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陸凱
呉; 左丞相・荊州牧・嘉興侯
出生	建安3年（198年）; 揚州呉郡呉県
死去	建衡元年（269年）11月
拼音	Lù Kǎi
字	敬風
主君	孫権 → 孫亮 → 孫休 → 孫皓
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陸凱（りくがい）は、中国三国時代の呉の武将・政治家。字は敬風。子は陸禕。弟は陸胤。甥は陸式。陸遜の一族にあたる。『三国志』呉志に伝がある。

本貫は揚州呉郡呉県（現在の江蘇省蘇州市呉中区）。陸遜の一族で、子の世代に当たるという。しかし、父より上の系譜がなく、正確な系図上の繋がりは不明。

生涯

孫権の時代である黄武年間に地方の県令や太守職を歴任し、建武都尉となったときに軍権を任された。軍にあっても学問をよくし、『太玄経』を読むなど占いにも精通していた。赤烏年間に儋耳太守となり、将軍の聶友を伴って儋耳に遠征し、反乱する賊を斬って建武校尉に昇進した。赤烏13年（250年）、魏の王昶が南郡に侵攻すると、孫権の命令で江陵の朱績の救援に赴いた^[1]。

五鳳2年（255年）、零陵の山越の反乱民である陳毖を斬り、巴丘督・偏将軍・都郷侯となる。のちに武昌右部督に転任する。寿春での戦いに参加し、帰還後には盪魏将軍や綏遠将軍に任命された。

孫休の時代には征北将軍となり、仮節を与えられ豫州牧に任命された。

孫晧が即位すると、鎮西大将軍に昇進、巴丘督・荊州牧に任命され、爵位も嘉興侯となった。甘露元年（265年）、魏が滅亡し晋が興ると、当時交州を奪われるなど弱体化していた呉は晋と和議を結ぼうとし、司馬昭の弔問の使者を送ったが、晋への使いから帰還した五官中郎将丁忠は孫晧に対し、弋陽の地を奪取することを勧めた。車騎将軍の劉纂はそれに賛成したが、陸凱はそれに反対し、孫晧に諫言した。孫晧は内心では劉纂に賛成していたが、実行することはできなかった^[2]。

宝鼎元年（266年）、左丞相に就任した。この年に孫晧の廃立を計画し、大司馬丁奉・御史大夫丁固の賛同を得たが、孫晧の護衛をしていた左将軍留平に反対されたため断念したという。

孫晧は他人が自分を直視することを好まなかったが、陸凱はその点についても諫言したため、孫晧は陸凱には自分を直視することを許した。

孫晧は首都を武昌に移し暴政を敷いたため、呉の政治と経済は混乱した。陸凱は言葉を尽くして諫言した。また、皇帝側近の何定は孫晧の寵愛をかさにわがまま放題であったが、陸凱はそのような態度の何定を面と向かって罵倒した。何定は陸凱を中傷したが、陸凱は気にとめることはなかった。

建衡元年（269年）11月、病が篤くなり72歳で没した。孫晧は臨終間近の陸凱の元へ中書令の董朝を遣わし、言い残すことはないかと尋ねたが、陸凱は何定や奚熙といった小人を遠ざけ、姚信・楼玄・賀邵・張悌・郭逴・薛瑩・滕脩・陸喜・陸抗といった国の支えとなる人物を重用するよう遺言した。さらに董朝に上奏文を与え孫晧の政治を徹底的に批判したともいわれ、上奏文の全文が残されているが、信憑性に疑義がもたれてもいる。

孫晧は生前の陸凱を疎ましく思いつつ、陸凱や族弟である陸抗の力を恐れ、手を出せないままであったが、陸抗が死ぬと、陸凱の家族を交州へ強制移動させ報復したという。

陳寿は、最後の上奏の件については疑義を呈しつつも、陸凱は男らしくまっすぐで節操をつらぬいたとし、潘濬と共に「大丈夫として最高の仕事を成し遂げた」と評している。陸機の『弁亡論』の中でも陸凱の姿勢は高く評価されている。

