Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                

原子力機構、ウランで蓄電池 起電力はアルカリ乾電池と同等

原子力機構、ウランで蓄電池 起電力はアルカリ乾電池と同等

ウラン蓄電池の放電試験 蓄電池に接続したLEDが点灯し、放電を確認できた

日本原子力研究開発機構は13日、ウランを使った蓄電池の開発に成功したと発表した。ウランを負極、鉄を正極とした。試作のウラン蓄電池は電流を連続して流し続ける起電力が1・3ボルトで、一般的なアルカリ乾電池と同等であることが分かった。現在、特許を出願中。これまで使われていなかった原子力発電用の燃料の製造で得られる副産物「劣化ウラン」の有効活用につながると期待される。

開発した蓄電池は正極と負極を電気伝導性を持つ電解液に浸し、化学反応を利用して充電・放電を行う。充電時は正極から負極へ電子の流れを発生させ、放電時は逆の反応を起こさせる仕組み。試作したウラン電池の起電力は一般的なアルカリ乾電池と同等で、充電後の蓄電池を発光ダイオード(LED)につなぐと点灯することを確認できた。充電と放電を10回繰り返しても蓄電池の性能は劣化せず、変わらないことも分かった。正極と負極ともに電解液中に析出物はなく、開発したウラン蓄電池では安定して充電と放電を繰り返せる可能性が示せた。

劣化ウランは現在の原子炉では燃料として利用できず、国内で約1万6000トンを保管している。劣化ウランを資源として使うことを目的に蓄電池として利用する概念が提唱されたが、実際に蓄電池を作って性能を報告した例はなかった。

ウラン蓄電池での充電・放電での負極側の電解液の色の変化。ウランを用いた電解液を負極側に入れて充電すると(写真左)、液色は緑色から濃い紫色に変化し(写真右)、放電すると緑色に戻る
日刊工業新聞 2025年03月14日

特集・連載情報

原子力機構の『価値』
原子力機構の『価値』
原子力といえば原子力発電がイメージされますが、燃料電池や自動車エンジンの開発にも貢献する基幹技術です。イノベーション創出に向け、「原子力×異分野」の知の融合を推進する原子力機構の『価値』を紹介します

編集部のおすすめ