメの夜空が非常に正確に描かれているのが分かります。主題が主題なので当然ですが、一般のアニメでここまでキッチリしているのはあまり記憶にありません。よく見るとM22などまで描かれています。一方で、M8などをはじめとした散光星雲の類がほとんど描かれていないあたり、抑制が効いていてよい感じです。
あおがみらに渡した双眼鏡。2008年当時のビクセンのカタログを当たると、おそらく「ジョイフル M8×21」ないし「同10×21」かと。作画は正確で、さすがはビクセンが協力しているだけのことはあります(笑)
あお『点…まぁ…うん。双眼鏡じゃ見えないけど惑星はしましまで細い輪っかがついてて月みたいなのが70個ぐらいあるんだよ』
みら『お~』
ここはちょっと惜しい。2008年当時、発見されていた木星の衛星は63個。「70個くらい」とくくるにはちょっと少ないですね。あとで、この作品での「現在」が2017年だということが推測できるのですが、この頃だと衛星の数は67個。おそらく、作者さんがこちらの数字に引っ張られてしまったんじゃないかなと思います。ちなみに、2020年1月現在では79個(!)にまで増えています。
部室にある望遠鏡は、おそらくポルタII A80Mfでしょう。いかにもきょうびの部室にありそうな望遠鏡。こちらもさすがに正確です。本棚には「星ナビ」のバックナンバーも見えますね。
西の空に水星を見つけるシーン。この後の会話で、金星が明け方の空に見えているという話が出てきますが、4月に水星が夕方の西空、金星が明け方の東空に出ている時期を探すと2016年と2017年がそれにあたります。が、周辺の星の配置を見るとおそらく2017年かと。この年の4月は、4月1日に水星が東方最大離角を迎えて見ごろ、金星は4月30日の最大光輝に向けて東空での高度を上げている時期になります。
こちらが2017年4月4日*1、日没30分後の西空です。このときの水星の高度は11度ちょっと。ここでも星の配置がきっちり一致していることが見て取れます。ただ、この時間帯は夕明かりがしっかり残っていて、実際にはこれほど周囲の星が見えることはありません。まぁ、他の星が見えててくれないと画面構成的には寂しいですから、このあたりは演出の範囲内でしょう。
番組終盤、みらとあおが空を見ながら電話で話すシーン。ここで冬の星座が出てきます。直前のシーンの「地学部活動予定」の記述から、これが4月第2週のことだというのが分かるのですが、この週の金曜日、2017年4月7日の天文薄明終了時(19時36分)の夜空がこちら。
ここもさすがの一致度。ちゃんと気を使って書かれているのが分かります。しかし、この時間帯にパジャマ姿はさすがに早いと思いますよ(^^; >ご両人
最後にエンディング。左手に「時の鐘」が見えているので舞台が川越だというのが分かるのですが、この位置に見えているということは主人公たちは東を向いています。
そこで、東空の星の配置を探ると……
4月の19時ごろの東空がドンピシャでした。ただ、2017年4月だとすると、上の星図の通り、おとめ座に木星がいるのでこれを描かない道理がありません。一方、エンディングに写るメンバーからすると、2017年度なのは確実*2なので、ぐるっと一回りして2018年3月と考えるのが妥当そうです。試しに2018年3月23日19時半の星空を見てみると……
いい感じです。おそらくこれで確定でしょう。
ともあれ、マニア目線で見てもかなりガチなのは伝わりました。どのキャラもかわいく描けていますし*3、ストーリーの方も期待できそう。今クールは楽しめそうです。
※ 本ページでは比較研究目的で作中画像を使用していますが、作中画像の著作権は©Quro・芳文社/星咲高校地学部に帰属しています。また、各星図はステラナビゲータ11/株式会社アストロアーツを用いて作成しています。