イタリアでセンセーショナルな法案が提出されて波紋を広げています。
可決されると、公共や職場などにおける労働契約、公式声明、役職者の職掌管理、教育などにおけるイタリア語利用が義務付けられ、違反すると多額の罰金を払わないといけなくなります。
EURONEWSでは、英語を排除する法案提出の背景について簡単な解説が。
イタリア語では、新世代の用語表現がしづらく、冗長で回りくどくなるため、英語が定着する傾向があること。
また、国際的なやり取りにおいてはイタリア語は普及面で劣るため、コミュニケーションの面で英語を使う方が楽というのもあるようです。
イタリアの科学誌FOCUSは、イタリア語の歴史的経緯を踏まえて、この法案を皮肉交じりに批判しています。
英語のイタリア語への浸透の歴史は非常に古く、都市間の貿易が本格的に盛んになった中世に遡ります。
そしてルネサンスを経て近代に至るまで、民主主義、議会、産業革命などの新しい概念と、それに紐づく莫大な数の英単語がイタリアにもたらされてきました。
1930年代には時のファシズム政権が外来語との戦いを宣言し、知識人、言語学者、アカデミーを動員して、新しく純粋なイタリア語を作り上げようとしたこともあったようですが、結局、新しい辞書を作ることはできませんでした。
今日では科学分野、経済・金融分野、情報技術分野などで深く英語が浸透し、なおかつSNS、スローガン、映画、ニュースなどでも日常的に使われています。
記事の最後に、「果たして私たちは、外国語を使わずに(純粋なイタリア語で)文章を書き上げることができるのか?それは無理な話だ」と記事を締めくくっています。
・・自分も無茶な法案だなとは思いますが、こういう法案を提出する右派政権が支持されるイタリアの現状には興味があります。事の推移を見守りたいと思います。
※参考1
イタリアのニュースサイトTODAYには法案のあらましが載っていました。事実上、英語を狙い撃ちにしていますが、文面上はイタリア語の使用を義務付ける内容のようです。
・国は全ての行政手続きにおいてイタリア語の使用を保証する
・イタリア語が、公共財・サービスの促進と利用のために義務付けられる
・イタリアの公的機関で役職に就くものにイタリア語の知識と能力を有することを義務付ける
・雇用契約におけるイタリア語の使用が義務化される
・イタリアの学校(公立以外も?)では、外国語学習はすべてイタリア語で教えなければならない
・文化省に「国内外におけるイタリア語の保護、促進、向上のための委員会」を設置しイタリア語教育と利用を促進する
※参考2
フランスでも、学術機関のアカデミーフランセーズなどによって「フランス語らしさ」を保つ努力は続けられています。例えば下の記事など。