登録日:2011/02/01(火) 13:37:09
更新日:2024/12/15 Sun 16:18:00
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『ミスリード(mislead)』とは、人に意図的に誤解を与えたり、間違った方向に誘導する手法のこと。
翻って、新聞や雑誌などで見出しと内容が大きく異なることもミスリードと言う。
後者は、東スポの「○○か!?」見出しや、いかがでしたかブログなどがわかりやすい例になるだろう。
ちなみに“misread”だと「誤解する」「読み違える」と受け手側の意味になるので注意が必要。
【概要】
基本的には、
というのが主な手法になるだろう。
ここで気をつけないといけないのは、「嘘をつかない」ということである。
嘘をついては、単に虚偽の情報で人を騙しているだけであって、ミスリードとは言えない。
《具体例》
「A知事の任期中に、この県は5万人もの人間が失業した!!」
Bさん「いやぁ、100円くじを買ったら1万円当たっちゃいましたよ~」
さて、諸君は以上の台詞からA知事とBさんをどう思っただろうか?
◆A知事=無能?
◆Bさん=幸運の持ち主?
だが、もしこの台詞の裏に、
◆A知事の任期中5万人が失業したが、15万人が職を得た。
◆A知事の任期中に大地震が発生して倒産した企業が続出した。
◆Bさんは100円くじを500枚買っていた。
◆当選直後に宝くじを紛失、盗難で失って賞金を得られなかった。
◆当選したという噂を聞きつけて友人達がBさんにタカってきたためにかえって大損になった。
……などの、語られていない真実があったらどうだろう?
A知事は必ずしも無能ではないのかもしれないし、Bさんは幸運どころか不運かもしれない。
また、数字や割合を用いたミスリードにも注意が必要である。
『その国では、年間、約2万人が交通事故で死亡し、病気・老衰を除いた場合の死因の60%超、ダントツのトップである』
※参考までに、日本の交通事故死亡者数は2023年で約2600人。
という文章を見た時にどう感じたであろうか。
その国は、交通環境が相当劣悪な、インフラ整備が碌に出来ていない三流国家と感じる?
しかし、以下のような情報を追加したらどうであろうか?
- その国の人口は10億人を軽く超えている
- 5年前のその国の交通事故死亡者数は3万人を超えていた
- 隣接する国家群の、病気・老衰を除いた場合の死因は上から順に、他殺>自殺>事故死である
一気に、『不慮の事故以外で命を脅かされることの少ない、周辺諸国よりも治安が良く、インフラ整備等にも力を入れている優良国家』という印象にならないだろうか。
「2万人」や「60%」という、一見センセーショナルな数字に踊らされないように注意をしたいものである。
【似た概念】
・燻製ニシンの虚偽(Red herring)
本当に重要な情報から目をそらさせるための技法のこと。
犯人ではない怪しい人物、やけに強調される関係ない事象など。
ミスリードの一部として使われることもある。
現実でも怨恨などで殺した相手の財布を持ち去ったり(もちろんすぐ捨てる)部屋をあさったふりをして、
「強盗に出くわして殺された」と見せるミスリードをたくらむ犯人は割といる。
また、『ミスディレクション(misdirection)』とも呼ばれる。
ただ、こちらの単語は(主にマジシャンが)動作を用いて、観客の注意をトリックの種などの重要なところからそらさせる場合に使用されるケースが多い。
・論点相違の虚偽(Ignoratio elenchi)
本質とは関係のない論点を持ち出すことで、関係のない本質を肯定・否定しようとすること。
(例)
「
ゲームの違法コピーで自分が逮捕されるのはおかしい。同じように違法コピーを持っている人間はたくさんいるからだ」
(後者が事実だとしても、違法コピーが犯罪なのは変わらないので、逮捕されるのは何もおかしくない)
・藁人形論法(Straw man)
相手の意見をわざと歪め、それに対して反論する詭弁の手法のこと。ストローマン論法とも。
(例その1)
A「男女の賃金に格差があるのは問題だ。男性と同じ仕事をしているのに賃金に差異があるなら是正するべきだ」
B「女性だけを優遇して、ろくに仕事もしなくても高給取りにするだと?そんなことは許されない!はい論破!」
A「……」
(例その2)
A「子供を道路で遊ばせるのは、非常に危険だ」
B「つまり、子供は一生家に閉じ込めて監禁しておけだと?ずいぶんと自分勝手だな」
A「いや、私はそんな事を言いたい訳では…」
B「子供が外で遊ぶのはいいことじゃないか!非常識な発言はやめろ!はい論破www」
A「……」
(例その3)
