オグさんです! 今回は、テーラーメイドの2024年モデル「Qi10」シリーズから、ドライバー3モデルの比較試打レポートをお届けします。
シリーズのひとつ「Qi10 MAX ドライバー」
「Qi10」のネーミングは、「探求」を意味する「QUEST」と、「慣性」を意味する「INERTIA」それぞれの頭文字、そしてヘッドの左右慣性モーメントと上下慣性モーメントの合計値「10,000」を表現する「10」を組み合わせたもの。慣性モーメントにこだわったことを大きくアピールしたネーミングです。
慣性モーメントは、ゴルフクラブにおいてミスへの強さや曲がりにくさを計るうえで重要なポイント。数値が高いほど、ミスに強く、曲がりが少ないクラブです。
テーラーメイドの今作「Qi10」は、前作「ステルス2」、前々作「ステルス」で評価の高かった飛距離性能はそのままに、慣性モーメント値をさらに高めることでミスに強いクラブであることをアピールしてきました。発表会においても、さまざまなデータや新技術を用いて、今作の「Qi10」シリーズがいかにミスに強いかを強調していました。
慣性モーメントが高いヘッドほど、オフセンターヒット時のヘッドのブレが少ないことを示した画像です。赤いフェースが前回の「ステルス2」で青いフェースが今回の「Qi10」
発表会の様子は、下記の速報記事で紹介しています。
「Qi10」シリーズのドライバーは前作同様、3モデル用意されています。
・「Qi10 MAX」
今作のメインモデルといってよいモデル。上下と左右の慣性モーメントの合計値が10,000を超え、オフセンターヒットに非常に強い仕上がり。
・「Qi10」
いわゆる“スタンダードモデル”。テーラーメイドらしい低スピンの強弾道が打てるモデルでありながら、前作よりもミスに強くなりました。
・「Qi10 LS」
「ロースピン」の頭文字が付けられた、ツアープロや上級者に向けた強弾道モデル。スタンダードよりさらに低スピンで、つかまりが抑えられています。
本シリーズを象徴するモデルで、シリーズのネーミングにも使用されている慣性モーメント10,000を超えているのは、このモデルだけです。打点のミスに非常に強く、飛距離ロスや曲がりが少ないのが特徴。
ポジションとしては、前作の「ステルス2 HD」の後継モデルに位置しますが、特性が大きく変わっています。3モデルの中で最もやさしいところは同じですが、性能は別物です。
空気抵抗を考慮したやや複雑な形状のソールですが、デザインは非常にシンプル。弾道調整機能や交換機能を持つウェイトをヒールに搭載していますが、可変ウェイトなどのわかりやすい可変機能は持っていません
非常に大きな投影面積を持ち、ヒールにボリュームを持つ丸形の形状。安心して振りまわせそう
適度な厚みを持つフェースに、こちらも適度にヘッド後方が下がっているシャローバック形状。いかにもやさしそうな形状ですが、実際は、見ため以上にやさしいヘッドです
シャフトは「Qi10」シリーズ用に設計された専用の「ディアマナ BLUE TM50」を装着。クセがなく適度なしなりを持つ、振りやすいシャフトです
構えた第一印象は「大きい!」でした。テーラーメイドとしては史上最大級の投影面積を持っているのではないでしょうか。すごい安心感です。それでいて、こういったやさしそうなモデルに多いフックフェースではなく、非常に構えやすい丸形のヘッドに仕上がっています。
お借りしたスペックは、9度の「ディアマナBLUE」Sフレックス。ヘッドスピード38m/sぐらいを意識して打ってみると、非常に直進性の高い球が中弾道で飛んでいきます。何より驚いたのが振り心地。慣性モーメントの高いこういったドライバーは、ヘッドをローテーションさせにくくスイング中に大きな抵抗を感じやすいのですが、それがかなり少ない! そのため、狙った方向に打ち出しやすいのです。
想像どおりだったのがミスへの強さ。ヒール、トゥそれぞれに割りと大きく外しても曲がり幅はかなり小さく、初速も落ちにくいので安定感は抜群です。ミスへの強さをセールスポイントにするモデルにしては、弾道の高さはロフトなりといった感じで、特段上がりやすい印象はありませんでした。ヘッドスピードが40m/s以下のゴルファー、高さが出にくいゴルファーは、10.5度がおすすめです。
意外といっては失礼ですが、大慣性モーメントモデルとしては破格の振り心地のよさ。本モデルの性能を生かすにはフェースローテーションを抑えたほうがよいですが、ローテーションが大きめのゴルファーでも使えるでしょう
