バイオエネの本命は「発電から熱利用へ」…燃料価格高騰、稼働率調整必要に
経済産業省・資源エネルギー庁によると、バイオマス発電の設備導入量は2023年末に656カ所・計504万9000キロワット、認定容量は1026カ所・計841万6000キロワット。バイオマス発電は1000キロワット以上が市場価格連動型制度(FIP)のみの価格体系となり、27年度から50キロワット以上はFIPのみとなる。26年度から1万キロワット以上は再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)、FIPがなくなる。
制度変更を背景に新規のバイオマス発電は減少が見込まれ、バイオマス産業社会ネットワークの泊みゆき理事長は「バイオエネルギーは発電から熱利用へと、バイオエネの本命に移っていく」と話す。
23年のバイオマス発電燃料の内訳を認定容量で見ると、トップは一般木質の179件・662万キロワット。輸入される木質ペレットとPKS(アブラヤシ核殻)が中心で、PKSは586万トン。木質ペレットは同581万トンで30%以上だ。
日本の木質ペレット生産は年15万トンにとどまり、海外からの木質ペレットの安定供給に課題もある。国内林地残材は1000万立方メートルをバイオマス発電に利用し、林地残材は増える傾向にある。
バイオマス発電は国産残材などを燃料とする数千キロワット級に対し、輸入材は数万キロワット級が中心。この2年ほどで稼働した主な発電所は33件で、1万キロワット以上は15件。木質バイオマス燃料の価格が高騰し、稼働率の調整を余儀なくされている。このため、150―400度Cと他の再生エネにはできない高付加価値の熱エネルギーを、コージェネレーション(熱電併給)やバイオマスボイラといった産業用に利用する事業が拡大しそうだ。
一方、中小水力発電は50―100年は実用可能な電力で、大型水力も含め全電源の11%(5070万キロワット)の立地が見込まれている。22年から中小水力は1000キロワット未満を対象にFITが延長される一方、1000キロ―3万キロワットはFIPになった。
23年末までの導入件数は200キロワット未満が525件・計4万3700キロワット、200キロ―1000キロワット未満が173件・計9万8700キロワット、1000キロ―5000キロワットが78件・計18万キロワットだ。
公営電気では全国24県で計230万キロワットの中小水力が稼働する。関連団体によると、中小水力の開発可能性は日本全体で150万キロワット程度という。30年までは年間で合計1万キロワットの新規認定が続きそうだ。
ただ1000キロワット以上の場合、コストの70%以上を土木工事が占め、建設期間も5年以上かかる。地域主導の中小水力発電だけに、小水力開発支援協会の中島大代表理事は「建設資材の高騰が続いているのに加え、水力は規模の経済が強く作用するため、400キロワット以下では事業が難しくなる。FITの既認定案件が稼働するまでの数年間の導入量は現状と同様のペースで伸びるが、40年の目標達成には国による新規の対応策が必須」と指摘する。