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2021年 次点

概要

名称バランワンダーワールド画像
ジャンル3Dアクション(ワンダーアクション)
対応機種PS4/PS5 [外部リンク]/NintendoSwitch [外部リンク]/XboxOne/XboxSeriesX|S [外部リンク]
発売元スクウェア・エニックス
開発元スクウェア・エニックス / アーゼスト
発売日2021年03月26日
価 格7678円(税込価格)、パッケージ版・DL版(Xbox系はDL専用)
対象年齢CERO:A(全年齢対象)

その他

  • Steam、Windows版も配信されているが、ここでは扱わない。

参考動画

選評

選評1

BALAN WONDERWORLD(バランワンダーワールド)
対応機種:PlayStation5 / PlayStation4 / Nintendo Switch/ Xbox Series X|S / Xbox One / Steam / Windows 10
発売日:2021年3月26日
価格:7,678円(税込)
開発:スクウェア・エニックス / アーゼスト
発売:スクウェア・エニックス
備考:ver1.01、switchlite、パッケージ版でのプレイ

1.概要
『バランワンダーワールド』は、舞台ミュージカルをモチーフとしたワンダーアクションゲームです。主人公は、ステージ上にある個性豊かな衣装能力を駆使しながら、現実世界での思い出や風景、大切なものなどが入り混じった不思議な心象世界「ワンダーワールド」を冒険します。ワンダーワールドに存在する12の物語は、それぞれ違った特徴を持って主人公を待ち受けています。迷宮のように入り組み、様々なギミックが配置されたステージをすみずみまで踏破することで、物語は核心へと迫っていくでしょう。(公式サイトより引用)

本ゲームはスクウェア・エニックスより新規IPとして制作された、箱庭探索型3Dアクションゲームである。スーパーマリオ64のようと言ったら分かりやすいだろうか。
ソニックシリーズの生みの親として知られる中裕司氏と大島直人氏の20年ぶりの共同開発ということで注目されていた本作だったが、蓋を開けてみるとそこには果てしない虚無が広がっていた。

2.操作方法
ABXY,ZL,ZR:アクション、決定
左スティック:移動、選択
十字キー:選択
右スティック:視点移動
LR:衣装変更
プラス:メニュー

なんと言ってもこのゲーム、6つのボタンのどれを押しても同じであり、素っ裸の状態では移動とジャンプしか行えない。アクションゲームにおける基本動作と言える攻撃も、ダッシュも、しゃがむことも、2段ジャンプも壁蹴りもできない。正直この時点でアクションゲームとして破綻している。
勿論ジャンプだけでクリアできるはずもなく、「衣装」を身に纏うことで他の動作も行うことができるようになるのだが、この衣装こそが最大のストレス要因であり、本作が酷評される所以である。

3.衣装
ワンダーワールドの住民たちが持つチカラを、主人公は「衣装」としてまとうことができます。その数は80種類以上。エネミーを倒す、空を歩く、時を止める、ギミックを扱う…新たな衣装を手に入れることでステージ攻略の可能性は広がります。(公式サイトより引用)

紹介文にある通り、主人公は各ステージに2,3種類程配置されている「衣装」を纏うことで様々な能力を扱えるようになる。…のだが、前述した通りこの衣装にはかなりの問題点が内包されている。

(1)ジャンプすらできない衣装が多々ある
先にも言及したが、本作は6つのボタンに同じアクションが割り振られており、移動以外に行える動作が1つしかない。つまり攻撃しかできない衣装を着用した場合、十数センチ足を上げれば上れそうな段差すら上れなくなるのだ。これは探索を主とするこのゲームにおいて、致命的な欠点である。(「スーパーマリオからファイアマリオになるとジャンプ出来なくなるゲーム」という例えがとてもしっくりきた)
よって、ジャンプ→衣装切り替え(約2秒のアニメーション)→攻撃→衣装切り替え(約2秒)→ジャンプ→…を延々と繰り返すこととなり、とてつもなくテンポが悪い。
勿論アニメーション中に移動など他の動作を行うこともできない。

(2)衣装はストック制
一度手に入れた衣装はいつでも選べるようになる…なんてことはなく、落下または敵の攻撃を受けると身に着けていた衣装は失われてしまう。そのステージで入手できない衣装を失ってしまった場合、もう一度その衣装があるステージまで取りに行かなければいけないのだ。各ステージに配置されているバランスタチュー(次の章を解放するのに必要なアイテム)を収集するにはそのステージで入手できない衣装が必須となるため、この問題が多発する。
一応衣装は繰り返し獲得できるのだが、再度出現するのに30秒かかる。ストックを作るために衣装の復活を待つ時間は虚無以外の何物でもない。

(3)3つまでしか所持できない
その場で持っていられる衣装は3つまで(同一衣装*3でも3つとしてカウント)であり、4つ目の衣装を手に入れると一番後ろの衣装がコスチューム部屋に送られる仕様となっている。
ここだけ聞くと「戦略性のあるゲーム」として受け入れられる気もするが、前述の「ミスすると衣装を失う仕様」と相まって更なるストレスを生み出すこととなる。
セーブポイント上に4秒間立ち続ける、またはセーブポイント上で2秒間ABXYZLZRいずれかを長押しでコスチューム部屋に入ることができる(その説明は無いのでプレイヤーは自分でこの事に気づかなくてはいけない)が、章が進むごとにセーブポイントの間隔も伸びていくため、探索→アイテム発見→アイテムを取るための衣装を取りに直前のセーブポイントまで戻る→アイテム取得→探索再開→アイテム発見…のループの苦痛がどんどん増していく。全スタチューを獲得するには1つのステージ内だけで大抵4種類以上の衣装が必要になるため、この工程を必ず踏まなければいけない。本当にテンポが悪い。
また、衣装を3つとも失い裸の状態で攻撃をくらうと直前のセーブポイントまで戻されるため、これが実質的な残機となっている。