あえてトゥ側でヒットした瞬間の写真ですが、ヘッドがほとんどブレていません! そりゃ、ボールは曲がりにくいですね。打感は、芯で打つとしっかり感のある爽快な感触。芯を外すとやや硬さを感じますが、不快な感触はありません。今作もカーボンフェースですが、言われないと金属フェースとの違いは感じません
ヘッドスピードを高めていくと、徐々に高さが出ていきますが、それでも「上がりやすい」とまで言えないのは、ヘッドがブレにくくなっていくからでしょう。ヘッドスピードが高まるとスピンがやや増えるため、びっくりするほど飛ぶという印象はありませんが、何より安定感が高い! とにかく曲げたくないという人にはぴったりです。
やさしいのが欲しいけど、今まで大型ヘッドがうまく打てなかった、結果につながらなかったというゴルファーには、ぜひこのモデルを試してもらいたいですね。
ある程度のフェースローテーションは受け付けてくれますが、大慣性モーメントを生かすならスイング中のローテーション量を少なくし、フェースをできるだけ開閉させないようにイメージして打つと扱いやすいと思います
フェースをかなり大きく開いてテークバックするゴルファーは、扱いにくいと感じてしまうかもしれません……
かなりトゥ寄りでヒットしたデータですが、普通によいドローボールです(笑)。スピン量がほかのモデルよりもやや多いのですが、この安定感が手に入るなら大したことではないでしょう
今作のスタンダードに位置するモデルで、低スピン性能、操作性、ミスへの寛容性のバランスがよいモデルです。前作のスタンダードモデル「ステルス2 ドライバー」よりも明らかに安定感が高くなっており、狙った方向に打ち出しやすくなりました。
デザインは3モデルとも共通。ヒール側に搭載されたウェイトですが、「MAX」よりもやや中央寄りに配置されています
ヘッド形状は、大きめの洋ナシ型と言った感じ。前作のスタンダードモデルよりも投影面積が大きくなり、見た目からもやさしさが伝わってきます
厚めのフェースや適度なシャローバックは「MAX」と同様ですが、ヘッドの奥行きがやや狭くなっているのは操作性を考慮した結果なのでしょう
装着されるシャフトは、「MAX」と同じ「ディアマナBLUE TM50」です。
構えると、ずいぶんマイルドになったなぁという第一印象を受けました。前作はしっかりとした洋ナシ型で、構えるとちょっとしたプレッシャーを感じていたのですが、今作はヘッドが後方に延ばされて投影面積が大きくなったため、やわらかな洋ナシ型ですんなりと構えられます。
お借りしたスペックは、9度で「ディアマナBLUE」のSフレックス。ヘッドスピード38m/sを意識して振ってみると、ライナー性の強い弾道が自然と打てます。9度ということもあり、ちょっと低いかと感じましたが、強弾道が狙ったところにガンガン打てました。
前作との違いを感じたのは、狙ったところに打ち出せる扱いやすさ、そしてミスへの強さです。強弾道が打てるのは前作も同様でしたが、ちょっと気を抜くと右に打ち出す傾向が私にはありました。今作にはそれがなく、打ち出し方向の管理がしやすくなったと感じました。
ミスへの強さは「MAX」ほどではありませんが、結構芯を外してもブレにくいですし、つかまりもよいとまではいきませんが、前作と比べるとほんの少しだけつかまるようになり、さらに安定したティーショットが期待できる仕上がりでしょう。
ヘッドスピードを高めていくと、飛距離が伸びて弾道が少し高くなっていく程度と、大きな変化はありません。スピンはほとんど増えず、ずっと強弾道のままでした。私の最大限のヘッドスピード43m/sで打ってもスピン過多になることはありませんでした。もう少し打ち出し角が高められれば、さらに飛距離が伸びる気がしました。私が使うのであれば、10.5度がよさそうです。
8割ぐらいでさらっと打ったデータですが、適度なスピン量で少しつかまった強い弾道でした。これくらいの弾道が安定して打てるのが本作の強みですね。試打当日は非常に気温が低かったので、実際の飛距離はいまいちでしたが、もう少し高さが出せれば、もっと飛んでいたでしょう
「LS」は「Low Spin」を意味し、ツアープロやハードヒッター、上級者に向けたモデルで、前作「ステルス2 プラス」の後継に当たります。
ソールに搭載する可変ウェイトによって重心距離、つまり、つかまり性能を調整できます。こちらもミスへの強さが高められ、扱いやすくなりました。販売は「テーラーメイドセレクトフィットストア」限定です。
