組織に身を置いて仕事していると、「うちらしい」あるいは「うちらしくない」という言葉が頻繁に登場する。新商品や新しい企画を立ち上げるときはもちろん、会議で何か発言すると、上司から「それはうちらしい意見じゃないね」と言われたり、営業で訪れた客先から、「その話は御社らしくないですね」と言われたりすることも――。
「らしさ」という言葉には、個性や独自性という枠組みを越え、企業活動や社員のふるまいまでが含まれるし、その意味でブランディングと深くかかわっている。
一方で「らしさ」とは何かを定義したり、突き詰めたりするのは容易ではない。ブランディングの分析過程で「らしさ」を要素分解したり、場合によってそれを数値化したりすることがある。あるいは、企業のビジョンや理念、行動指針を作るにあたって、「らしさ」を文言で定義する試みがなされているものの、それがズバリかというと、そうではないと思う。
誰もが日常的に使っているのに、意味するところが多面的な「らしさ」という言葉――本連載では、「らしさ」とは何なのかについて考察する。それも、「らしさ」の解を導き出すのではなく、「らしさ」をとらえる視点について探っていく。具体的には、さまざまな企業における「らしさ」をインタビューし、根っこにあるものを見ていきたい。読者の方々にとって、日々の仕事における何らかのヒントになれば幸いだ。
「ソニーらしさ」を社内ではどうとらえているのか
第1回はソニーグループのクリエイティブセンターを取り上げる。「ウォークマン」や「aibo(アイボ)」をはじめ、クルマの「VISION-S Prototype」や銀座の「Sony Park」など、ソニーには先進的なイメージがあり、それが「らしさ」につながっている。「ソニーらしい」「ソニーらしくない」と評されることも少なくない。
社内でそこをどうとらえているのかを知りたいと思い、昨年10月からクリエイティブセンターのセンター長になった石井大輔さんに話を聞いた。
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