家系図

陸康^{[ft 1]}

陸績^{[ft 2]}

陸凱^{[ft 3]}

^ 三国志巻58に「遜少孤，隨従祖廬江太守康在官」とある。
^ 三国志巻57に「瑁従父績」とある。
^ 三国志巻61に「丞相遜族子也」とある。

参考文献

陳寿、裴松之注『正史三国志』、井波律子・今鷹真・小南一郎訳・解説（ちくま学芸文庫全8巻、1992 - 93年）、※呉書は6・7・8巻、小南一郎訳。

脚注

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^ 『三国志』呉志呉主伝
^ 『三国志』呉志三嗣主伝

[3] 三国志巻58に「遜少孤，隨従祖廬江太守康在官」とある。

[4] 三国志巻57に「瑁従父績」とある。

[5] 三国志巻61に「丞相遜族子也」とある。

[1] 『三国志』呉志呉主伝

[2] 『三国志』呉志三嗣主伝

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 |王朝       = [[呉 (三国)|呉]]
 |称号・役職 = 左丞相・荊州牧・嘉興侯
-|出生       = [[建安]]3年（[[198年]]）
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 |ピン音     = Lù Kǎi
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 |特記事項   =
 }}
-'''陸 凱'''（りく がい、[[198年]] - [[269年]]）は、[[中国]][[三国時代 (中国)|三国時代]]の[[呉 (三国)|呉]]の[[武将]]・政治家。[[字]]は'''敬風'''。[[陸胤]]の兄、[[陸禕]]の父。『[[三国志 (歴史書)|三国志]]』呉志に伝がある。
+'''陸 凱'''（りく がい）は、[[中国]][[三国時代 (中国)|三国時代]]の[[呉 (三国)|呉]]の[[武将]]・政治家。[[字 (人名)|字]]は'''敬風'''。子は[[陸禕]]。弟は[[陸胤]]。甥は[[陸式]]。[[陸遜]]の一族にあたる。『[[三国志 (歴史書)|三国志]]』呉志に伝がある。
-[[本貫]]は[[揚州 (古代)|揚州]][[呉郡]]呉県（現在の[[江蘇省]][[蘇州市]][[呉県]]）。[[陸遜]]の一族で、子の世代に当たるという。しかし、父より上の系譜がなく、正確な系図上の繋がりは不明。
+[[本貫]]は[[揚州 (古代)|揚州]][[呉郡]][[呉県]]（現在の[[江蘇省]][[蘇州市]][[呉中区]]）。[[陸遜]]の一族で、子の世代に当たるという。しかし、父より上の系譜がなく、正確な系図上の繋がりは不明。
 == 生涯 ==
-[[孫権]]の時代である[[黄武]]年間に地方の県令や[[太守]]職を歴任し、建武都尉となったときに軍権を任された。軍にあっても学問をよくし、｢[[太玄経]]」を読むなど占いにも精通していた。[[赤烏]]年間に[[タン耳郡|儋耳]]（現在の[[海南省]]）太守となり、将軍の[[聶友]]を伴って儋耳に遠征し、反乱する賊を斬って建武校尉に昇進した。[[250年]]、[[魏 (三国)|魏]]の[[王昶 (曹魏)|王昶]]が[[南郡 (中国)|南郡]]に侵攻すると、孫権の命令で江陵の[[朱績]]の救援に赴いた（呉志「呉主伝」）
+[[孫権]]の時代である[[黄武]]年間に地方の県令や[[太守]]職を歴任し、建武都尉となったときに軍権を任された。軍にあっても学問をよくし、『[[太玄経]]』を読むなど占いにも精通していた。[[赤烏]]年間に[[儋耳郡|儋耳]]太守となり、将軍の[[聶友]]を伴って儋耳に遠征し、反乱する賊を斬って建武校尉に昇進した。赤烏13年（[[250年]]）、[[魏 (三国)|魏]]の[[王昶 (曹魏)|王昶]]が[[南郡 (中国)|南郡]]に侵攻すると、孫権の命令で[[荊州区|江陵]]の[[朱績]]の救援に赴いた<ref>『[[三国志 (歴史書)|三国志]]』呉志 呉主伝</ref>。