(4)鍵が無いと取れない
各ステージに数個ずつ配置されている衣装だが、これらは同じくステージ上に配置されている鍵が無いと取得できない。序盤は衣装と鍵が並べて配置されていることが多いため(それはそれで存在する理由が解らない)さほど気にならないが、終盤は鍵と衣装の距離が離されることが多くなり、衣装発見→鍵探す→鍵取得→衣装の所へ戻る、の往復が始まる。控えめに言って面倒臭い。
ちなみに「鍵が無くても衣装が取得できるようになる衣装」というのも存在する。本当に意味が分からない。ますます嫌がらせとしか思えなくなる。

(5)ほとんどが互換性がある
「80種類以上の衣装が、あらゆるアクションを可能にする」
などと銘打っている本作だが、登場する衣装は大きく4つに分けることができる。

①移動系(飛距離、長距離アップ)
②攻撃系
③特定のギミック用(キャンパスを塗る、歯車を回す等)
④ミニゲーム用

「B長押しでジャンプ距離が少しのびる」「B長押しで空中を歩き、少しはなれた場所に行くことができる」といったように同じ効果の衣装が多々あり、80種類というのは詐欺に等しい。酷いものだと完全に上位・下位互換の関係になっている。
なお、詳しくは後述するが本作の敵は倒す必要性が無く、倒すにしてもボス以外は大抵ジャンプで倒すことが出来るため攻撃系の衣装も無用の長物である。
ギミックも大抵各章にしか出てこないため、「たまに見かけたらセーブポイントまで戻って対応する衣装を取りに行く」程度である。さらに移動系の衣装が充実しだすとギミックを無視出来ることが多くなり、大半の衣装が使われないまま眠ることとなる。
特に「一定時間で点灯と消灯を繰り返す」など一定時間で変わる類は馬鹿馬鹿しいとしか言いようがない。一生照らしとけ。
そして一番酷いのがミニゲーム専用の衣装。これらは各章に1つずつ配置されており、ゴルフ、サッカー、野球、ボウリングの4種類で遊ぶことが出来るのだが、ミニゲーム中に衣装が変わるだけでミニゲームを終えると消えてしまうため探索中に着ることは出来ない。
また、このミニゲームは4種類とも同じ内容であり、左右に移動するゲージを特定のポイントに合わせるだけである。昔のブラウザゲームにすら圧倒的に劣っている。本当に面白くない。これをやったところで手に入る報酬はめちゃくちゃしょぼいので次第にこの衣装を避けるようになるのだが、うっかり鍵を持った状態で触れてしまったら最後、このゲームを遊び切るかタイトル戻る(セーブしていないデータは消える)かの二択を迫られる。
一度クリアしたらミニゲーム単体で遊べるようになる…なんて事もないので何のためにあるのか全く理解できない。ただゲームの進行を妨害しているだけとしか思えない。嫌がらせ?

衣装の外観についてだが、ミニゲームの衣装以外は全て「ワンダーワールドの住民たち」の顔部分を切り取っただけのものであり、衣装というよりは着ぐるみである。残念ながら筆者は可愛いと思えなかった。

4.バランスタチュー
少々今更ではあるが、本作の流れについて紹介していこうと思う。
本作は12の章から成っており、各章にアクト1とアクト2が存在する。そしてその両方を踏破するとそれぞれのボスと戦うことが出来る。ボスを倒せば次の章が解放される訳ではなく、「バランスタチュー」という各ステージに7~9個配置されている銅像を一定数集めなければ先へ進めない仕様だ。(勿論一度獲得したスタチューは2度と取れない)
ステージ自体は全て一本道であり大して悩む要素は無いのだが、このバランスタチューが巧妙に、ありとあらゆる場所に隠されているため、先ほどの衣装のことも相まってプレイヤーは苦戦を強いられる。

(1)不便な視点操作
スタチューを探すにあたって周囲を見渡す必要がある訳だが、このカメラがすぐオブジェクトに引っ掛かったり、壁を貫通したりするのでひたすらにストレスが溜まる。
また、オートカメラをオフにしても勝手にアップにされたり強制的に上を向かされたりする場面が数多くある。これは主人公を移動させないと直らず不安定な足場の上でも容赦無く起きるため、落下→衣装消失のコンボを誘発する。勘弁してくれ。

(2)ありそうな場所に無い
ゴールまでの本筋に関係のない細い道を見つけた時、
「ここにありそう!」
誰しもがそう考えるのではないだろうか。そんな希望を抱き、衣装を失いながら辿り着いた先にあったのが大ドロップ1つ(道中に山ほど落ちている小ドロップ10個分)だったプレイヤーの気持ちを想像してみて欲しい。
当然、ありそうな場所にちゃんとある場合もあるので無視するわけにもいかない。

(3)背景との見分けがつかない
背景だと思っていた場所にスタチューが隠れていることが多々あるため、飛行できる衣装を纏い虱潰しに特攻していく羽目になる。無論、実際に背景だった場合はそのまま落下し衣装を失う。
以下に筆者が一番理不尽だと思った場面を添付しておく。
https://imgur.com/a/iRsARWP [外部リンク]

(4)バランチャレンジ
スタチューと同様の場所に帽子の形をしたオブジェクトが各ステージ1~3個配置されており、これに触れると「バランチャレンジ」というQTEが始まる。これをクリアすることでバランスタチューが手に入るのだが、このバランチャレンジこそが、本作を代表すると言っても過言ではない悪名高きシステムである。
勿論嫌われるには訳があるので、問題点を大きく4つにまとめる。

