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イベントレポート

エントリーモデルでもわかる! 自転車乗りに支持されるスペシャライズドのe-Bikeの魅力

1974年に設立し、創立50周年を迎える自転車ブランド「スペシャライズド」が、e-Bikeに特化したメディア向けイベントを開催。本イベントでは試乗もでき、エントリーモデルからも同ブランドの魅力が感じられた。その模様をレポートする。

サイクリストに高く評価される自転車ブランド

創業者の自宅にあるトレーラーハウスから始まったスペシャライズドの名が世界に広まったのは、1981年のこと。世界初の量産型マウンテンバイク「Stumpjumper(スタンプジャンパー)」が大ヒットしたのがきっかけだ。それまでも「クランカー」と呼ばれる山で遊ぶための自転車はあったが、量産を実現したことで人々の自転車ライフは大きく変わった。その証拠に、「Stumpjumper」の初代モデルは、新しい自転車の文化とライフスタイルを切り開いたことが認められ、アメリカの「スミソニアン博物館」に永久所蔵されている。

「Stumpjumper」の車名は現行モデルにも受け継がれている。写真は、現行モデルの「Stumjumper LTD」(価格は968,000円/税込)

「Stumpjumper」の車名は現行モデルにも受け継がれている。写真は、現行モデルの「Stumjumper LTD」(価格は968,000円/税込)

ロードバイクの世界でも、先駆けてチャレンジする姿勢は変わらない。たとえば、エアロダイナミクス(空気力学)に早くから着目し、自社工場に風洞実験室を設けて開発するなど、新しいことに積極的に取り組んでいる。「ツール・ド・フランス」をはじめとする多くのレースで実績を残すモデルも多く、スペシャライズドの自転車はサイクリストからの評判が高い。

また、多くのパーツを自社で生産していることも高評価の要因のひとつだ。もちろん、ただ単に“自社で作る”ことにこだわっているわけではない。スペシャライズドのスタッフのほとんどがサイクリストで、自分たちが満足できるレベルのものを追求した結果なのだ。だから、そのどれもが高品質。品質の高いタイヤがなかった時代に高性能なタイヤをみずから生産していた過去も含め、自分たちが満足する製品が市場になければ作ってしまおうという一貫した姿勢がブランドの価値を支えている。

現在は、ロードバイクやマウンテンバイク、クロスバイク、キッズバイク、e-Bikeから、ヘルメットやシューズ、ウェア、ライト、タイヤなどのサイクリングアイテムやパーツまで、幅広く開発・製造・販売。e-Bikeについても、ドライブユニットはシマノやボッシュといったメーカーのものを採用するブランドが多いなか、スペシャライズドはドライブユニットまで自社開発している

現在は、ロードバイクやマウンテンバイク、クロスバイク、キッズバイク、e-Bikeから、ヘルメットやシューズ、ウェア、ライト、タイヤなどのサイクリングアイテムやパーツまで、幅広く開発・製造・販売。e-Bikeについても、ドライブユニットはシマノやボッシュといったメーカーのものを採用するブランドが多いなか、スペシャライズドはドライブユニットまで自社開発している

クロスバイクタイプのe-Bike「VADO」に試乗

スペシャライズドの歴史を聞くと、世界初の量産型マウンテンバイク「Stumpjumper」の現行モデルに乗ってみたくなるが、本イベントはe-Bikeに特化したもの。試乗車として、クロスバイクタイプのe-Bike「TURBO VADO SL 4.0」が用意されていた。スペシャライズドのe-Bikeにはロードバイクタイプやマウンテンバイクタイプもあり、クロスバイクタイプはエントリー層向けのカテゴリーとなる。だが、各パーツを自社で生産している点は同じ。はたして、スペシャライズドならではの品質の高さは感じられるだろうか。

「TURBO VADO SL 4.0」の価格は308,000円(税込)。試乗車にはボトルケージやスタンドが付いているが、付属品ではない

「TURBO VADO SL 4.0」の価格は308,000円(税込)。試乗車にはボトルケージやスタンドが付いているが、付属品ではない

「TURBO VADO SL 4.0」に搭載しているドライブユニットは、もちろん自社製。最高出力240W、最大トルク35Nmを発揮する。90Nmに達するトルクを発生するドライブユニットもあるなか、35Nmというトルク値はかなり抑えられている印象だ。また、重量が15.5kg(Mサイズ)と、この価格帯のe-Bikeとしてはかなり軽量なのもポイント。自社製のドライブユニットが軽量なことに加え、フレームと一体化したバッテリーを採用することで着脱構造を不要とし、バッテリー容量を320Whに抑えて重量を低減した。それでもアシスト走行可能な最大距離は130km(または6時間)を確保している。

自社製の「SL 1.1」タイプのドライブユニットは小型で軽量

自社製の「SL 1.1」タイプのドライブユニットは小型で軽量

500Whオーバーの容量が多いなか、320Whのバッテリーは小さめだが、最大130kmのアシスト走行に対応。容量が抑えられていることもあり細身で、e-Bikeには見えないシルエットだ。ただし、バッテリーを取り外して充電することはできない

500Whオーバーの容量が多いなか、320Whのバッテリーは小さめだが、最大130kmのアシスト走行に対応。容量が抑えられていることもあり細身で、e-Bikeには見えないシルエットだ。ただし、バッテリーを取り外して充電することはできない

変速機構はリアのみの11速という、近年のトレンドを押さえた選択。油圧式のディスクブレーキを採用しており、ストッピングパワーも申し分ない。このほか700×38Cの太めタイヤ、ステム、ハンドル、シートポストなど、パーツの多くに自社製のものを採用している。

