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国語教育 国文法を学ぶ意味

中学生に「英文法を学ぶのはいいとして、文法を習う目的とは?」と聞かれたらどうするか?

 

1文章を書くため、2言語についての理解、3古典文法の準備

のうち、2なら少しは納得してくれるか。

(生物や機械に興味のある生徒なら、人間の言語と動物・機械の言語を比較するヒントになるかも。文学好きな生徒なら、「文字禍」とつなげて論じられるかも。)

 

中学生に2をわかりやすく説明するには、

文法のふしぎを論じてもいいが

(文法を知らずに話せるのはなぜか、文法はなぜ変化するか、なぜ言語でコミュニケーションできるか、など)

中学の国文法と英文法を比較して、国文法の特徴を理解するほうが早道?

 

違い

 

日本語

英語

発音

習わない。習得済み

発音練習、音素

文型

文型でまとめない

5文型を習う

分類

品詞で分類

意味で分類

(例 平叙文、疑問文、過去完了…)

主語

あいまい

(いい天気、行けてよかった、象は鼻が長い、の主語はどこ?)

必須 (例 形式主語のit)

破格

知っている

習わない(例 goed/weather is good)

 

共通点

 

国語

英語

活用

活用表を暗記

三単現、時制、受け身、不定詞、動名詞、比較級・最上級

修飾

文節で区切り修飾関係を見る

=構造理解

関係代名詞や形容詞節・副詞節などを習う。SVOCをふる

=構造理解

 

違いのうち、破格の話は

英語で合気道 - 内田樹の研究室

グローバリズムと英語教育 - 内田樹の研究室

にヒントを得ました。

 

以上です。

国語教育 文法学習は書くことの指導に役立つ

前回の記事

国語教育 書くこと・作文の指導 自分の言語生活を見直すに - sazaesansazaesan’s diary

でも述べたように、

わかりやすい文章を書くには、修飾語が長すぎないことが必要。

例 「~で有名な、~という異名をとった~先生は、私の兄の指導教授だ」という文はダメ。

 

修飾の理解のためなのか、

中学国語では、「ネ」を入れて文節を区切り、どの節がどの節にかかっているかを見る。この学習の意義について、

 

ひつじ書房 新ここからはじまる日本語学 伊坂淳一著

4章 日本語の文法 文の成分の節(p174-175)には、以下の指摘あり。

 

児童生徒の作文には、文のねじれ、主述の不一致などがある。

例 覚えていることは~が印象に残っています。

        特に好きな○○は~が好きです。

         ~して~して~して…

これらがなぜ違うか理解させる際に、文法の知識は役立つ。

「文を意味の大きなまとまりである文の成分に区切り、文の成分どうしのつながりを取り出す力を指導の目標とすることに、相応の有効性がある」(p175)

 

中学国語の文法指導と、書くことの指導を合体させるには重要な指摘です。

以上です。

 

 

国語教育 書くこと・作文の指導 自分の言語生活を見直すに

堀裕嗣氏のブログに

自分の言語生活と見比べよ!: 裕弁は銀・沈黙は金~堀裕嗣.com

という記事があり。

 

ブログ主が自分の言語生活を見直して思うに、

高校卒業以後、

・きちんとした、読みやすい文章

・何が言いたいかわかる、内容のある文章

が書けずにいました。

そのために、

・読んだ本を要約できず、レポートをまとめられない。

・何が言いたいのかわからないレポートばかり書く。

・箇条書きだけのレポートを出す。(本ブログもそうです)

という事態に陥っていました。

 

どうしたらいいか?

