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七人坊主 r+3306

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これは、ある島で働いていた角造さん(仮名)の話だ。

その日、仕事が遅くなり、彼は小雨降る海沿いの道を車で走っていた。外は闇に包まれ、うねる黒い海が車のヘッドライトに浮かび上がる。湿気を含んだ冷たい空気が、密閉した車内にじわりと入り込んでくるようだった。

道の先に光が見えた。どうやら工事中のようだ。角造さんは車を停め、現場の作業員に声をかけた。作業はあと少しで終わるらしい。小雨が作業を遅らせているのだと説明された。仕方なく車内で待つことにしたが、時間が過ぎるにつれ、退屈さが募る。外に出て一服しようと思い、車を降りた。

タバコに火をつけると、近くで休憩している作業員たちの話し声が耳に入った。

「おい、あの岬の話知ってるか? 七人岬ってやつ。」
「七人岬? なんだそれ。」
「昔、この島に流れ着いた坊主が7人いて、村人に物乞いをしたんだけど、よそ者に厳しい村で食べ物をもらえず、岬で飢え死にしたって話だ。それだけじゃない。その後、村に奇病が流行って、大勢が死んだらしい。」
「怖え話だな。」
「それで供養塔が建てられてから、病気は収まった。でも、その坊主たちの悪口を言うと、必ず何か悪いことが起こるって噂だ。」

話はさらに続き、過去に侍が悪口を試した結果、落馬して死んだという具体的な例が語られた。

「迷信だよ。」
「じゃあ試してみようぜ!」
「やめとけって!」

作業員たちは笑いながら次々と坊主たちを罵り始めた。響き渡る声が、湿った夜の空気に溶け込んでいく。角造さんは黙ってその光景を見ていた。

それからしばらくして、工事は終わりに近づいていた。車に戻った角造さんがドアを閉めた瞬間――轟音が響いた。右手の崖が崩れ、土砂が怒涛の勢いで工事現場を飲み込んでいく。車の屋根に小石が跳ねる音と、作業員たちの叫び声が交錯する。間一髪、彼の車は難を逃れたが、外の状況は混乱そのものだった。

角造さんは震える手で携帯電話を取り出し、救急車と警察を呼んだ。救助活動が続く中、彼は警察署で事情聴取を受けることになった。

警官に付き添われていたとき、彼は不意に聞いてみた。
「被害は、どのくらい出たんでしょうか?」

警官は低い声で答えた。

「……死者は7人です。」

角造さんの脳裏に、作業員たちの笑い声が蘇る。

静まり返った警察署の空気が、彼の胸を締め付けた。

(了)

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