①映像が使い回し
バラン(本作のキーキャラ)が敵と戦っているムービーが流れるが、数種類の映像を継ぎ接ぎしただけの使い回しなのですぐ見飽きる。その各映像も同一の背景で似たような動きをするだけなので、代わり映えがしない。

②つまらない
そもそも面白くない。QTEとは言うがやる事は「動く半透明のバランがバランに重なったタイミングで6つのボタンいずれかを押す」と「連打」の2パターンのみで、これを4~6回繰り返すだけである。ミニゲームと同レベルにつまらない。

③最高評価以外は失敗扱い
評価は「Excellent」「Great」「Good」「Miss」の4種類だが、最大6回あるタイミングで全て「Excellent」を取らないとバランスタチューは手に入らない。「Great」と「Good」はミスとほぼ同義なのだ。(「くまのプーさんのホームランダービー!」における「ヒット」のようなもの)
しかもその重なるタイミングというのがとても分かりづらくシビアなので、GreatとGoodが頻発する。ミスした後も続く約2分のムービーを眺める時間は虚無以外の何物でもない。

④再挑戦できない
最悪なことにこのゲームには「ボスを倒さないとその章のギミックやアイテムがリセットされない」という仕様があるため、一度失敗してしまったら章のボスを倒さないと再挑戦できない。

様々なギミックを潜り抜け発見したのがこの帽子だと正直げんなりするが、スタチューを集めないことには先に進めないので避ける訳にもいかない。
ちなみにバランチャレンジは全部で48回ある。

5.敵
アクションゲームなので当然倒すべきキャラクターも登場し、各ステージの道中には雑魚敵(公式サイトによると「ネガティ」と言うらしいが作中にそんな単語は出てこない)が湧く。が、すぐリスポーンするので爽快感もなく、落とすアイテムも小ドロップ2つとしょぼいので倒す必要性が無い。
色々種類はいるようだが、攻撃方法や外見に大差はないので面白味もない。
出現と同時に音楽も書き変わるので、ステージ固有の楽曲が楽しめなくなる。ウザい。
また、このゲームにはメタAIなるものが搭載されており、敵を倒せば倒すほど難易度が上がってしまうため、むしろ敵は倒さない方が良いまである。

・ボス
アクト1と2両方をクリアすることでその章のボスと戦うことが出来る。
12章それぞれの特徴を持った敵と戦うことになる訳だが、全て倒し方は「心臓に3回攻撃を当てる」であり大して面白くもない。なんなら全てのボスを倒した後に出現するラスボスも同様である。
しかも衣装変更のアニメーション中は無敵になり、Rボタンを連打するだけで攻撃を避けることができるのでテクニックすら要らない。
余談だが、作中にボスそれぞれの名称は登場せずそのまま「ボス」と、ラスボスは「最後のボス」と表記されている。世界観もクソもない。

6.ティム
本作には「ティム」というよく分からない小鳥が登場し、ステージ内に散らばっているドロップはティムに与えるために存在する。与えられるドロップは4色存在するのだが、インタビューによると「ドロップを食べれば食べるほど色が濃くなり、赤が強くなるとより多くのネガティを攻撃してくれたり、ピンクだとアイテムを多く集めてくれたりする」らしい。作中にそんな説明は一切無く、20時間以上プレイした筆者は気づかなかった。
探索に5匹連れていけるのだが自分で選べるのは一匹までである。ドロップを与えるにも「主人公がドロップをばら撒いてティムが食べにくる」という形なので自分で選択することは出来ない。
さらにティムには何故か寿命が存在し、気づいたら減っているので、ステージ内に落ちている卵を拾ってくる等を定期的にしなくてはいけない。
また、各ステージをクリアするにはティムがいないといけないため、道中に配置されている食虫植物に捕食されると引き返さざるを得なくなる。ティムは基本主人公の後ろを付いてくるので気づくことが困難であり、ただただウザい。

7.ストーリー
「アクションゲームとしてクソでもストーリーが良質ならクソゲーとは言えないのではないか?」と思うだろうが、本作のストーリーは「分からない」この一言に尽きる。
以下に話の流れを記す。

