メリル・ガーバスのソロ・プロジェクト、チューン・ヤーズーー新作はアフロ・ビートとサイケデリックなコーラス・グルーヴが渦巻く好作!!

形式にとらわれない独特すぎるコーラス・ワークやアフロ・ビートを消化した我流ビート、ループ・マシンを使っているとは思えない目まぐるしい展開で、聴き手に強烈なインパクトを残してきたチューン・ヤーズの新作は、今回も驚きとうれしさに満ちている。前作以上に立体感のあるアンサンブルから、音を紡ぐことへのこの上ない喜びを感じずにいられない。また今作では、リアーナやM.I.A.を手がけたジョン・ヒルがプロデュースに、タオ・グエンがゲスト・ヴォーカルとして参加するなど、彼女の勢いはとどまることを知らない。
tUnE yArDs / nikki nack
【配信価格】
alac flac wav mp3 ともに 単曲 205円 / まとめ購入 1,543円
【Track List】
1. Find A New Way
2. Water Fountain
3. Time of Dark
4. Real Thing
5. Look Around
6. Hey Life
7. Sink-O
8. Why Do We Dine On The Tots?
9. Stop That Man
10. Wait for a Minute
11. Left Behind
12. Rocking Chair
13. Manchild
新しい道を切り開く力強さ
カリフォルニア州オークランドで活動する女性ミュージシャン、チューン・ヤーズことメリル・ガーバス。ピッチ・フォーク等、多くのメディアの年間ベストを獲得した2ndアルバム『フー・キル』から3年、待望のニュー・アルバムが届いた。 『ニッキー・ナック』と名付けられた今作は前作を軽く越えて、さらに前へ前へと突き進むエネルギーに溢れている。
チューン・ヤーズの音楽はヴォーカル、ウクレレ、ドラム、パーカッションをメリル一人で担当し、ループ・マシンで音を重ねていくという独特なスタイルで生み出していく。様々なリズム、音が複雑に絡まり合うサウンドはまるでおもちゃ箱のよう。そしてそれをまとめるのが、彼女の魅力であるヨーデルを取り入れた表現豊かでパワフルなヴォーカルだ。彼女のヴォーカルは、前衛的な楽曲もその歌声一つで全てポップにまとめてしまう圧倒的な存在感を放っている。
ダーティー・プロジェクターズを輩出したマリッジ・レコーズから最初の音源を発表しており、声の多重録音による組み立てや独特の変則ビート、デイヴ・ロングストレスを思わせるフリーキーで伸びのある歌声から、ダーティー・プロジェクターズを引き合いに出されることが多いが、その音楽の根本的な部分は違っている。 ダーティー・プロジェクターズの音楽的な核はフォーク・ミュージックやカントリー・ミュージックにあるとすると、チューン・ヤーズの核はリズムにある。フェラ・クティの影響を語っており、アフロビートを応用したトライバルなリズムや変則ビートに、自身の声によるリズム、幾重にも重なったビートがチューン・ヤーズの音楽の核であり一番の魅力である。 今作を制作する為に、ハイチの打楽器講師からドラミングを学び、さらなるリズムへの追求をしたという彼女。前作より多彩なリズムでカラフルに進化し、シンコペーションを多様したそのビートは踊れ踊れと五感にダイレクトに訴えかけてくる。リズミカルで野性的なエネルギーに溢れ、人間の本能を刺激する音楽だ。ただ流れるメロディーとリズムに身を任せる、それだけで身も心も解放され野生に帰っていく。今作はそんな音楽の力を体感させてくれた。
前作の成功による、その後のプレッシャーなど微塵も感じさせず、あっさりとそれを越える作品を生み出してしまうポテンシャルは計り知れない。 個性的なものも目新しいものも、全て出尽くしてしまった感のある今の世の中に、彼女なら新しい道を切り開いてくれる。今作は私にそんな期待を持たせてくれた。(text by 吉野敬一郎)
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PROFILE
tUnE yArDs

カリフォルニア州オークランドを拠点に活動するメリル・ガーバスのソロ・プロジェクト。09年、ダーティー・プロジェクターズを輩出した<Marriage Records>から『バード・ブレインズ』を自主製作のアナログとカセット盤で発表。名門レーベル<4AD>が即契約し1000枚限定のCD盤として発表。海外メディアがダーティー・プロジェクターズ、M.I.A.、ビョーク、オノ・ヨーコ等を例えに挙げ大絶賛。