社会人向けの文章指南サイトを見ると、

一目置かれる資料がすぐできる。資料作成三つの心得。 - STUDY HACKER(スタディーハッカー)|社会人の勉強法&英語学習

 資料作りは課題と解決策が大事。

 シンプルな構成・文章。結論を先に。

プロが教えてくれた文章力最速習得法——え、たったこれだけでいいんですか!? - STUDY HACKER(スタディーハッカー)|社会人の勉強法&英語学習

 「書くことがない」防止チャート(マンダラート)

 文章全体の構成(結論を先に言う、ストーリーが見えるなど)

「とにかく書きまくる」はNG!? 効率的に文章力を伸ばすための4つのヒント――“文章術のプロ” 山口拓朗さんインタビュー【第3回】 - STUDY HACKER(スタディーハッカー)|社会人の勉強法&英語学習

 いい文章=目的達成できる

 書く内容は自分・他者に質問して得る

 一文一義

 

⇒ブログ主考えるに、

 1文は書けて文章が書けない理由とは、

 ・言うべきことがわからない(書くことがない)

 ・文章をつなげられない。

⇒ここから逆算するなら、文章力改善には、

 書くことを集める技術と、うまく文章にまとめる技術が必要。

 

作文での具体的な指導言のヒントとしては、

ビジネスに役立つ上手な文章の書き方11のコツ | knowledge / baigie

が参考になります。

 

次の記事で述べる、文法事項とのつながりを言えば、

1言葉を減らす、4修飾語は修飾関係・文の成分と関係が深い。  

5読点は、国語教育ではやらない複文(主節と従属節)

2一文一義の徹底、11推敲は、作文の実技練習で体得したい。

3抽象を避けるは、具体と抽象の理解と合わせて教えたい。

 

おまけ 

本記事は、中学生に「国語力とは何ですか?」と聞かれたことをきっかけに書きました。

私はひとまず、

「てにをは、を間違いなく使いこなせる力です」と答えた。

後で冒頭の堀裕嗣氏の記事を思い出して、書き足しました。

 

以上です。

 

 

 

国語教育 文学的文章の前提は『小説神髄』に?

前回までの記事で、小説と道徳、小説は感情を描くという前提について話しました。

その2つは、すでに明治時代の近代小説論のはしり『小説神髄』に議論がありました。

 

〇小説と道徳の関係

小説神髄』上巻、小説の主眼

現代語版『小説神髄』(三) | 学術機関リポジトリデータベース

勧善懲悪を書きたいと思って、心理と風俗(人情と世態)を曲げて人物を作るな。

=勧善懲悪という主題を表現するために、小説の人物描写がゆがめるな。

小説神髄 - 岩波書店(2010年版)

から引くと、

(原文の文庫版では、()内のよみがなは文字の横にある。以下同じ。)

p56「作者が岡目(おかめ)の手細工もて人の感情を折衷(せっちゅう)なし、勧懲といふ人為(じんい)の模型(いがた)へ造化(ぞうか)の作用をはめこむときには、その人情と世態(せたい)とは已に天然のものにあらず、作者がみづから製作(こしら)へたる誂(あつら)へ向きの人情なれば、その人物を除くの外(ほか)には決して見がたき人情なるべし。」

 

〇「小説は心情を書く」という前提は、

小説神髄』上巻 小説総論で初めて示された?

現代語版『小説神髄』(一) | 学術機関リポジトリデータベース

も参考。)

p22「畢竟(ひっきょう)、小説の旨(し)とする所は専(もっぱ)ら人情世態(せたい)にあり。一大奇想の糸を繰(く)りて巧みに人間の情(じょう)を織做(おりな)し、限りなく窮(きわま)りなき陰妙(いんみょう)不可思議なる原因よりして更にまた限りなき種々(しゅじゅ)様々なる結果をしもいと美しく編(あみ)いだしつつ、この人の世の因果の秘密を見るが如くに描き出(いだ)し、見えがたきものを見えしむるをその本分とはなすものなりかし。されば小説の完全無欠のものに於(おい)ては、画に画きがたきものをも描写し、詩に尽(つく)しがたきものをも現はし、且(か)つ演劇にて演じがたき陰微をも写しつべし。」

 

坪内逍遥のあとの作品では、

作者は登場人物の感情をわかっている人として登場することもある。例えば、

図書カード:羅生門   (青空文庫

「その髪の毛が、一本ずつ抜けるのに従って、下人の心からは、恐怖が少しずつ消えて行った。そうして、それと同時に、この老婆に対するはげしい憎悪が、少しずつ動いて来た。――いや、この老婆に対すると云っては、語弊があるかも知れない。むしろ、あらゆる悪に対する反感が、一分毎に強さを増して来たのである。」

 いったいこの語り手はなぜ下人の感情が分かるか?