・オープニング
エマ(女主人公):メイド達の陰口が気になり家から飛び出す。
レオ(男主人公):公園で一人で踊っている。他の子供たちから声を掛けられるが無視して公園を出る。
共通:ティムを追いかけているうちに見知らぬ館へ。バランに「こころのかけらを探せ」と言われ、プレゼントされたティムと共にワンダーワールドへ。
・第1章
ボス戦前:農作業を頑張るおじさん。ところが畑に竜巻が。落ち込んでいるところ、ランス(敵キャラ)に姿を変えられ「ボス」になる。
ボス戦後:生き残ったトウモロコシを発見。おじさん感動!
・第2章
前:海でイルカと仲良く泳ぐ女性。イルカがじゃれてきた拍子にレギュレーターを離してしまい溺れる。一命は取り留めたもののイルカを嫌いになる。
後:仲直りし、イルカと共にダイビング。
・第3章
前:虫が好きな女の子。共感を得られず孤独を感じる。
後:勇気を出して同級生に蛹を見せると、そこで蝶に孵化。一躍人気者に。
・第4章
前:空を飛びたい少年。実験を重ねるが失敗が続き発狂。
後:ちゃんと勉強し、飛行機を完成させ空へ飛び立つ。
・第5章
前:森でバードウォッチングを楽しむ女性。都市建設のために森林伐採され悲しむ。
後:街に緑を増やすことを提案。鳥も戻ってくる。
・第6章
前:可愛がっていた猫が車に轢かれてしまい、ショックで逃げ出す少女。
後:(バランが時間を巻き戻したおかげで?)実はその猫は生きており、無事再会。
・第7章
前:チェスプレイヤーの男性。多くの戦績を誇るトッププレイヤーだったが、自分よりも強い相手に出会い敗北し、憤怒。チェスを投げ捨ててしまう。
後:投げ捨てたチェスを拾い集めてくれた少年と対局。真剣に次の手を考える少年を昔の自分に重ねる。子供たちとチェスに興じている間に笑顔に。
・第8章
前:両親と婚約者と共に幸せな日々を送る女性。両親を亡くしてしまい悲しみに暮れ、ショックから恋人すらも拒絶したことで1人になってしまう。愛する者を全て失い自分の殻に閉じこもる。
後:恋人から以前貰った指輪を見て、恋人の元へ走り出す。恋人はずっと心配してくれていた。2人は無事結婚。
・第9章
前:遊園地でピエロとして働く男性。パレードのプリンセス役の女性に一目ぼれするが、振られた時のことを考えてしまい、想いを伝えられずにいる。
後:勇気を出して素顔で告白。2人は結ばれる。
・第10章
前:有名な画家の女性。制作に励んでいたがスランプに陥り、評判も落ちていく。
後:スランプ中に描き殴った絵の1枚をふと見て立ち直る。晴れやかな気持ちで描き上げた絵は賞賛を得る。
・第11章
前:ヒーローに憧れる新米消防士。しかしいざ火事の現場に来ると、炎に足がすくんでしまう。
後:勇気を出して特攻、無事少年を救い出す。新聞にも掲載される。
・第12章
前:街でゴミ拾いに勤しむお爺さん。しかしどんなに拾っても拾っても減らないゴミと、呼びかけも意に介さない通行人達。まるで自分は透明人間ではないかと絶望する。
後:それでもめげずに活動を続けていたところ、次第に人々が手伝ってくれるようになる。皆から賞賛されるお爺さんの姿はキラキラと輝いていた。
・ラスボス戦
前:暗闇の中、ネガティに囲まれたところにランスが現れる。ワンダーワールドに来る前のことを回想する主人公。決意を固め最後の戦いへ。
中:ランス第二形態へ。ピンチの主人公の元に12人が駆けつけ、それぞれ衣装を授ける。
後:倒された第二形態の中から現れる白いランス。ネガティの攻撃を受け、暗闇に飲まれる。→仲良くみんなで踊る。
・エンディング
共通:お別れ。なぜか男女主人公が揃っている。14個の扉が用意され、12人はバランと握手などを交わした後自分の世界へ帰っていく。主人公2人がバランに抱きつき、バランは涙を流す。流した涙はドロップへと変わる。現実世界へと戻り、共に公園で目覚めた2人の表情はとても爽やかだった。
エマ:家に帰ると、またもやメイドに陰口を叩かれる。落ち込む主人公だったがそれらは勘違いであり、実は誕生日パーティーをサプライズで行うためヒソヒソ話していただけだった。盛大に祝われ、泣いて喜ぶ主人公。
レオ:以前話しかけてくれた子の前でバク転を披露し、手を振る。無事公園の子供たちと仲良くなることが出来た。
・スタッフロール
後日談。なぜか12人が仲良くなっており、関わり合う様子を見ることが出来る。エマが路上で踊るレオに声を掛け、共に踊る。

以上が本作のストーリーの全貌だ。ここで注意してほしいのが、これが「まとめ」ではなく「全て」だということである。頑張って読み取り、多少の考察も加えた上で得られる情報がこれだけというのはストーリーに重きを置くゲームとしてどうなのだろうか。
というのも作中で話される言葉は全て架空言語であり、基本的に字幕も無いため映像のみから物語を読み取るしかなく、その映像も数少ないため本当に情報が無い。考察しようにもその材料が無いのでどうしようもない。「プレイヤーの受け止め方の幅を広げたかった」らしいが、人によって受け止め方が変わるような話はどこにも見当たらなかった。
何よりも、キーパーソンであろうバランとランスについて何一つ明かされていない。共にいる描写が全く無かったのに、肝心のラストで何食わぬ顔で隣に並んでいる男(女)主人公にも非常にモヤモヤさせられる。
また、一度は負の感情に飲まれたキャラクター達が何故立ち直ることができたのかというのも気になるが、その過程も全く描写されていないので全く分からない。起承転結の「起」と「結」しか描かれていない物語が面白い訳がない。仮に悩みに共感したとして、解決の糸口も示さず独りでにハッピーエンドへと向かうため、置いてけぼりにされたプレイヤー達は強烈な虚無感に苛まれることとなる。
そんなことよりも分からないのがミュージカルの存在だ。本作は一応ミュージカルをテーマにしているらしく、各ボスを撃破するとその章のキャラと主人公が2人で踊る映像が挿入されるのだが、これがまた意味が分からない。脈絡が無さ過ぎる。ミュージカルとは言ってもキャラクター達の口は開いていないので、正しくはミュージカル「もどき」である。ミュージカルが好きな人に謝った方が良い。
演出が凝っているなんてこともなく、3曲を使いまわしているだけなので観ていて楽しい訳でもない。各章のスタチューをコンプリートすると英語verが解放され日本語の歌詞も確認できるが、曲が同じ都合上キャラごとに歌詞が変わるなどの考察を広げる要素もない。「あきらめないで」だの「1人じゃない」だのとてもありふれた、陳腐な言葉が並べられているだけである。
なお、スタッフロールの後に表示される言葉は

ーどんな時間も、無駄ではなかったー

無論、このゲームに費やした時間が無駄であるということは言うまでもない。

8.その他不満点
・UI
メニュー等を操作する時、AボタンとBボタンが同じ動きをする弊害でBでキャンセルすることが出来ない。いちいちカーソルを「もどる」まで持ってこなくてはいけないため誤操作が多発する。
円形に並んでいるティムズエリアの各章へのゲートだが、これが1~12の順番に時計回りになっている訳ではなくぐちゃぐちゃに配置されているので、毎回お目当ての章を探す羽目になる。

