世界有数の資源量生かせるか…地熱発電、150万kW導入へ国が支援に乗り出した
日本は地熱資源量が世界有数の2300万キロワットだが、この10年間で10万キロワットの増強にとどまる。数万キロワット級の大型発電所の稼働は21世紀に入って1件のみだ。国は30年度導入目標150万キロワットの実現に向け、「地熱フロンティアプロジェクト」として支援に乗り出した。
日本最大の地熱発電所は八丁原発電所(大分県九重町)で出力が11万キロワット、1号機は1977年に稼働した。国内では出力4万6199キロワットの山葵沢地熱発電所(秋田県湯沢市)が19年に運転を開始して以降、「1万5000キロワット以上(の地熱発電所)は作られていない」(日本地熱協会)。24年は熊本県小国町での4990キロワット、北海道函館市で6500キロワット、岩手県で1万4900キロワットの地熱発電所がそれぞれ運転を始めた。
東北自然エネルギー(仙台市青葉区)は日本最初の商用地熱発電で66年に運転を開始した松川地熱発電所(岩手県八幡平市)を03年に事業承継。10月にリプレース(1万4990キロワット)を完了する計画だ。また木地山地熱発電所(秋田県湯沢市)は出力1万4999キロワットで、東北電力グループで30数年ぶりの新設設備として建設中。29年1月に稼働する予定だ。
さらに26年には、ふるさと熱電(熊本県小国町)が小国町に建設するわいた第2地熱発電所が運転開始の予定。26年度には出光興産やINPEX、東京電力リニューアブルパワーが出資する小安地熱(秋田県湯沢市)が、かたつむり山発電所を稼働する計画だ。
国の第7次エネルギー基本計画では地熱発電の導入量について、40年度に150万―300万キロワットを目標とする。実現には数万キロワット級の発電所を建設しないと難しい。こうした中、地熱発電の調達価格・基準価格は26年度認定から、一定規模以上の設備で容量増加に応じて価格が連続的に変化する「フォーミュラ方式」に移行する。
現在の基準価格は1万5000キロワット未満が1キロワット時40円、1万5000キロワット以上が同26円だが、26年度から1000キロワットを始点に3万キロワットまで発電規模に対応して変わる。規模が大きくなるほど下落し、1000キロワットまで40円の基準価格が、3万キロワット以上では26円に下がる。新方式を通じて、国が「地熱発電は大規模化を目指すべき」と示唆しているとも受け取れる。
さらに国は「地熱開発加速化パッケージ」を立ち上げ、民間企業では困難だった自然公園などの未開発エリアの開発促進に向け、対象地域の初期調査をエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が実施。民間参入を支援する。
地熱発電が伸び悩んでいるのは系統接続問題や、自然公園での開発、保安林内作業などでの規制が背景にある。環境アセスメントの期間短縮も含む規制緩和とあいまった国の同パッケージが、成功確率30%ともいわれる地熱掘削の歩留まり改善やコスト削減に寄与し、数万キロワット級の新規地熱開発につながるかが注目される。
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