 

なお、心理描写については、夏目漱石の講演でも言及。

夏目漱石 文芸の哲学的基礎

「極度の分化作用による微細なる心の働き(全体として)を写して人に示す」

夏目漱石 中味と形式 ――明治四十四年八月堺において述――

「型を手本に与えておいてその中に精神を打ち込んで働けない法はない。」

 

個人的に、漱石の講演は国語の教材に使えそうだと思っています。

以上です。 

国語教育 心情の読み取りは可能か?

文学的文章は感情の読み取りが重要です。

例えば、中学校学習指導要領解説編・国語科の指導事項。

構造と内容の把握では、

1年のイに、「場面の展開や登場 人物の相互関係,心情の変化などについ て,描写を基に捉えること。」

精査・解釈では、

2年 イに「目的に応じて複数の情報を整理しなが ら適切な情報を得たり,登場人物の言動の意味などについて考えたりして,内容を解釈すること。」

 

→注目したいのは、ここにある

「小説は心情を描くもので、読者は心情を読み取れる」という前提。

 

〇感情の描写はカメラでも難しい。

浅沼圭司

戯曲とシナリオ : Essai filmologique (3) | 学術機関リポジトリデータベース

pp8-9によると、

小説の語り手は映画のカメラに似ている。

カメラの遍在性

・過去や未来、人間のいけない場所(深海など)で事象を捉える。

・人物の目とも同化。

・第三者として自由に移動。

・視点の設定は自由

→ただし、映画は視覚的に体験された現実は示せるが、人物の内的世界は表現しにくい。

・監督の第一義的な仕事は視点の設定(どこから撮るか)

 

〇そもそも、感情はそう簡単に読み取れるのか?

劇作家の平田オリザ氏は言う。

ドラマチック日本語コミュニケーション : 「演劇で学ぶ日本語」リソースブック | 本を探す|ココ出版

第3章「一劇作家から見た日本語教育の課題と展望」p97(初出2009)

私たち人間には感情があるとされますが、その感情というものを私たちは特定できないし、それが表れるのは、感情「表現」としてのみであって、私たちは何かの仕草や発語によって、他人の感情を理解したと思っているに過ぎません。どんなに悲しそうに見えても、本当に本人が悲しんでいるかどうかは分からないのです。ただ私たちは、それはある種の記号として理解するだけです。

(なお、平田氏担当の3章は大半が

『わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か』(平田 オリザ):講談社現代新書|講談社BOOK倶楽部

の一部と重なる。)

 

小説から感情を読み取れる理由は、今後の課題です。

以上です。

国語教育 文学的文章の主題・道徳的な読み 

文学的文章の指導では、主題をつかむことが大事だとよく言われます。

しかし、書き手の小説家自身、主題を答えるのは難しいこともあります。

 

原典不明の逸話ですが、

村上龍は、小説で描きたかったことを一言で言って、という質問に困ったそう。

(一応の出典として

なーんだ、そんなことだったのか!『寝ながら学べる構造主義』内田樹 | 文春新書

P128(第4章のロラン・バルトの「作者の死」に関する解説にて)

や  映像化作品か原作か? | 柏木塾

にあります。)

⇒作者さえも作品の主題を考えるのは難しい。

 

ところで、

石原千秋氏はしばしば

「受験で出る小説は道徳的な解釈が正解になる」

と主張しておられる。

『大学受験のための小説講義』石原 千秋 | 筑摩書房

では

pp34-36 Barthes, Roland『物語の構造分析』

  物語の構造分析をふまえ、小説を1つの物語にまとめ、複数の物語を作る。

p192 研究者としてはノイズにも見える細部から複数の物語を作る。

   しかし、受験で出る小説は道徳的枠組みでしか作れない。

 

ブログ主思うに、

石原氏の主張を言い換えると、

 入試、特に先のセンター試験は、

 いろいろな主題を読み取れるはずの小説から、

 道徳的な主題を引き出すことに熱中しすぎということ?

