そういった、主にオフィスワークで使われるソフトを
一揃えまとめて提供するものを、オフィススイート(Office Suite)と呼びます。
1980年代には、そういったソフト自体は各社から発売されていましたが
基本的に、個別の販売で、そもそもMac以外では
付属ソフト無しで販売されるのが一般的でした。
そういった時代に、たとえば日本ではワードプロセッサーは一太郎
表計算はLotus 1-2-3が高い人気を持っていて
Microsoftの主力製品は、MS-DOSやWindowsと目されていました。
(開発環境でも高いシェアを持っていましたが、プログラマー自体が少数派のため、一般には主力製品とは考えられませんでした)
複数のソフトを、セットにした製品形態は、Windows3.0以前に生まれたようですが
それが、高い注目をあつめたのは、Windows3.0以降で
日本の場合は、Windows3.1の時代になってから
MS-DOSでは利用しづらかった高画素のモニターが低価格化するにつれて
MS-DOSからWindowsへの移行が本格化し…
プラットフォームの移行による、アプリケーションの買い替えが起こりました。
もともと一太郎とLotus 1-2-3は別々の会社の製品でしたから
どちらの会社も、自社製品でオフィススイートを展開しましたが
最終的には、WindowsとMS Officeを一括で供給できるMicrosoftが
抱き合わせ販売の効果で、既存の人気ソフトを駆逐していきました。
その過程には、MS製品自体の高い評価もありましたが
OEM供給価格が非公開なため、不当な低額納入で
競合するオフィススイートを排除したとする噂もありました。
真相は、今となってはおいそれと調べ出せるものでもありませんが
結果的には、Windowsのシェアが低下しつづける時代に
Windowsを選び続ける積極的な理由が、MS Officeになっています。
同じようなことは、各地で起こりましたし
ヨーロッパで人気の高かったStarOfficeも、立ちゆかなくなり
それが買収され、OSS化されたのがOpenOffice.org
現在も無料配布されている、Apache OpenOfficeやLibreOfficeの先祖になります。
日本を含む多くの地域で、少数派ながら
OpenOfficeやLibreOfficeを採用した企業や自治体,公的機関がありますが
本質的には、ワードプロセッサーや表計算ソフトについては
大半の機能は、大きな差がありません。
表計算でも、MS Excel自体が、Lotus 1-2-3との互換性を備えて
Lotus 1-2-3から顧客を奪いやすく作られたと言われていて
そういった時代の仕様が、多くのソフトで共通に引き継がれています。
ゆえに、基本的な書式は非常に似通っています。
反面、MS Excelを強く支持している層は、マクロ機能やVBAを多用していて
ワープロはLibreOfficeでもキングオフィスでもいいけど
ExcelはゆずれないからMS Officeを選ぶという場合もあります。
そういう時に、単品販売が無ければ、全体の費用で
MS Excelをあきらめる人も出てきますから
MS Excelが単品で売られていることは、Microsoftにとっても有利です。
PowerPointも競合するソフトとは、使い方や機能が大きく違いますし
MS Wordも、操作自体に慣れていることを理由に支持する人はいて
MS Officeを構成するすべてを買う必要が無い人
そもそも、オフィススイートである必要が無い人にとって
それぞれのソフトが単品で売られていることが、消費者の利益になる場合もあります。
ただ、全部Microsoftのを使うつもりなら、まとめて買うほうがお買い得です。
製品としての違いは、ライセンスがひとまとめになっていることくらいで
実質的に、それが問題になることはないはずです。
(個別に譲渡することができないというだけです)
また、現在でも抱き合わせ販売は盛んに行われていますが
OEM版の供給価格は2万円程度になっており
また、そのPCが故障して買い替えることになれば、OEM版は引き継ぐ方法が無くなっていて
(昔はアップグレード版でリテール版相当のライセンスに遷移できました)
MS Officeは発売から10年サポートが続くため、10年の間に2,3台のPCを買えば
OEM版MS Officeよりも、リテール版MS Officeのほうが安上がりになります。
現在では、MS Office Premiumという製品形態が生まれていて
OEM供給専用ながら、随時最新版を使えるようになるというスペシャリティがあります。
もっとも、2,3年でパソコンを買い替える人にはあまり意味がなく
バージョンアップでUIや仕様が変わることを嫌い
古いバージョンを使い続ける主義の人にとっては
Premiumシリーズに、大きな利点は無く
故障して買い替えることを想定すれば、やはりリテール版のほうがお買い得です。
2013と2016では、UIの変更,仕様の変更がありますが
2013以前に慣れている人以外は、2016を買うほうが
サポート期間の終了時期が二年半違ってきます。
(2013は2023年4月、2016は2025年10月)
ただ、そもそもMS Officeの利用経験が少なく
オフィスワークに従事しない人が個人で使うのであれば
必ずしも、MS Officeを買う必要が無いとも考えられます。
LibreOfficeでも、普通に縦書きの文書を書いたりもできますし
光熱費の集計や分析をするくらいなら、Lotus 1-2-3やMS Excelと大差ありません。