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ゴースト/ニューヨークの幻(映画)

登録日:2024/12/03 Tue 23:50:22
更新日:2024/12/04 Wed 19:28:01NEW!
所要時間:約 9 分で読めます





マンハッタンに星が流れた夜──

不思議な愛のファンタジー・ドラマは始まった…


ゴースト/ニューヨークの幻(Ghost)』とは、1990年に公開されたアメリカ映画。配給はパラマウント。
主演はパトリック・スウェイジ、デミ・ムーア。
監督は『裸の銃を持つ男』などで知られるジェリー・ザッカー。

●目次

【概要】

不意に殺され、幽霊となってしまった男が恋人を守るために奔走する姿を描いた作品。
基本的にはラブロマンス映画だが、時にはコメディだったり時にはホラー映画さながらの恐怖描写もあったりと多彩なジャンルを内包している。
しかし、2200万ドルと低予算で制作され、さらに目玉となる大物スターの出演もなく、
俳優陣も駆け出しや中堅どころで固められていた本作は配給会社からも全く期待されていない作品だった。
ところが、公開されるや否やその切なくもバラエティに富んだストーリーが評判となり、あらゆる関係者の予想を覆す大ヒットを記録。
本作の4日前に公開され、その年の興行収入トップの本命と見られていた『ダイ・ハード2』を瞬く間に抜き去り、
米国内だけで制作費のおよそ10倍となる2億ドルもの興行収入を叩き出し、
加えて人気ゆえにロングラン上映となったことから全世界での最終的な収益は5億ドル越えという異次元の成績を上げた。
その年のアカデミー賞にも5部門でノミネートされ、見事に脚本賞を受賞。
さらにオダ=メイ役のウーピー・ゴールドバーグが助演女優賞を受賞し、キャリア初となるオスカーを獲得した。
主演のパトリック・スウェイジ、デミ・ムーアは一躍大スターの仲間入りを果たし、後の活躍へと繋がっていく。
日本でも28億円の興行収入を記録するなど大ヒットし、特にヒロインを演じたデミ・ムーアはルックスが日本人の感性に合致した事で本国以上の人気を得る事に。
主題歌はライチャス・ブラザーズの『アンチェインド・メロディ』。
元々は1955年に製作された『アンチェインド』という映画の主題歌でライチャス・ブラザースのバージョンはカバー曲にあたり、映画に使用された事でリバイバルヒットした。

【ストーリー】

ニューヨークで銀行員として働くサム・ウィートは同棲している恋人で陶芸家のモリー・ジェンセンや同じ銀行に勤める親友のカール・ブルーナーに囲まれて満ち足りた生活を送り、まさに幸福の絶頂にあった。
ある日、自分の管理している資金で大金が動き過ぎていることに気付いたサムは送金コードを変更し、金の流れを調べようとする。
その夜、モリーと二人で観劇をした帰り道、彼女から結婚を申し込まれる。
今まで避けていたはずの告白に戸惑っていると、暗闇から暴漢が銃を手に襲い掛かってきた。
モリーを守るために敢然と立ち向かい抵抗するサム。もみ合っている最中に暴漢の銃から弾が放たれる。
そのまま逃げ去る暴漢を追うサムだったが取り逃がしてしまい、仕方なくモリーの元へ戻ると……

「誰か!誰か助けて!」

そこではモリーが血まみれになったサムを抱きしめ、泣き叫んでいた。

そう、サムは暴漢が放った銃弾により死亡し、気付かぬままに幽霊(ゴースト)となっていたのだった。
突然の事態に驚いたサムは天からのお迎えも拒否してモリーの傍に留まるが、幽霊の身ではすぐ近くにいる彼女に触れる事もできず、声も届かない。
さらに、自分を殺した暴漢が未だモリーに付き纏っている事を知ったサムはなんとかして危機が迫っていることを伝えようとする……。

【登場人物】

※吹き替えはソフト版/フジテレビ版/テレビ朝日
  • サム・ウィート
演:パトリック・スウェイジ/吹き替え:江原正士/江原正士/堀内賢雄
本作の主人公。ニューヨークに住む優秀な銀行員*1
温厚で誠実な性格で同僚からも慕われ、恋人のモリーや親友のカールと平凡だが絵に描いたような幸せな日々を送っていた。
「愛している(I Love You)」という言葉を頻繁に口にするモリーに対し、
気恥ずかしさに加えて「愛しているという言葉を軽々しく使いたくない」という思いから「同じく(Ditto)」と返すのが決まり文句。
ある晩、モリーとのデートの帰りに暴漢に襲われて射殺され、幽霊となってしまう。
天国からの迎えを拒み、傷心と失意の日々を送るモリーに傍らに寄り添うが、自分の声が伝えられず、触れもしない事に思い悩む。
演者のパトリック・スウェイジは『ダーティ・ダンシング』などのヒットで人気俳優としての足場を固めつつあったが、本作で大スターの地位へと上り詰めた。
また、余談ながらSNKの格闘ゲーム『龍虎の拳』の主人公、リョウ・サカザキのモデルとなった事でも一部で有名。
2009年に膵臓癌により57歳で死去。その早すぎる死は多くの人に惜しまれた。

