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ドグラ・マグラ

登録日:2010/05/25 Thu 01:39:50
更新日:2024/12/14 Sat 16:31:43
所要時間:約 4 分で読めます




胎児よ
胎児よ
なぜ躍る
母親の心がわかって
おそろしいのか





『ドグラ・マグラ』とは、日本の推理・怪奇小説作家である夢野久作の代表作である小説。


■概要

作者が構想に十年かけ1935年に発表したこの小説は推理小説にも数えられるが、
あまりに常識を逸脱したこの作品の的確なカテゴライズは到底不可能である。
ちなみに、この小説を刊行した松柏館書店が付けた本作のキャッチフレーズは「幻魔怪奇探偵小説」。

夢野はこの作品を発表した翌年に死去しているが、構想には十年近くかけたとされる。

現在は既に著作権が消滅して青空文庫に全編掲載されているため、読むだけであればインターネット環境と時間さえあれば無料で読める。

小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』中井英夫の『虚無への供物』とともに日本探偵小説三大奇書と呼ばれる。
一応、この「奇書」とは秀でた作品と言う意味らしいが、この字をそのままの意味で受け取っても問題は無い。
というか、「秀でた」や「優秀」より「奇妙」「奇怪」の方がこの作品には適している気が…。

狂気に満ちた作風からこの作品を読むものは精神に異常をきたすといわれているが、これはあくまで狂気性を誇示するための売り文句。
ただ、あながちそうとも言い切れないかもしれない。

長門有希の100冊』の一つでもある。
また三上延の小説『ビブリア古書堂の事件手帖』でも扉子編第3巻「扉子と虚ろな夢」で本作を題材としたエピソードが存在する。


■作品内容

記憶を失った男(主人公)が精神病棟で目を覚ますところから話が始まる。
主人公が記憶がないこと等に混乱していると、そこに「若林鏡太郎」と名乗る老紳士が現れる。
若林はとある殺人事件について調べており、主人公がその事件の重要人物だと思っているようだが――


作品の途中にある「胎児の夢」などの長い論文、「外道祭文キチガイ地獄」から始まるパフォーマンス、
チャカポコなど、並の読書家では途中で投げ出したくなること必至。
そのうえ上下巻に分けて発売されるほど長いので、読破するだけでもかなり大変。
さらにストーリーが難解すぎて何度か読み返さないと作品の核に触れられないもはや鬼畜仕様。

こうして書くと何が面白いのかと問われかねないが、後半の真相が徐々に明らかになってゆくシーンは名作という評に頷ける出来。
また変態性欲、エログロなど夢野久作の得意とするテーマが多く登場するので、夢野久作ワールドと呼ばれる独特の世界観を楽しめる。

そこに至るまでに待ち受ける「胎児の夢」などのシーンはファンの間でも賛否両論なので、頑張って読んでみるのもアリ……というか構成上絶対に読まされる。
作品の最終的な解釈は人によって異なるので、そういった考察を楽しめる人にもオススメしたい作品。


アングラ趣味な方々からはかなり人気がある様子で、これをテーマにした作品は小説以外にもゲーム、漫画、音楽などあらゆる方面において見られる。
その一方、まともな本として楽しむのは非常に難しい。これで読書感想文を書くことはまったく推奨できず、これは「アンサイクロペディア」でもネタにされている。
そもそも審査する人も困るだろう。


作家の横溝正史は、小林信彦との対談のために『ドグラ・マグラ』を読み返した際、気が変になって暴れたという(奥さんが証言)。
横溝当人は気が変になったことを受け、「おれはまだ相当感受性が強いんだ」と安心したという。


ちなみにこの作品は時代背景や作品性からキチガイなどの差別表現が頻出する。
というか、精神異常を下地にしている上に現代科学では否定されたようなことも頻発する上、いわゆる「信頼できない語り手」が「信頼できない相手」と駆け引きをする場面が非常に多いため、
読んでいるとどこに軸足を置いていいか全くわからなくなる上にとにかく横道にそれまくる。

また、前述したように本作を読み返した横溝正史が気が変になったというエピソードについても、
そもそもとして、「理路整然としていなければならない」のが探偵小説のいわばお約束である上、
横溝作品に関してはその動機に「身内をかばうため」などのヒューマニズムの要素が強く、ドグラ・マグラの作風と完全に正反対であるのも要因の一つと推測される。

文字の大きさなどを演出に用いることも多いため、探偵小説なんかが好きな人の場合は相当気合を入れて読まないと読破は難しいだろう。
逆に小さいころに寺村輝夫や福永令三などのファンタジックな作品が好きだったような人なら、案外すんなり読めるのではないだろうか。


「映像化など到底無理」としか思えない当作だが、1988年に実写映画化されている。
複雑怪奇な本作を非常にわかりやすい形でブラッシュアップしたストーリーに加え、
正木博士役の桂枝雀の「底の分からない男」としての怪演や不気味なBGM、妙に解像度の高い狂人の演技、グロテスクな演出の数々などですさまじいインパクトを残す。
ぶっちゃけ原文は非常に読みにくいので、物語を知りたいのならこれを見ておけばまったく問題ない。むちゃくちゃ不気味な映画なので退屈はしないはず。
逆に熱心なファンの中では「ひとつの解釈に過ぎない」として否定的な人もいる。大体正木博士がハゲてないイラストを描く人なんかはそのたぐい。



あなたが追記・修正をこの日にするということは既に正木先生は予言しておりました。

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最終更新:2024年12月14日 16:31