★「Xという人物が、電車内でタバコを吸っていた人物Yを注意した。するとそれに怒ったYが、Xに殴る蹴るの暴行を加え、大怪我を負わせた。結果、Yは傷害容疑で逮捕された」という内容のニュースを見て…
A「X氏が暴行されたのは、Y氏に対する注意の仕方に問題があったせいではないだろうか。強い言い方で注意されたら、それがその通りだとしても誰でも頭にくるはずだ」
B「私はそうは思わない。電車内でタバコを吸うなどもっての外だし、マナーの悪い人を注意するのは良いことである。言い方に腹が立ったら暴行してもいいだなんて、君のような野蛮な人間がそのうち傷害事件を起こして捕まるのだろう」
A「……」
いずれのケースも、確かにA・Bどちらの主張も決して間違いではない。だが、ちょっと待ってほしい。
例その1…そもそもAは「労働時間と賃金の違和感」を指摘しているだけであり、「女性を優遇すべき」とは主張していない
例その2…Aは「子供を道路で遊ばせてはならない」とは主張したが、「絶対に子供を外で遊ばせるな」とは全く言っていない
例その3…Aは「XがYを注意する時の言い方が悪かったのではないか」と指摘しているのであって、「自分に注意をしてきた相手を暴行しても良い」とは一言も言っていない
Bの主張は、Aの主張に対する反論としては全て的外れなのである。
発言の意図や内容を無理やり捻じ曲げ、あるいは都合の良い部分のみを切り取り、相手があたかもとんでもない発言をしたかのように見せかけるのが藁人形論法、と言えばなんとなく通じるだろうか。身も蓋もなく言えば論点のすり替えである。ネットやSNSの炎上やレスバトルで頻繁に見かける人も多いだろう
【創作物における手法】
アニメ等では過去に起きた真実の一部を抜き出して見せる事で特定の人物を悪人に仕立て上げ、
読者や視聴者に「こいつはとんでもない悪党だ」と思わせておいて、後に抜き出した真実をはめ込んだものを見せることで、
それが勘違いであったと気づかせるみたいなパターンで用いられる。
だが、如何せん扱いが難しいのかあまり使われない。
なにしろ最初の印象が強すぎると仮に後に真実を告げたとしても『後付け』とか『こいつはこんなキャラじゃない』とか言われてしまうし、
明らかに理不尽な真実を後で告げると読者や視聴者が理解できずに失望しかねない。
割と王道なので、A「俺がBを殺した」→Aさんは殺人犯?!→Aは仲間のBを救出できなかっただけ。などがあるが、これも「なんでそれで殺した殺したうじうじ引きずり続けるんだ」と非難されやすい。
小説では主に
ミステリーなどで、読者を惑わせる手法として使用される。
もちろん、真実につながる情報も本文には記載されているのだが、その部分はさらっと流され、一方で関係の無いことを強調して書くなど……、すなわち燻製ニシンの虚偽の部分で説明した手を使うことが多い。
これにより、読者は誰が犯人なのかわかりにくくなるのである。
(例)
探偵「その時、あなたはどこでなにをしていましたか?」
怪しい人A「そ、それは……、言えねぇ!!」
これがミスリードの場合は、Aは犯人をかばおうとしている(Aが犯人だと思っていた人物は実は犯人ではない、という二重のミスリードの場合も多い)。
または事件には関係無い別の犯罪に関わっていたり、人に言えないこと(逢引など)をしていた……という展開が定番だろう。
単一の事件を連続事件の中に組み込んだり、逆に他者が起こした連続事件に、自分が起こした単一の事件を紛れ込ませて事件の目的を隠すというのもミスリードの一種であろうか。
また、
ミステリーで犯人は犯人だがめちゃくちゃ目立つ格好や奇怪な殺人をして「頭のおかしい人」と思わせ、
実際は金や怨恨というオーソドックスな動機だったりするのはもはや王道のレベル。
また、これが大規模なものになると、それ自体が読者を騙すトリックの一部とされ、叙述トリックと呼ばれる。
ただ、叙述トリックの場合は、騙されるのは読者だけで作中の人物は特に騙されていないことが多い。
叙述トリックは
ミステリーに留まらず小話やギャグの一種として扱われることもある。
一見エロく見えるが、最後まで読むと全くエロくない健全な会話だった……というネタを見たことのあるアニヲタ諸氏もいると思うが、読者を騙すという意味ではそれも叙述トリックである。
「私はこの項目を追記・修正する!! そこに何の躊躇いがあろうものか!!」
- 名前はドラキリーなのに正体はフェニックスってキャラがいたけど名前からドラキュラかと思っていた -- 名無しさん (2013-11-17 12:57:44)
- 今川泰宏作品は基本的に物語序盤で語られることの逆が真実だよな -- 名無しさん (2013-11-17 13:31:24)
- 「嘘は言っていなかったでしょう?」と「ああ、あれ嘘ですよ。それが何か?」のどっちが悪質なのだろうか -- 名無しさん (2013-11-17 13:35:51)