・グラフィック
グラフィック自体は特筆するほど悪い訳ではないのだが、うねる床や回転し続ける足場等が登場するためとても酔いやすい。さらに、探索中視野の狭いカメラを360度振り回すことになるので本当に酔いやすい。

・フォトモード
メニューの「その他」の中にひっそりと存在する機能。ステージ内の写真を撮ることが出来る。しかし、フォトモードを起動してから移動することは出来ず、撮りたい瞬間にフォトモードを起動しなければいけないので最初から本体の撮影ボタンを押した方が早い。

・2人プレイ
専用ステージや対戦モードがある訳でもなく、1人でクリア出来る既存ステージを2人でやらされるだけなのでつまらない。

9.クリア後の要素
以下には要検証の要素を含む。すみません。
なお筆者はバランチャレンジに挑めないバグが発生したため、バランスタチューをコンプリートすることが不可能である。(証拠動画:https://imgur.com/a/dY53t3g [外部リンク] 、対処法求む


・アクト3
エンディング後、各章にアクト3が追加される。アクト1のステージまんまでギミックを変えただけなので目新しさは無い。こちらには虹色のバランスタチューが隠されている。

・スタチューコンプリート
頑張ってスタチューをコンプリートしたところで貰えるのはスタチューが踊る奇怪な映像のみである。(参考:https://youtu.be/Ldlvr3QKdQo [外部リンク]
虹スタチューも同様。

・ティムタワー
ティムズエリアの真ん中にある謎の建造物。ティム達はこの中で勝手に働き始め、隣に設置されているカウンターのカウントが進むことでタワーが完成に近づいていく。が、この建物は何なのか、一体何のために建設しているのかは最後まで分からない。さらに、完成しても何もない。(参考:https://youtu.be/uSKl6Z34nsk [外部リンク]
完成させるにはカウントを24000にする必要があるが、黄色ドロップを与えないことにはほとんど進まないため途方もない時間がかかる。
ちなみに、ティムが働いてる間はドロップを与えようとばら撒いても来てくれない。

・伝説のティム
赤青ピンクのバッジ(ドロップを各色30個ずつ与えると付くらしい)の付いた最大サイズのティムと持てるサイズのティムを一匹ずつ用意し、投げてお互いをぶつけると確率で王冠を被ったティムが生まれ(ヒントも説明も無い)、それを虹色のドロップを10個程与えた「伝説のティム像」に捧げると「伝説のティム」が出現し、衣装「バラン」を入手できる。
バランの衣装の効果は「10段ジャンプ+滑空(ほぼ無限飛行)」であり、これを手に入れた暁には2度と他の移動系衣装を使わないだろう。

10.まとめ
確かにバランワンダーワールドに重篤なバグは発見されていないし、最後まで遊ぼうと思えば遊ぶことは出来る。与えられるストレスの「質」という点では他のクソゲーに及ばないかもしれない。しかし、本作がプレイヤーに与えるストレスの「数」は段違いなのだ。見ただけでは分からない「クソ」が、ここには確実にある。
探索により蓄積されたストレスは人々を大きく苛立たせ、その苦しみを乗り越えた先に待っているのは、不明瞭なストーリーによる虚無である。これをクソゲーと呼ばずに何がクソゲーだと言うのか。
20年大賞のファイナルソードが「感情を共有したくなるクソゲー」であるならば、バランワンダーワールドは「感情を共有できないクソゲー」と言えるだろう。最後まで遊べてしまうからこそ、
「早く解放してくれ!」
そう願ってしまうようなゲームなのだ。今一度、クソゲーとは一体何なのか考え直そうではないか。
少なくとも私は、ストレスが快感へと変わるマゾヒスト以外にはこのゲームを勧めようと思わない。

11.参考資料
https://www.ndw.jp/balanwonderworld/ [外部リンク]
https://www.famitsu.com/news/202103/26216444.html [外部リンク]

反選評1

※反選評としての主張(結論)は却下されたものの、選評1への指摘は受け入れられたため掲載する。

バランワンダーワールド PS4版反選評
PS4版12章・ラスボス戦までクリア(一人プレイのみ)の状態で執筆

(1)はじめに
 バランワンダーワールドは本質的には、「さまざまな消費アイテム(=衣装)を持ち替えたり使い捨てたりしながら箱庭探索を行うゲーム」である。古典的な探索ADVにも似たコンセプトの古さや、RPGやSLGにおけるアイテム・資源管理のような要素が嗜好に合うかどうか、という点で人を選ぶゲームになっている。そこさえ合えば、不満点も確かにあるのだが、評価点も多いため気に入る人もそれなりの割合で存在するだろう。
 筆者が検証したPS4版は、そういう意味で決して万人に勧められる内容ではないが、「クソゲー」、特にKOTYスレで取り上げられるほどのクソゲーだとは言い切れない。

 ただし、もともと人を選ぶうえ、システム上非常に重要な「衣装の収集管理」「バランスタチューの収集」のため頻繁にアクトへの出入りや移動を繰り返し、手間を掛ける必要がある。処理落ちや各アクトのロード時間、解像度の関係でそれらの手間に加えて、さらにいちいちストレスがかかるSwich版はおそらく全てが関連しあって「めんどくさい! クソゲー!」となってしまいやすいプレイ感になっているのは想像に難くないし、否定もしない。ただし、Switch版の選評にはストレスのためだろうが、誤解を招く誇張表現に見えかねない部分があるので、そうした部分については改訂をお願いしたい。


