A級順位戦▲中村太地八段(対局時1勝2敗)―△千田翔太八段(同2勝1敗)戦で、千田八段は前例のある形から仕掛ける積極策に出たが、考えていた形とは先手玉の位置が1マス違うことが落とし穴に。リードを奪った中村八段は金を積極的に繰り出す力強い攻めで巻き返しを許さず完勝した。千田八段の誤算はどこにあったのか。椎名龍一さんがカーナビに例えた観戦記で解説する。
第1譜(1―44)
▲2六歩1 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7八金 △3二金 ▲3八銀 △7二銀
▲6八玉 △1四歩2 ▲9六歩 △9四歩5
▲3六歩1 △8六歩 ▲同歩 △同飛
▲3七桂2 △7四歩1 ▲2四歩 △同歩
▲同飛 △2三歩 ▲7四飛 △7三銀
▲7五飛 △8二飛 ▲8七歩12 △3四歩2
▲2五飛 △4二銀1 ▲7六歩 △4四歩
▲4六歩 △4三銀 ▲4八金 △6四銀
▲4七銀6 △5二金1 ▲5八玉4 △3三桂3
▲2九飛 △7二飛 ▲7七金 △5四歩(第1図)
(持ち時間各6時間 消費▲26分△15分)
定跡化進む相掛かり
最近、地図アプリを片手にちょっと遠くまで歩いて出掛けることが多くなった。とりあえず目的地だけを決めて10キロ前後歩くのだが、途中の道順はすべてアプリ任せ。時折、道とは呼べないような幅1メートルも無いところを案内されることもあり、「よくこんなところまで調べているものだ」と驚く。
将棋も序盤の道筋はコンピューターでかなり解析された感がある。本局の相掛かりは研究しづらい戦形として知られていたが、それでもここ数年で定跡化は相当進んだ。
後手番の千田翔太八段は「相掛かり戦の後手番では少し自分の棋風とは違うのですが、ある局面に誘導しやすい手を選ぶようになりました」と言う。本局の感想戦は44手目の第1図まで黙々と並べられて「ここまでは一つの定跡です」という中村太地八段の一言で始まった。富士山の5合目まで来ましたといった感じだろうか。研究はこんなところまで進んでいるのか!と驚かされる。
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