-[[255年]]には零陵の[[山越]]の反乱民である[[陳毖]]を斬り、巴丘の督、偏将軍、都郷侯となる。のちに武昌の右部督に転任する。[[寿春]]での戦いに参加し、帰還後には盪魏将軍や綏遠将軍に任命された。
+[[五鳳 (呉)|五鳳]]2年（[[255年]]）、[[零陵郡|零陵]]の[[山越]]の反乱民である陳毖を斬り、巴丘督・偏将軍・都郷侯となる。のちに武昌右部督に転任する。[[寿春]]での戦いに参加し、帰還後には盪魏将軍や綏遠将軍に任命された。
-[[孫休]]の時代には征北将軍となり、仮節を与えられ豫州の牧に任命された。
+[[孫休]]の時代には征北将軍となり、仮節を与えられ[[豫州]]牧に任命された。
-[[孫皓]]が即位すると、鎮西大将軍に昇進、巴丘の都督、荊州の牧に任命され、爵位も嘉興侯となった。[[265年]]、魏が滅亡し[[晋 (王朝)|晋]]が興ると、当時交州を奪われるなど弱体化していた呉は晋と和議を結ぼうとし、[[司馬昭]]の弔問の使者を送ったが、晋への使いから帰還した五官中郎将[[丁忠]]は孫皓に対し、[[弋陽郡|弋陽]]の地を奪取することを勧めた。車騎将軍の[[劉纂]]はそれに賛成したが、陸凱はそれに反対し、孫皓に諫言した。孫皓は内心では劉纂に賛成していたが、実行することはできなかった（呉志「三嗣主伝」）。
+[[孫晧]]が即位すると、鎮西大将軍に昇進、巴丘督・[[荊州]]牧に任命され、爵位も嘉興侯となった。[[甘露 (呉)|甘露]]元年（[[265年]]）、魏が滅亡し[[西晋|晋]]が興ると、当時[[交州]]を奪われるなど弱体化していた呉は晋と和議を結ぼうとし、[[司馬昭]]の弔問の使者を送ったが、晋への使いから帰還した五官中郎将[[丁忠]]は孫晧に対し、[[弋陽郡|弋陽]]の地を奪取することを勧めた。車騎将軍の[[劉纂]]はそれに賛成したが、陸凱はそれに反対し、孫晧に諫言した。孫晧は内心では劉纂に賛成していたが、実行することはできなかった<ref>『[[三国志 (歴史書)|三国志]]』呉志 三嗣主伝</ref>。
-[[266年]]には左[[丞相]]に就任した。この年に孫皓の廃立を計画し、大司馬[[丁奉]]、御史大夫[[丁固]]の賛同を得たが、孫皓の護衛をしていた左将軍[[留平]]に反対されたため断念したという。
+[[宝鼎]]元年（[[266年]]）、[[丞相|左丞相]]に就任した。この年に孫晧の廃立を計画し、大司馬[[丁奉]]・御史大夫[[丁固]]の賛同を得たが、孫晧の護衛をしていた左将軍[[留平]]に反対されたため断念したという。
-孫皓は他人が自分を直視することを好まなかったが、陸凱はその点についても諫言したため、孫皓は陸凱には自分を直視することを許した。
+孫晧は他人が自分を直視することを好まなかったが、陸凱はその点についても諫言したため、孫晧は陸凱には自分を直視することを許した。
-孫皓は首都を武昌に移し暴政を敷いたため、呉の政治と経済は混乱した。陸凱は言葉を尽くして諫言した。また、皇帝側近の[[何定]]は孫皓の寵愛をかさにわがまま放題であったが、陸凱はそのような態度の何定を面と向かって罵倒した。何定は陸凱を中傷したが、陸凱は気にとめることはなかった。
+孫晧は首都を武昌に移し暴政を敷いたため、呉の政治と経済は混乱した。陸凱は言葉を尽くして諫言した。また、皇帝側近の[[何定]]は孫晧の寵愛をかさにわがまま放題であったが、陸凱はそのような態度の何定を面と向かって罵倒した。何定は陸凱を中傷したが、陸凱は気にとめることはなかった。
