Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                

地下環境の安定性把握 生息微生物代謝に共通性 原子力機構など解明

地下環境の安定性把握 生息微生物代謝に共通性 原子力機構など解明

地下施設内で採取後速やかに水質を分析

日本原子力研究開発機構は地下の花こう岩と堆積岩に存在する微生物は、種類が著しく異なるにもかかわらず、代表的な代謝反応が共通していることを解明した。堆積岩では微生物の全遺伝情報(ゲノム)の約3分の1がほぼ同一だった。微生物コミュニティーから地下環境の安定性を把握できる可能性を示しており、得られた知見は地下空間の利活用に役立つ。

幌延地域の地下水の流れの概念図とそこに存在する微生物

米カリフォルニア大学バークレー校、米ウィスコンシン大学マディソン校、東京大学との共同研究。

原子力機構の瑞浪超深地層研究所(岐阜県瑞浪市)と幌延深地層研究センター(北海道幌延町)を活用した。深度140―400メートルの地下水中の微生物を「メタゲノム解析」を用いて最長4年間モニタリング。微生物コミュニティーや代謝反応を網羅的に解析した。

その結果、花こう岩と堆積岩の微生物コミュニティーは著しく異なっていたが、いずれも水素、二酸化炭素(CO2)、窒素、硫黄、メタンの代謝反応により活動していた。特に堆積岩を研究対象とした幌延では有機物、CO2や鉄が豊富なことに起因した代謝が活発だった。

花崗岩及び堆積岩を対象とした地下研究施設

また、幌延では異なる深度の地下水から、ほぼ同一の微生物ゲノムが全体の約3分の1の割合で検出された。アメリカ大陸の地下微生物と重複するゲノムもあった。微生物コミュニティーの一部は約1万年前から現在まで、地下深部で移動が制限された可能性がある。

こうした特性は、地下水の流れが非常に遅い地下環境が地球化学的にも非常に安定していることを示す。高レベル放射性廃棄物の地層処分や、水素やCO2の地下貯留などに知見として活用されることが期待される。

日刊工業新聞 2025年02月07日

特集・連載情報

原子力機構の『価値』
原子力機構の『価値』
原子力といえば原子力発電がイメージされますが、燃料電池や自動車エンジンの開発にも貢献する基幹技術です。イノベーション創出に向け、「原子力×異分野」の知の融合を推進する原子力機構の『価値』を紹介します

編集部のおすすめ