(2)衣装の概要まとめ
 まず、プレイの要となる衣装についてまとめる。
 衣装は大きく「移動系」「ギミック系」「一定時間系」「ミニゲーム系」に分けられる。
 衣装は取得前からアイコンで種類がわかり、鍵を持っている状態で接触すると入手できる。アクト探索中は3着まで保持でき、それを超えて取得した場合は3着のうち最後尾のものが衣装室に送られストックされる。
 衣装の効果は初取得時に表示され、衣装室での準備時、OPTIONSボタンでのポーズ時に確認できる。

・「移動系」
 飛行や滑空・瞬間移動などの能力で、探索範囲を広げられる衣装。基本的に後の章に出てくるものほど移動範囲が広いが、「長距離空中移動できるが上方移動はできない」「特定ポイントで大きく滑空距離が伸びる」など、衣装によって異なる特性がある。ジャンプの速度や操作感覚も、衣装によってかなり異なる。
 8章で入手できる「フロストフェアリー」は「長距離空中移動+上方移動可能」で非常に便利だが、探索場所によっては「これだけでいい」というわけでもない。

・「ギミック系」
 「ビームや弾で離れたスイッチを押す」「ブロックを破壊する」「専用の扉を通過する」など特定のギミックや地形・関門を通過するための能力を持った衣装。弾を撃ち出すタイプの衣装は遠隔攻撃の手段としても使える。ギミック系衣装が必要な箇所はいかにもそれらしいオブジェクトが置かれているため、すぐに気がつく。
 このタイプの衣装は着用中ジャンプ不能になるものが多く、使用時ストレスを感じやすいのは確かだ。しかし、敵は特定地点のみの出現で、最終盤を除けばそこまで頻繁に戦闘があるわけでもない。戦闘時も他タイプの衣装でジャンプすれば敵は倒せるので、ボス戦以外ではわざわざこの系統の衣装に切り替える必要性を感じない。例外は飛行して追尾してくる敵を撃墜したいときと、ジャンプ攻撃が不可能な敵に対処するときぐらい。
 つまり、ギミック処理のために一時的に利用するのがメインで、ジャンプできないデメリットに耐えて使いまくらないといけない、ということはない。
 選評と衣装の分類が異なるのは攻撃系の衣装の主機能を攻撃と捉えるか、「ブロック破壊」「スイッチ押し」などの機能と捉えるか、という見解やプレイスタイルの違いであり、衣装の性能が機種ごとに違う、というわけではない。

・「一定時間系」
 一定時間ごとに、「姿が消える/現れる」など2種の状態が自動で切り替わる衣装。自動で切り替わってしまうので使い勝手はよくない。動けなくなるうえに勝手に滑ってしまう「ボックスフォックス」など、地雷衣装も存在する。種類は少ないのが幸い。

・「ミニゲーム系」
 ボウリング・バッティングゲームなどのミニゲームを行うものと、特定地点で音楽を演奏するものがある。いずれもトロフィー条件に関連しているが、前者はミニゲームの結果によって報酬(ドロップ)が入手できる。ミニゲームは特に害は無いが時間を取られるので、面倒ならば取得しないでおけばよい。


(3)衣装のストック管理関連要素
 このゲームの衣装は消費アイテムである。ダメージを受ける、フィールドから落下するなどで着用中の衣装は失われ、補充する必要がある。快適にプレイするためには衣装のストック管理が必要で、ここがプレイのコツであることは、おそらく3章くらいまでプレイすれば理解できるだろう。
 そのあたりまでプレイしていれば「ああ、ここは今の手持ち衣装では進めないな」ということは体感的に分かるし、先の章に行くほど有用な移動系衣装が手に入ることも分かってくるので、「その段階で取れないものは無理をせず、しばらく進んで有用な衣装を溜めてから戻ってきて回収する」のが基本になる。これはRPGの「今は倒せない固定敵はレベル上げしてから戻ってきて倒す」「通れない場所は先に進んでアイテムや乗り物を入手したら通れる」のような感覚に近い。
 この衣装関連の作業については、鍵と衣装取得の仕様、チェックポイントの仕様が分かっていないと変に理不尽すぎる印象を与えかねないので、両仕様についてまとめておく。

・「鍵関連」
 ・衣装を手に入れるには鍵がいるが、だいたい衣装から数秒~10秒程度の距離にある。
  未使用の鍵はアクトから出ると消滅する。
 ・鍵は配置場所が固定されており、一度取得しても約30秒で再出現する。
 (衣装の再出現もだいたい同様だが、時間以外にも条件があるようで秒数は安定しない)
 ・鍵は特定の衣装にしか対応しないわけではなく、他の場所の別衣装にも使える。

・「チェックポイント関連」
 選評では「セーブポイント」と表記されているが、実はこの地点でオートセーブは行われていないので、本稿では「チェックポイント」と表記する。実際にオートセーブが行われているのは、アクトに出入りするタイミングである。
 ・「落下死後の復帰時」と「探索途中でホームに戻り、再度同アクトに入る」場合は、
   アクト中で最後に通過したチェックポイントから復帰する。
 ・チェックポイントでは、4~5秒立ち止まるか、ボタン長押し(衣装室に入るまで押し続ける)
  で「衣装室」に入ることができ、衣装の交換・整理が行える。
 ・衣装を失いやすい難所手前には、チェックポイントがほぼ確実に設置されている。
  (11・12章はチェックポイントの設置間隔がやや遠く、その分難度が高いが
   ゲーム最終盤であることを考えれば特に理不尽な設定・難度ではない。)
 ・衣装の配置場所近くにチェックポイントがあることも多い。
  先に挙げた「フロストフェアリー」などは、チェックポイントのすぐ横にある。