  • モリー・ジェンセン
演:デミ・ムーア/吹き替え:高島雅羅/金野恵子/松井菜桜子
サムの恋人である陶芸家で、ニューヨーク・タイムズも取材に訪れる大きな展覧会へも作品を出展するなど新進気鋭として注目されている存在。
サムを心の底から愛しているが、彼が「愛している(I Love You)」という言葉にいつも「同じく(Ditto)」と返してくるのを少々不満に思っている。
愛するサムと一つ屋根の下での暮らしを始め、幸福に満ち溢れた日常を送るが皮肉にもプロポーズをした直後に自らの腕の中で死んでいくサムを見届けるという悲劇に見舞われる。
サムの死後は悲嘆に暮れ、ショックから家に閉じこもってしまう。
演者のデミ・ムーアは本作において黒髪のショートカットにややハスキーがかった声と、当時の一般的なハリウッド女優のイメージとは違ったタイプのルックスをしていたが、
それが逆に新鮮な印象を生んで一躍大ブレイクした。
特に日本でも映画が大ヒットした事に伴って、当時の女性の間でショートカットの髪型が大流行し、一時期はハリウッド女優の代名詞と言われるほどの人気を得た。

  • オダ・メイ・ブラウン
演:ウーピー・ゴールドバーグ/吹き替え:小宮和枝/今井和子/片岡富枝
ニューヨークの下町で二人の妹を助手として霊媒師を営む黒人女性。降霊術を行い、すでに死んでいる者の霊をこの世に呼び寄せ、声を聴くことができるという。

  • カール・ブルーナー
演:トニー・ゴールドウィン/吹き替え:大塚芳忠/鈴置洋孝/家中宏
サムと同じ銀行に勤める同僚。
サムとは親友の間柄で、彼の恋人であるモリーとも親しく、二人が同棲する際に新居の改装も手を貸すなど公私ともに仲が良い。
愛車は真っ赤なフォード・マスタング。
突然サムを失い、悲しみに打ちひしがれるモリーの心の支えとしてあれこれ世話を焼く。
演者のトニー・ゴールドウィンはディズニー映画『ターザン』で主人公ターザンの声優を務めた他、映画監督としても活躍している。

  • ウィリー・ロペス
演:リック・アビレス/吹き替え:牛山茂/福田信昭/西凜太朗
夜道を歩いていたサムとモリーを襲った暴漢。
抵抗するサムと揉み合いになり、サムを射殺して逃げ去った。
さらにモリーの留守中に家に侵入し、家探しをするなどしてサムに危機感を抱かせる。

  • 地下鉄のゴースト*6
演:ヴィンセント・スキャヴェリ/吹き替え:吉水慶/青野武/水野龍司
ニューヨークの地下鉄を根城にするゴースト。黒いコートを身に纏った壮年男性の姿をしている。
モリーの家に侵入したウィリーを追って地下鉄へ乗り込んだサムが偶然遭遇したが、
目が合った瞬間に「俺の縄張りだ!降りろ!」と力づくでサムを電車から叩き出そうとした。
幽霊のはずだがなぜか周囲の物に触ることが可能。

  • ライル・ファーガソン
演:ブルース・ジャーチョウ/吹き替え:城山堅/西村知道/水内清光
サムの同僚の銀行員だが、温厚なサムですら「アホ野郎」と評するほど記憶力に難がある男。
どのくらいかというと5年も一緒に働いていて未だにサムの顔と名前が即座に一致しないレベル。
しかもサムによれば酔うと記憶力の悪さに拍車がかかる模様。
正直こんなに物忘れが激しくてなんで銀行員としてやれているのかが不思議

幽霊(ゴースト)

