2006年に開校した「北九州子どもの村小学校・中学校」(北九州市)は、日本三大カルスト台地と呼ばれる平尾台にある。全校児童生徒の111人が学び、60%が寮に住んでいるという。なかには小1から寮生活を選ぶ子もいる。背景には「子供が学びを決める」という学校の大きな特徴がある。教育ライターの佐藤智さんがリポートする――。
1階に小学生・2階に中学生が学ぶ校舎
筆者撮影
1階に小学生・2階に中学生が学ぶ校舎

石灰岩が並ぶ台地に立つ学校

北九州にあるJR行橋駅を降りて、日本三大カルスト台地と呼ばれる平尾台を登っていくと、北九州子どもの村小学校・中学校がある。1992年に開校したきのくに子どもの村学園は、創立30年を超え、現在では和歌山、福井、福岡、山梨、長崎に小学校と中学校を置く。和歌山には高等専修学校もある。いずれも寮が併設されており、小学1年生から親元を離れ寮生となる子もいる。

教育ドキュメンタリー映画『夢みる小学校』(2022年)に取り上げられて、当校を知った方も多いかもしれない。

私が北九州子どもの村を知ったのは10年ほど前。尊敬する先輩のお子さんが当校の小学校に入学し、定期的にその様子を聞いていた。

「自分が知っている学校教育とは何もかもが違う。親が子どもにどれだけ委ねて見守れるかが試されているような気がする」
「ふとした瞬間にドリルをしなくていいのかなと、成績を気にしている自分に気づく」

そんな保護者としての葛藤を話してくれた。

しかし、そうした迷いを口にした後には必ず、「でもね」と続く。

「『これが必要だ』と思ったら、とことん勉強したり頑張ったりできるんだよ」「『自分はできる』という自分への信頼感を持っているようだ」と言う。

北九州子どもの村学園とはどんな学校なのだろう。そんな思いが募り、取材に向かった。

時間割の5割を占める「プロジェクト」とは

正門をくぐり、まず目に飛び込んでくるのは子どもたちが「プロジェクト」で制作したツリーハウスやウッドデッキなど。「プロジェクト」とは、子どもたちの話し合いから体験学習を行う、きのくに子どもの村学園の授業の一つだ。

北九州子どもの村小学校では、平尾台を探究する「とことんひらおだい」と米や農作物を作る「ひらおだいファーム」、ものづくりやポニーのさくらちゃんの世話をする「いきもの&クラフト」をプロジェクトとして活動している。

中学生には、陶芸などから学ぶ「工芸社」、演劇を行う「テアトル平尾台」、食から環境を探究する「食の循環研究所」が設けられている。

すべてのプロジェクト活動は、小学校では1年生から6年生が一緒に学び、中学校も1年生から3年生がともに学ぶ。学年分けはしない。小学校は週14時間、中学校では週11時間、全課程の5割がこのプロジェクトにあてられる。