 鍵は確かに無くてもいいシステムではあるが、探索中特に邪魔になる要素でもない。プレイに慣れて有用・必要な衣装が分かってくると、それだけ狙って回収するようになるので、鍵は余り気味になるからだ。
 章ボス戦では鍵と衣装が離れて配置されており、「3度ダメージを与えたら終わり」であるボス戦で、ある種の難度調整の機能を担っていると思われる。

 チェックポイントは最初に説明がないため分かりづらいという難点はある(それほど難解な仕様ではないので、序盤でいろいろやっているうちに分かる)が、仕様自体はプレイヤーに優しく出来ている。
 目当ての衣装近くのチェックポイントを踏んでからホームに戻っておけば、後からのストック回収は意外と簡単だ。難所を越えたあと、帰り道が面倒な場合はわざと落下してチェックポイントまで戻る、という、いわゆるデスルーラ戦法も仕様が分かってくると活用しやすくなる。


(4)ゲーム進行について バランスタチューとチャレンジ
 バランは全12章+ラスボス戦ステージの構成で、各章はアクト1・アクト2・ボス戦からなる。(ゲームクリア後にアクト3が追加される。)章ボス戦はアクト2までクリアしていれば、いつでもボス戦単体でチャレンジ可能。ラスボス戦も、開放されていれば同様に単体でいつでもチャレンジ可能である。
 各アクトには「バランスタチュー」が設置され、スタチューの累計取得数が次章の開放条件になっている。スタチュー数が開放条件であると示されることは無いが、画面下部に「65/80」のように「現在取得数/次の目標取得数」が表示されるので、気づくのは容易である。
 このスタチューがさまざまな所に巧妙に隠してあることは「箱庭探索」がメインのゲームとしては特におかしなものではないが、煩雑な要素として嫌われやすいようだ。しかし、全228本のスタチューのうち、クリアまでに必要な数は実は110本でしかない。トロフィーコンプ目的などでやりこむならともかく、普通にプレイするだけならば特に厳しいというほどの条件ではない。

・「章開放に必要な累計取得スタチュー数」
  初期状態  1章 初期から開放
  開放1段階 2-3章 8本
  開放2段階 4-6章  25本 
  開放3段階 7-9章  50本
  開放4段階 10-12章 80本
  最終開放  ラスボス戦 110本

・「スタチューの収集方法」
 ・各アクトのマップ上に6本ずつ配置されている。その地点に到達できれば入手。
  その章内で入手できる衣装では取れないものがだいたい半分ほどある。
 ・「バランチャレンジ」が1~4章は各アクト1回、5~8章は2回、
   それ以降は3回設置されており、チャレンジに成功するごとに1本スタチューを入手。
 ・各章ボス戦で、与ダメージのパターンが3種準備されており、その特定のパターンを
  突くごとに1本スタチューを入手。

 スタチュー取得方法のうち「バランチャレンジ」の回数が多く、さらにクリアしにくいことがストレス源となるのは確かだが、チャレンジに一度も成功しなかったとしても、特に無理なくクリアまでは進行できる。筆者の検証では「チャレンジに入れるかどうか」のみを試し、チャレンジ自体はクリアまでほぼ全て失敗させて進行してみた(一回だけ誤って成功させてしまった)が、それでも収集数で「苦労した」という感は無い。
 3および6章の各終了時にそれぞれ3~4本程度足りなかったが、ボス戦に再チャレンジする、新しく手に入れた衣装で配置スタチューを取りに戻る、などですぐ不要分を埋めることができた。後半は「フロストフェアリー」をはじめ移動系の衣装が充実すること、アクト10が章構成の関係上スタチューを非常に取りやすいこと、などのためにそもそもほとんど不足しなかった。
 参考までに、筆者がラスボスまで開放した時点のスクリーンショットを掲載しておく。これだけスカスカでも普通にクリアできる設定なのである。
https://i.imgur.com/2YrDceu.jpg [外部リンク]
https://i.imgur.com/wEfOS8w.jpg [外部リンク]

 また、選評では「ボス戦」について、以下のように記述している。
「全て倒し方は「心臓に3回攻撃を当てる」であり大して面白くもない。なんなら全てのボスを倒した後に出現するラスボスも同様である。
しかも衣装変更のアニメーション中は無敵になり、Rボタンを連打するだけで攻撃を避けることができるのでテクニックすら要らない。」
 しかし、これは誤解を招きかねない書き方だ。倒し方が心臓に攻撃を3回当てる、であることは正しいが、先述のようにパターンを探って攻撃することで最大3本スタチューが得られるため、同じ攻撃ばかりを繰り返してもダメだからだ。さらに、床が崩壊するタイプの攻撃を行ってくるボスも何体かいるが、これはダメージではないので衣装切り替えではしのげない。
 3回ダメージを与えれば終わってしまう、という制限がある中であれこれ試してみるのにはそれなりの緊張感や面白さがある。またボス戦はそれまでの進行内での手持ち衣装でスタチューを獲得できる大きなチャンスなので、あれこれ工夫する価値はある。また、ジャンプできないタイプの衣装も、ボス戦では活躍の場がある。

 ついでに言うなら、ラスボスは第一・第二形態があり、それぞれに3回ずつ攻撃を当てなくてはならない。加えて第二形態は、3パターンの攻撃方法を当てたうえ、最後は一定時間内に4回目のとどめの攻撃を行う必要がある。この第二形態を攻撃するときの各パターンは以前の章でボスを倒したときの特定パターンに酷似しているため、章ボス戦でパターンをあれこれ試して学習していないと攻撃法が分からず、なかなか倒せない場合もあるだろう。