- プリキュアシリーズではよくあること -- 名無しさん (2013-11-17 13:53:08)
- 仮面ライダー555の予告で真理が変身すると思った人は多かったのかな -- 名無しさん (2013-11-17 14:03:59)
- 「やれば返してくれるんですね?」「おう、考えてやるよ(返すとは言ってない)」 -- 名無しさん (2013-11-17 14:10:32)
- フォーゼはミスリードやりすぎてなんかグダグダになってたな。 -- 名無しさん (2013-11-17 14:16:47)
- ↑×2 「考えとく」は西日本は否定的、東日本は肯定的に捉えるって県民ショーで言ってたような希ガス -- 名無しさん (2013-11-17 15:01:53)
- スイプリは本来ミスリードじゃないキャラを無理矢理ミスリードにしたせいでグダグダになった感は否めなかったな -- 名無しさん (2013-12-23 21:42:58)
- ポケダンの探検隊もこれだよね 自分も見事にあの人に騙されたよ…… -- 名無しさん (2013-12-23 22:00:52)
- ポケモンXYもミスリードが二人もいる… -- 名無しさん (2013-12-23 22:26:53)
- ただ推理小説でのミスリード失敗するとただのこじ付けになるから大変だな。双子とか -- 名無しさん (2013-12-23 22:33:01)
- 一番上の文章にある例は、とある英単語帳にあった英文の内容かな -- 名無しさん (2014-02-06 21:46:07)
- 有名なのはトライガンの「トリップ・オブ・デス」だな。あれには殆どの人間がひっかかっただろう。「付き添いが居るとは聞いて無かった」って台詞も見事だし。 -- 名無しさん (2014-08-14 16:14:06)
- ↑初登場の時の噛ませふたりも凄い機能性、あれを超えるミスリードは無いって今でも思う -- 名無しさん (2014-08-14 16:20:25)
- いーちゃんの事か……クビシメのあれは見事に騙された -- 名無しさん (2014-08-14 16:30:20)
- 暗殺教室の「イトナ以上の怪物」は見事 -- 名無しさん (2015-05-26 20:07:12)
- DHMOだな -- 名無しさん (2015-05-26 20:13:14)
- >読者や視聴者に「こいつはとんでもない悪党だ」と思わせておいて~ 相棒の「フォーカス」でもこの手法が取られてたな -- 名無しさん (2015-05-26 20:27:46)
- コナンの青山先生はミスリードの伏線を二重にも三重にも用意しているんだから凄い。 -- 名無しさん (2015-05-26 20:33:34)
- この前のアンビリバボーでやってた『監禁事件の真相』ってやつにちょっとしたミスリードが仕込まれてて感心した -- 名無しさん (2015-05-26 21:44:53)
- ミスリードとは未婚のリードさんという意味です -- 名無しさん (2015-10-09 16:04:33)
- それMsリードや -- 名無しさん (2015-10-09 16:28:28)
- ポケモン公式HPの「パワージェムを使うディアンシー」もミスリードだよな。何を思ってこんなのを仕込んだのだろうか… -- 名無しさん (2015-10-09 17:23:26)
- 能条タイプだな -- 名無しさん (2016-06-22 11:05:59)
- 現実じゃ「嘘は言ってない」と責任逃れしようとしたら顔面に拳がめり込んで終わりだろうな -- 名無しさん (2017-12-18 01:12:10)
- プリキュアは追加戦士のミスリードはもうやめたっぽいな -- 名無しさん (2018-05-20 12:52:33)
- ワッハマンの衝撃 -- 名無しさん (2018-05-20 13:20:48)
- 「経営学ではこういうことをする人をストローマンという」とあるけど、ストローマンを調べても詭弁論法の一種としか出てこない。本当にこういう言い方するの? -- 名無しさん (2018-05-20 13:59:04)
- オルガの件ってミスリードのつもりだったのか…てかそれだったらミスリードの使い方おかしくね? -- 名無しさん (2018-05-20 17:47:56)
- この勝負、間違いなく嘘喰いは負けるぞ -- 名無しさん (2018-07-10 21:14:34)
- ↑↑その辺の記述、明らかに記事から不自然に浮いてるし、ぶっちゃけ遠回しに馬鹿にしてるようにしか見えないから個人的には必要ないと思う -- 名無しさん (2018-07-10 21:26:51)