本作において死亡した人間は身体から魂が抜けだし、そのまま生前の行いによって善人と判断されれば天から降り注ぐ光に導かれる事で天国へと旅立っていく。
しかし、この世に未練がある者はその光を拒否してこの世に留まり、幽霊(ゴースト)となる。
幽霊となった者は生きている人間からは姿が見えなくなり、物に触れる事もできず、触ろうとしても通り抜けてしまう*8。ドアや壁も素通りしてしまい無意味。
椅子に座ったり普通に地面を歩いているじゃないか、とは誰もがツッコむ所。まあ、演出の都合ってやつです
さらに当時はCGなんて便利なものはないので場面によっては窓に姿が映ったり、そもそもほぼ全編に渡って地面に影が映ってたり……
ただし幽霊同士であればお互いの姿が見る事ができ、会話も可能。
また、霊能力のある一部の人間は幽霊の声を聞くことができ、そういった人物の肉体に幽霊が乗り移る事で一時的に身体を借り受ける事ができる。
ただし、その状態は長くは維持できない上に幽霊側の負担が大きいらしく、身体から抜け出した後の幽霊は少しの間だが身動きにも苦労するレベルで消耗してしまう。
さらに、怒りや愛や憎しみといった強い感情を集中させて放出する事で物体に触れる事ができるようになる。
これを駆使する事で生きている人間の目にとっていわゆるポルターガイストと呼ばれるような怪奇現象を起こすことが可能。


【余談】

  • 序盤でろくろを回しているモリーの後ろからサムが抱きしめるような態勢でキスをするシーンはこの映画を代表する有名な場面だが、
    監督によればあの時二人が形作る起立したような形の粘土は男性器のメタファーなんだとか。
    愛し合う二人が確かに存在していることを表しているが、サム亡き後にモリーが一人でろくろを回しても起立した形にならずに崩れてしまう。
    これは男性であるサムが不在であることを示している。
    また、モリーは当初の脚本では彫刻家だったが上記のシーンをより際立たたせるために陶芸家に変更されたとの事。

  • 作中でオダ・メイは尼さんに対して「下着も買えない連中」と散々にこき下ろしているが、
    オダ・メイを演じたウーピーは本作から2年後に修道院を舞台とした不朽の名作映画に主演し、女優として不動の地位を得る事となる。

  • 先述の通り、本作は本命と目されていたダイ・ハード2を抜いて、1990年における興行収入トップの座に就いたが、
    そのダイ・ハード2に主演していたブルース・ウィリスと本作でモリーを演じていたデミ・ムーアは当時夫婦だった*9

  • 『死んだはずの恋人が幽霊となって現れる』というプロットは本作が大ヒットした事で数々のフォロー作品を生んだ。さらに映画やドラマなどの映像媒体においては、
    それほど派手なシーンが必要ない=製作費が少なくても映像化しやすい
    という事情から日本などアジア圏でも本作を参考にしたと思われる作品は多い。

  • 日本では2010年に『ゴースト もういちど抱きしめたい』として松嶋菜々子主演でリメイク版が制作されている。
    ろくろを回すシーンなどオリジナル版を踏襲した場面も再現されているが、こちらでは原典におけるサムではなくモリーが死んで幽霊になるなど、オリジナル版とは変更された箇所も多い。


あぁ 愛しい人 愛しい人よ

君に触れたくてたまらない

長い間ひとりだったから

時の流れがとても遅く感じるんだ

時は多くのことを変えてしまう

君はまだ僕のものかい?




追記・修正は幽霊となっても愛する人を守り抜ける方がお願いします。

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最終更新:2024年12月04日 19:28

*1 具体的な言及はないが自分専用のオフィスを持ち、日本人顧客との商談を任されているなど、比較的高い地位にいる事が伺える

*2 「ママやお祖母ちゃんも霊能力を持っていた」と語っていた事から代々受け継がれてきた能力である模様

*3 冒頭で愛車の月賦も払い終わっていない状況にも拘わらず高級車のフェラーリを欲しがるなど、物欲が強いという密かな伏線が張られていた

*4 「手帳を盗むだけのはずだったのに」とウィリーを責めている事からカールとしてもサムが殺されるのは想定外の事態だった模様

*5 全米トラック組合の委員長を務めた人物で長年に渡ってマフィアと癒着していた。しかしやがて関係が悪化し、そのまま失踪。暗殺されたとも言われるが真相は未だ不明で2024年現在も見つかっていない

*6 サブウェイ・ゴーストとも表記される

*7 原語版では「行きたいのは天国なんかじゃなくて小切手を換金してくれる銀行よ!」となっている

*8 ただ作中ではモリーの飼い猫のフロイドがサムの姿を認識しているような描写がある

*9 2000年に離婚してしまったが