(5)ティム関連
 バランのホームフィールドは「ティムズエリア」と呼ばれ、「ティム」という謎の鳥が生息している。ティムは章内で獲得した「ドロップ」を食べさせると成長し、個体数を増やすことができる。また、章内にはドロップ以外にもティムの卵が落ちており、それを回収することでもティムの数を増やすことができる。
 各アクトをクリアするためにはティムの力が必要である(さらに、体色によっては鍵や卵を回収してくれたり、敵と戦ったりしてくれる)ため、各アクト探索時にはお供として最大5羽が自動的に主人公に付いてくる。
 ティムはモフモフのぬいぐるみのような外見(https://i.imgur.com/WzSvx6D.jpg [外部リンク])で、ティムズエリア内で思い思いに遊んでいるが、主人公がそばに行くと鳴いてドロップをねだり、与えるとドロップの種類によって、色や柄、体型が様々に変わる。また、ティムが嬉しがってポイントがたまると、エリア中央にあるキャットタワーの巨大ティム版であるティムタワーがどんどん高く豪華になっていく。
 個人的にはティムが非常に可愛いので増やしまくり、プレイに疲れたらドロップを撒きまくって和んでいたが、ティムが特に好みでないプレイヤーにとっては、
「ティムがいないとクリアできない・後をついてくる→ うざい」
「育てるためにドロップ回収→ めんどくさい」
「ティムタワーが大きくなる→ だから何?」
ということになってしまい、ドロップ自体が無意味なストレス要素に変わってしまうだろう。この点でも「人を選ぶゲーム」だと言える。
 ちなみに、選評で指摘されている「ティムを捕食する食虫植物」だが、もともと頻繁には登場しないし、オレンジと赤の縞模様でたいへん目立つ。一度ジャンプで踏んでおきさえすればしばらく動かなくなるので、実のところ対処には全く困らないし、ティムを減らされたこともない。だがこれも、ティムに思い入れが無ければ「めんどくさい」要素でしかなくなってしまうのかもしれない。

(6)ストーリー面
 ゲーム内言語は架空言語であるうえ、ストーリームービーは台詞がろくに無く、音楽とマイム的な映像で進行していくのが基本。筆者は小説版や解説などを一切参照していないので、ゲームのみから推測するに、「心の傷を抱えた人の精神世界に、主人公がバランの招きで入り込み、章をクリアすることでその人本来の心を取り戻し、プラスの方向に向かわせる」といった雰囲気のストーリーのようだ。
 各章の解釈も選評とほぼ同一だが、分かりやすい単純な展開であることに特に嫌悪感は抱かなかった。各エピソードの内容面も、苦悩を「乗り越える」のではなく「無かったこと」にしてしまったように見える6章以外は、単純ではあるが取り立てて問題があるものではないし、明るい気持ちになる内容である。操作法を極端にシンプル化し、言語説明に頼らず、グラフィック面などからも明らかに子供をターゲットに入れているであろうと思われるゲームであるため、ストーリー面が分かりやすいことにそこまで目くじら立てる必要もないのでは?と感じてしまう。
 また、ゲームのみではバランやティム、敵役のランスがどういう存在であるのか、精神世界になぜ入り込めるのか、など世界観についての疑問の答えは明言されないため、そのあたりについては制作側の期待通り、受け取り方に多様性が出るのではないだろうか。

(7)UI等
 ボタン操作を極端にシンプル化したためにキャンセルボタンが存在しないのは、慣れるまではかなりストレスがある。ムービーのキャンセルは×ボタンで固定されているのだから、汎用のキャンセルボタンくらいは普通に設ければ良かったのではないだろうか。
 キャンセルボタンが無いことでストレスを感じるのは、主にメインメニューを開いたときと、衣装室で衣装ストックと手持ちの衣装を入れ替える時だ。ただし、前者は探索時に頻繁に利用する機能ではない。後者はそれなりに回数は多いがその分慣れるのも早く、時間制限などがあるわけでもないので、探索そのものに悪影響はない。

(8)評価点ほかまとめ
 ゲーム性については今までいろいろ述べてきたので、その他の評価点にも触れておこう。
 まず、グラフィックについてはかなり良いと言ってよいだろう。各章で異なる心象世界を特徴的なデザインでさまざまに描いており、背景や細部まで非常に凝っている。各章ごとに、いかにもその章らしい新たなギミックを準備して目新しさを保つ工夫もある。
 民族調のフィールド音楽も、戦闘が発生すると(戦闘曲の出来が悪いわけでは決してないが)途切れてしまうのが残念なくらいに素晴らしかった。ムービーもバランチャレンジやステージ開放時など、一部使いまわしがあるのは残念だが、総じて映像と音楽は美しく、また可愛らしい。
 また、特筆すべきバグやハマりなどは無く、3Dゲームにありがちなグラフィック系のバグやフリーズなどもクリアまで経験しなかった。非常に丁寧に作られたゲームであるのは確かだ。
 それだけに、システム面、特に衣装室やチェックポイントの仕組みについて説明不足で不親切な感があるのは残念である。まだ集められる衣装が少なく、移動に不便を感じやすい序盤に説明が少ないため、好みに合うタイプのプレイヤーでも楽しみ方や良さを感じる前に「つまらない」「面倒だ」と感じて投げ出してしまう危険がある。事実、筆者も進めていくうちに楽しくなってきたものの、3章まではまだうまくコツがつかめず、退屈さが先に立ってしまっていた。
 冒頭にも述べたが、「人を選ぶ」うえにこの不親切さがあるため、決して万人には勧められない。特に、「直感的に一直線に、効率よく先に進める」「はっきり全てが説明される」などのプレイ感を求める人には絶対に合わない。だが、少なくともバランワンダーワールドのPS4版は、今年の他候補と並べるような「クソゲー」ではない。