第3回新潟国際アニメーション映画祭にて、中国の現代美術家であり映画プロデューサーの孫遜(スン・シュン)による短編4本が3月16日に新潟・NEXT21の新潟市民プラザで上映され、監督本人がQ&Aに応じた。
本映画祭の「CHINA NOW」と題した企画では、2000年代以降に登場した、アニメーション制作の伝統にしばられない新世代のビジュアルアーティストによる作品を上映。1980年生まれの孫遜は、インスタレーションとして発表した短編アニメ「Shock of Time」で注目を浴びた作家で、本特集では彼の過去25年間に制作した短編アニメーション作品「Shocking Dreams in the Circus」「Tears of Chiwen」「Beyond-ism」「21G」がスクリーンにかけられた。
油絵で構成された「Shocking Dreams in the Circus」について、孫遜は「世界でいったい何が起こったのかを表現したくて制作しました。私の目の前でひどいことが起き、私は現代アーティストとしてそれをなんらかの形で表現していかなくてはいけないという気持ちでした」と語る。2本目に上映された「Tears of Chiwen」は、韓国で行われた展示会のために作った作品だと言い、彼は「韓国の背景事情も取り入れて作りました。アーティストの中には、スタジオだけで作ったものをいろんなところに配給する形をとる方もいますが、私はそのスタイルには賛成できかねます。私は地元の文化や現象について学ぶことを重要視しています。さまざまな場所で学んだものを作品に生かしていきたい」とコメント。過去には日本のレジデンスワークショップに参加したこともあると明かした。
孫遜は3本目の「Beyond-ism」に関して「日本に滞在していたときに、日本・中国・韓国の異なる歴史や事情を考えたところから始まりました」と切り出し、「それぞれの視点から見るだけでなく、まるで月から地球を見下ろすかのように全体を俯瞰して見るように歴史を理解したいと思いました」と口にする。アーティストとしてさまざまな国や地域を訪れる孫遜は、「それぞれの場所が持つ歴史にはストーリーがありますが、私は自分の目で見ないと信じません。いろんな主義や教義がありますが、それを飛び越えていくということを伝えたかったのです」と説明した。
観客からの「監督はどんなプランを立て、どのようなプロセスを経て制作をしていますか?」という質問に対し、孫遜は「事前に計画を立てることはありません。1つプランを作ってしまえば、ほかのプランが浮かばない、もしくは否定することになるからです」と回答。そして「10年掛かった長編アニメも、最初にプランを立ててスタートするというのは私にとってはあり得ません。私の創作はすべて、実際に行動するところから始まるのです」と伝えた。
また「蚊やカラス、羽アリなど、少し不快なモチーフに“何かに襲われる恐怖”のようなものを感じましたが、これらのモチーフを使う意図は?」と聞かれた孫遜は、「危険を感じたのは、私の意図です。そう感じたところから、ご自身のストーリーを作り上げてほしいと思います」と話す。続けて「私はあることについて悪いことを言ったり、明確に言葉で表すことはしたくありません。それを“見せる”という形で観客の方に訴えかけたいのです」と自論を展開した。
第3回新潟国際アニメーション映画祭は、3月20日まで新潟市民プラザほかで開催中。
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