変速コンポーネントはSRAM製「NX」の11速。フロントには変速機構は装備せず、チェーン落ちを防ぐガードを装着している

変速コンポーネントはSRAM製「NX」の11速。フロントには変速機構は装備せず、チェーン落ちを防ぐガードを装着している

前後ともにテクトロ製の油圧ディスクブレーキを採用。ディスク径は前後ともに150mmだ

前後ともにテクトロ製の油圧ディスクブレーキを採用。ディスク径は前後ともに150mmだ

ロードバイクなどと同じ700Cサイズのホイールに38mm幅のタイヤを装着し、乗り心地を向上させている

ロードバイクなどと同じ700Cサイズのホイールに38mm幅のタイヤを装着し、乗り心地を向上させている

フラットなハンドルバー、ステム、グリップなどコックピット周りは自社製パーツで固められている

フラットなハンドルバー、ステム、グリップなどコックピット周りは自社製パーツで固められている

実際に乗ってみると、数値以上に軽い。筆者はこれまで、かなりの数のクロスバイクタイプのe-Bikeに試乗してきたが、「TURBO VADO SL 4.0」で走ったときの体感の軽さは圧倒的だ。立ちこぎで車体を左右に振ったり、カーブを曲がる際に傾けたりする操作で特に軽さを感じる。重量を抑えるだけでなく、重心などのバランスを考慮して設計されているのだろう。試しに、アシストをオフにして走行してみたが、普通のクロスバイクのような感覚。この軽さは大きな魅力だ。

途中で薄暗くなってきたのでフロントライトを点灯。バッテリーから給電されるタイプなので、ペダルの負荷は変わらない

途中で薄暗くなってきたのでフロントライトを点灯。バッテリーから給電されるタイプなので、ペダルの負荷は変わらない

アシストのフィーリングは、トルク値が抑えられていることもあり、ペダルを踏み込んだ際に押し出す感覚は弱め。ペダルの回転数を上げていくと、パワーが乗ってくる回転型のドライブユニットと言える。e-Bike向けのドライブユニットはそうしたフィーリングのものが多いが、スペシャライズド製のドライブユニットは、その特性をさらに磨き上げている印象。トルク値は低めだが、回転を上げた際のパワーはしっかりあるので、登り坂も苦にならない。エントリークラスのe-Bikeながら完成度は非常に高いと言える。

「VADO」シリーズには、またぎやすい形状のフレームを採用したステップスルーモデルや、上級のコンポーネントを採用した「TURBO VADO SL 5.0」(価格は407,000円/税込)もラインアップされている

「VADO」シリーズには、またぎやすい形状のフレームを採用したステップスルーモデルや、上級のコンポーネントを採用した「TURBO VADO SL 5.0」(価格は407,000円/税込)もラインアップされている

e-Bikeの性能を語るうえで、ドライブユニットのトルク値はひとつの基準となるが、スペシャライズドはトルクの大きさをあえて追い求めず、軽さや理想的なQファクター(左右のペダル間の距離)の実現に重きを置いている。自転車乗りの立場から、どういうe-Bikeが理想的かを考えて作り込んでいるため、アシスト機能を搭載していないロードバイクやマウンテンバイクに長く乗っているライダーがe-Bikeに乗っても、スペシャライズド製は理想的と感じるようで、筆者の知り合いのライダーもスペシャライズドのe-Bikeを選ぶ人が多い。

だが、この特性は玄人だけが感じるものではない。エントリー層向けの「TURBO VADO SL 4.0」に乗って、車体の軽さや重量バランス、運動性能などは初心者を含める誰もが恩恵を得られると感じた。

新型ドライブユニットからも感じるスペシャライズドの思想

「VADO」シリーズに搭載されているドライブユニットは「SL 1.1」タイプだが、ロードバイクタイプのe-Bikeには、設計がより新しい「SL 1.2」タイプが採用されている。

スペシャライズドのロードバイクタイプのe-Bikeの頂点に位置する「S-Works Creo 2」。価格は1,815,000円(税込)

スペシャライズドのロードバイクタイプのe-Bikeの頂点に位置する「S-Works Creo 2」。価格は1,815,000円(税込)

「SL 1.2」タイプのドライブユニットは、出力が33%アップの320W、トルクが43%アップの50Nmに向上しているが、最も力を入れたのはそうしたスペック値の向上ではなく、コンパクト化だという。e-Bikeはドライブユニットがあるため、Qファクターが普通のロードバイクやマウンテンバイクなどのスポーツ自転車に比べて広くなりやすい。Qファクターはある程度狭いほうが長距離を走った場合の疲れが少ないと言われており、e-Bikeでも理想的なQファクターを目指して「SL 1.2」は開発された。その結果、「SL 1.2」タイプのドライブユニットを搭載したロードバイクタイプのe-BikeのQファクターは、同ブランドの普通のロードバイクと同じ幅を実現。アシスト機能だけに頼らず、自転車としての性能も妥協しないスペシャライズドの思想が感じられた。

「SL 1.2」タイプのドライブユニットは圧倒的に幅が狭い。これにより、理想的なQファクターを実現

「SL 1.2」タイプのドライブユニットは圧倒的に幅が狭い。これにより、理想的なQファクターを実現

増谷茂樹
Writer
増谷茂樹
カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。
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中村真由美(編集部)
Editor
中村真由美(編集部)
モノ雑誌のシロモノ家電の編集者として6年間従事した後、価格.comマガジンで同ジャンルを主に担当。気づけば15年以上、生活家電の情報を追い、さまざまな製品に触れています。
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