ソールに搭載された可変ウェイトが目を引きますね。デザインはシリーズ共通です
ヘッドシェイプは、テーラーメイドのアスリートモデルに多い洋ナシ型。前作から大きくは変わっていません
ほかのモデルと比べてヘッド後方が高いハイバック形状。フェース向きをわかりやすくするための工夫として、フェース上部にレーザーでミーリングされた白いラインが施されていますが、これは「Qi10」シリーズすべてのウッド類に採用されるもの
装着されるシャフトは「LS」専用として「ディアマナ silver TM50」。ほか2モデルの「ディアマナ blue」と比べると、クセのなさは同様ですが、挙動がよりマイルドになっていてしなり戻りが穏やかなつかまりを抑えた仕様です
構えた印象は、これぞテーラーメイド! 近年のテーラーメイドのアスリートモデルが多く採用するキレイな洋ナシ顔で、左へミスする印象を抱かせない形状に仕上がっています。
お借りしたスペックは9度で、「ディアマナ silver」のSフレックスが装着されていました。ヘッドスピード38m/sを意識して打ってみると、中弾道とは言いがたい、低めのライナー弾道が飛び出します。さすがにこのヘッドスピードでは飛距離につながりません……。
前作との違いは、ほかのモデルでも感じましたが、狙った方向に打ち出しやすくなり、ミスへの強さが高まったこと。完全に手に負えない! と感じる扱いにくさがなくなりました。非常に低スピンなので、最低限の性能を引き出すにはヘッドスピード40m/s以上は欲しいですね。
ヘッドスピードを高めていくと打ち出し角が高まり、どんどん飛距離が伸びていきます。つかまり性能はやや抑えられていて、ミスをすると右方向に飛んでいきますが、前作と比べるとかなり頻度が減り、曲がりも少なくなりました。前作のスタンダードモデル「ステルス2」くらいのやさしさはありますね。
可変ウェイトを動かして打ってみましたが、ヒール側・トゥ側それぞれいっぱいまで動かすと、ヘッドの挙動がかなり変わります。ヒール側にすると、ヘッドのローテーションがしやすくなり、右へのミスを軽減できます。反対にトゥ側にするとヘッドのローテーションがしにくくなり、左へのミスが軽減できます。ウェイト位置を変更しても直進性が失われないので、打ち出し方向の調整に便利でした。
新形状のスライディングウェイトを搭載しています
ややヒールでヒットしたデータです。前作であればもう少し飛距離が落ち、右へ流れて行っていたはず。スピンが増えすぎず、サイドスピンもほとんど入りませんでした。このミスへの強さは、アスリートモデルとしては、非常にありがたい!
「Qi10」シリーズのドライバーはどれも、腕前に関係なく結果が出しやすいクラブに進化しました。3モデルの性能の差というか、ターゲットゴルファーに合わせた性能の違いが明確になった印象です。
「ステルス」「ステルス2」シリーズが合わなかったゴルファーにはぜひ試してもらいたいですね。ほぼ別物です。特に「MAX」は、今までのテーラーメイドのドライバーとは一線を画す仕上がりです。
今回の3モデルを自分なりに評価すると、
・「Qi10 MAX」
とにかく曲げたくないゴルファーに合う、安定性極振りモデル。
ライバルは、ピン「G430 MAX 10K」。
・「Qi10」
飛距離、ミスへの強さ、直進性、どれも重視する欲張りゴルファーに合うモデル。
ライバルは、キャロウェイ「パラダイム AIスモーク MAX」。
・「Qi10 LS」
左へのミスを抑えつつ、安定して最大飛距離を追求するアスリートゴルファーに合うモデル。
ライバルは、キャロウェイ「パラダイム AIスモーク トリプルダイヤモンド」。
どのモデルも注目に値するのですが、今回の目玉は「MAX」でしょう。オプション扱いではありますが、ロフト12度もラインアップされており、シニアからレディースゴルファーまで幅広いゴルファーに対応しています。慣性モーメントの高いモデルに多い振りにくさを大幅に軽減した、従来なかったドライバーです。
私が自分で使うなら、スタンダードと悩みますが、「LS」ですね。打ち出し方向の管理のしやすさに加えて、ミスへの強さが高まったことで、安定したティーショットが打てそうです。どちらを選ぶにしてもロフトは10.5度にします。左右のヘッドのブレが少なくなった分、上下のブレもなくなったため、ロフト角の役割が高まったと感じました。安定して高さを出すには、ロフトを大きめにしたほうが安定して飛ばせますよ。
写真:野村知也