-[[269年]]、病が篤くなり72歳で没した。孫皓は臨終間近の陸凱の元へ中書令の[[董朝]]を遣わし、言い残すことはないかと尋ねたが、陸凱は何定や[[奚熙]]といった小人を遠ざけ、[[姚信]]、[[楼玄]]、[[賀邵]]、[[張悌]]、[[郭逴]]、[[薛瑩]]、[[滕脩]]、[[陸喜]]、[[陸抗]]といった国の支えとなる人物を重用するよう遺言した。さらに董朝に上奏文を与え孫皓の政治を徹底的に批判したともいわれ、上奏文の全文が残されているが、信憑性に疑義がもたれてもいる。
+[[建衡]]元年（[[269年]]）11月、病が篤くなり72歳で没した。孫晧は臨終間近の陸凱の元へ中書令の[[董朝]]を遣わし、言い残すことはないかと尋ねたが、陸凱は何定や[[奚熙]]といった小人を遠ざけ、[[姚信]]・[[楼玄]]・[[賀邵]]・[[張悌]]・[[郭逴]]・[[薛瑩]]・[[滕脩]]・[[陸喜]]・[[陸抗]]といった国の支えとなる人物を重用するよう遺言した。さらに董朝に上奏文を与え孫晧の政治を徹底的に批判したともいわれ、上奏文の全文が残されているが、信憑性に疑義がもたれてもいる。
-孫皓は生前の陸凱を疎ましく思いつつ、陸凱や族弟である陸抗の力を恐れ、手を出せないままであったが、陸抗が死ぬと、陸凱の家族を交州へ強制移動させ報復したという。
+孫晧は生前の陸凱を疎ましく思いつつ、陸凱や族弟である陸抗の力を恐れ、手を出せないままであったが、陸抗が死ぬと、陸凱の家族を交州へ強制移動させ報復したという。
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-公正清廉な人物で、人望もあったが、態度は剛直だったようだ。暴君である[[孫皓]]が即位してもそれを改めず、孫権の時代を引き合いに出して諫言し続けた記録が残されている。269年の死の間際まで呉の将来を憂えていた。陸凱は「[[孫弘]]が義兵を挙げようとして失敗して以来、農耕に力が注がれなくなり、各地での上納が行われなくなったのに、増兵したので兵への給付が増え、国家の備蓄は減少している。」と嘆いている。
+公正清廉な人物で、人望もあったが、態度は剛直だったようだ。暴君である孫晧が即位してもそれを改めず、孫権の時代を引き合いに出して諫言し続けた記録が残されている。建衡元年（269年）の死の間際まで呉の将来を憂えていた。陸凱は「[[孫弘]]が義兵を挙げようとして失敗して以来、農耕に力が注がれなくなり、各地での上納が行われなくなったのに、増兵したので兵への給付が増え、国家の備蓄は減少している」と嘆いている。
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-[[陳寿]]は、最後の上奏の件については疑義を呈しつつも、陸凱は男らしくまっすぐで節操をつらぬいたとし、[[潘濬]]と共に「大丈夫として最高の仕事を成し遂げた」と評している。[[陸機]]の「弁亡論」の中でも陸凱の姿勢は高く評価されている。
+[[陳寿]]は、最後の上奏の件については疑義を呈しつつも、陸凱は男らしくまっすぐで節操をつらぬいたとし、[[潘濬]]と共に「大丈夫として最高の仕事を成し遂げた」と評している。[[陸機]]の『弁亡論』の中でも陸凱の姿勢は高く評価されている。
 == 家系図 ==
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+== 参考文献 ==
+* [[陳寿]]、[[裴松之]]注『正史 [[三国志 (歴史書)|三国志]]』、[[井波律子]]・[[今鷹真]]・[[小南一郎]] 訳・解説（[[ちくま学芸文庫]]全8巻、1992 - 93年）、※呉書は6・7・8巻、小南一郎訳。
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