- でんぢゃらすじーさんでは、漫画で叙述トリックを使った回あり。あれは笑った -- 名無しさん (2018-11-11 18:17:17)
- 日本だとheとかSheとか無いから 名前や呼び方でのミスリードがうまくできる -- 名無しさん (2018-12-04 18:06:06)
- 巧妙な叙述トリックにも関わらず、文庫版あらすじに「サスペンス」って書いたせいで直ぐ気付いちゃった作品に出会った……(内容はラブロマンスで、叙述トリック以外にサスペンス要素ゼロ)。乾くるみの某小説の文庫版あらすじ書いた奴はぜってー許さん! -- 名無しさん (2019-01-22 23:46:45)
- 「ストローマン」は「ある人物の主張を曲解した上でそれを批判すること」だと思うが。「子供を道路で遊ばせるな、危ないだろう!」←「じゃあなにか、部屋に引きこもらせていろと言うんですか?」みたいな。 ちなみにストローマンは日本でいうカカシに近い。 -- 名無しさん (2019-04-03 19:54:06)
- 「なるほど!これがミスリードね!」(by浅野先生) -- 昼太郎 (2019-04-03 20:50:08)
- 作品名は出さないけど、「君の名は。」と全く同じミスリードやってて、途中でオチに気付いちゃったヒット小説があるな。執筆時期は「君の名は。」より先なんだけど、本として出版されたのはアレが大ヒットした後で、本当不運。タチの悪い事に、「君の名は。」のミスリードが明らかになるのは作品中盤だけど、某小説の方はそれが作品の終盤(実質オチ)という -- 名無しさん (2019-08-16 15:46:30)
- 書き手に設定してるキャラが有能とは限らない(絶望) -- 名無しさん (2019-08-16 16:12:22)
- 内容が不正確に見えるけど、この記事自体がマスコミ叩きに誘導するためのミスリードというネタ? -- 名無しさん (2019-08-16 16:20:53)
- スネーク→雷電でした。雷電→スネーク→ビッグボスでした。ビッグボス→ソリダスでした。リキッド→オセロットでした。ビッグボス→マザーベースの兵士でした。等々… -- 名無しさん (2019-08-17 10:57:29)
- 嘘喰い読み終えたけど、このままでは嘘喰いは負けるぞ とか せいいちさん! とか 神は今も見ているぞ! とかミスリードの宝庫だったわ -- 名無しさん (2019-09-29 09:18:33)
- 今川作品といえばGガンダムでキョウジ脱走の事実を知らないドモンのためにウルベが立体映像で再現したというのがあったが実は真相を知らないドモンを騙すためのでっち上げだったという、終盤への布石があったな -- 名無しさん (2019-12-14 04:42:58)
- ↑それは意図的に偽の情報を渡してるからミスリードとは違う -- 名無しさん (2020-03-08 01:28:59)
- もしかして→マスコミ -- 名無しさん (2020-06-25 18:49:05)
- ブラボー!おおブラボー!!ボク感動しちゃったヨォ!! -- 名無しさん (2020-10-29 21:56:12)
- ↑3↑4ウルベ→ドモンのやり取りはミスリードじゃなくて騙したのはわかる。けどこの場合スタッフ→視聴者の間はミスリードになる? -- 名無しさん (2023-03-01 23:22:02)
- ↑10某本屋大賞かな?自分も「君の名は。」見たあとあの小説読んだから中盤でミスリードに気がついてしまったな…それを差し引いてもまあ名著だとは思ったけれども。 -- 名無しさん (2023-08-19 19:45:32)
- チューバッカ弁論は似た概念に入らないの? -- 名無しさん (2023-12-09 00:49:53)
- この内容じゃアニヲタwikiじゃなくてネットで真実wikiだよ。 -- 名無しさん (2023-12-09 05:05:59)
- 「俺たちの仕事っスから」が好き -- 名無しさん (2024-01-21 22:04:57)
- ↑18例えば「休日、Aは手作り弁当を持って恋人であるBが所属する草野球の試合を応援に行った。」 A→女、B→男と見せ掛けて実は逆でした!実は同性カップルでした!の性別ミスリードなんかは王道だな。将来このミスリードが通用しなくなる日もくるのかな -- 名無しさん (2024-04-19 12:54:02)
- 「私は行儀の悪い子供は嫌いだ」←「つまり子供はこの世から消えてなくなれとでも?(誰もそんな事言ってない)」って風に相手があたかも最低な発言をしたかのようにみせかけるストローマン論法、簡単にできるから恐ろしいと思う -- 名無しさん (2024-12-15 16:18:00)
最終更新:2024年12月15日 16:18