 

入試のみならず、

授業でも道徳的な指導をしがち

(『山月記』では、李徴は自分の悪い性格のせいで虎になったという解釈で終わり)

という現場の声も。

 例えば   ちくまの教科書 > 国語通信 > 連載 > 授業実践例 > 第二章 小説

 

しかし、欲を言えば、

ストーリーメイカーを育む国語科教育についての一試論 : 文学作品の「理解の深まり」研究の批判的検討をもとに | 学術機関リポジトリデータベース

P213のいう、

「あるわかっていたこと(= 指導書的な解釈)を、わからなくする(= そうではない可能性を探る)」

に至りたい。

 

どうしたらいいかは、もうしばらく考えます。

以上です。

 

 

国語教育 話し合いの目的

言語活動の代表である話し合い。その目的は何か?

 

交流 | 東洋館出版社

の商品説明では、

「交流は、単元のまとめ段階に行われる話し合い活動、のみをさすわけではない。単元を通して、思考を広げ、深め、高めるために行われる言語活動であり協働的な学びである。」

 

堀裕嗣氏によると、

一斉授業10の原理・100の原則 - 学事出版株式会社

p126小集団交流を機能させる10の原則⑤ 広げる交流と深める交流がある

目的―発想を広げる

  —考えを深める―個人の思考深化

         —合意形成

 

THE教師力ハンドブック 国語科授業づくり入門:堀 裕嗣 著 - 明治図書オンライン

p111 

個人の思考深化が目的ならば

→第一次自己決定からの変容を自覚できる、シェアして振り返って学んだことの整理などを目指す。

合意形成が目的ならば

→全体への発表を目指す。

 

指導言の十箇条|堀 裕嗣

3 指導言の十箇条 (5)発問の命は「子どもたちの分化」である

→一斉授業の、指導言を機能させる10の原則と同じ。(⑤はp90)

→「何」「いつ」「どこ」「だれ」は答えが1つであり、教師が説明していい。

 「なぜ」「どのように」は解釈により立場が異なるから聞く価値がある。

→ブログ主の関心に引き付けて言えば、

「なぜ」「どのように」という問いは、話し合いでする意味が大きい。

 

『わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か』(平田 オリザ):講談社現代新書|講談社BOOK倶楽部

4章 冗長率を操作する、において、

対話と討論の違いについてp103でこう説明しておられる。

ディベートでは、「Bは意見を変えねばならないが、勝ったAの方は変わらない。」

「「対話」は、AとBという異なる二つの概念が摺りあわさり、Cという新しい概念を生み出す。AもBも変わる。」

 

以上をふまえると、話し合いで各人が自分の読みを変えて深めていくのは、話し合いの目的の1つにかなったことなのだろう。

 

〇話は変わるが、

話し合いにより、各人がじっくり考えられないという弊害も起きうる。

ギリシア哲学からの批判。

和泉ちえ先生(行動科学コース) | 学生による教員インタビュー | 受験生の皆さんへ | 国立大学法人 千葉大学 文学部

「一人で本に向き合う、という時間が重要です。だからそのためには、単なる語学力ではない、言語能力というものをきっちりと身に着けなければいけない。昨今叫ばれているグループ学習というものも、私は懐疑的で、とにかく一人で、書物と向き合うということが重要。」

 

対話の害とLTD話し合い学習法 : 協同学習の原理的考察 | 学術機関リポジトリデータベース

p8で、宇佐美寛氏の意見をまとめて、

ソクラテスの「対話」と比較しない。対話の過程を考える。

② 対話は哲学的思考の一部。

③ 思考は自分自身がする。

④文章を書くことで思考の中心的部分を鍛 えられる。

⑤ 思考深化にはメタ対話を。

 

ブログ主思うに、

話し合いの目的とデメリットをふまえつつ、話し合うべき時に話し合いの時間を設ける必要があるということか。

以上です。