独自

丸刈り・大声あいさつ強制 行き過ぎ指導、元生徒提訴

有料記事

西晃奈 宮崎園子
[PR]

 行き過ぎた生徒指導により、退学を余儀なくされたとして、広島県呉市の私立呉港(ごこう)高校に通っていた男子生徒が29日、同校を運営する学校法人と校長らを相手に約180万円の損害賠償を求める訴えを広島地裁に起こした。学校側は事実をおおむね認めて和解を望んでいる。

 訴状などによると、男子生徒は同校に入学直後の昨年4月、通学途中の電車内でスマートフォンを操作しているのを同校の教諭に見つかり、没収された。母親が学校で注意を受け、スマホを返してもらえたのは2週間後だった。

 同年5月には、授業の教材を忘れたとして、担任教諭の指示で自宅まで取りに帰らされた。電車で往復3時間。学校に戻ると授業は終わっていた。同校は他の生徒にも同様の指導をしており、「帰宅改善指導」と呼ばれているという。

 さらに男子生徒を追い込んだのが「校内反省指導」だ。昨年5月、友人らと放課後に校外で喫煙したと疑われ、この指導を受けるように校長から通告された。

 男子生徒は髪を丸刈りにし、約20日間、授業を受けられず、別室で自習を強いられた。休憩や登下校時間も含めて一日中私語は厳禁とされる一方、下校時に教員に会うと声を張り上げてあいさつするよう指導された。毎朝、前日に書かされたA4判1枚の反省文を大声で読み上げさせられもした。「内容が幼稚園レベル」「お前はこの学校にいらん」などと教員から罵倒されることもあったという。

 男子生徒は大声の強制でのどに炎症を起こしたとして、通院のために欠席すると母親が学校に連絡したところ、「かすれた声で頑張り、努力の姿勢を示せば、反省の意思が伝わる」「休ませては駄目だ」などと言われたという。

部活顧問からも体罰 教諭「殴打は4回でなく3回」

 7月にも、提出物を忘れたとして所属していた運動部の顧問の教諭に拳で4回、胸を殴られたという。同校によると、教諭は「殴打の回数は4回ではなく3回」と主張している。男子生徒は体罰の翌日から学校へ通えなくなり、昨年11月に退学を決め、今年2月に通信制高校編入学した。

 訴状では、校内反省指導などについて「生徒に苦痛を与えるだけで、合理性・相当性を著しく欠く」などとして、校長や教員は児童・生徒に懲戒を加える際に「教育上必要な配慮をしなければならない」と定める学校教育法施行規則に違反していると主張する。

 同校の加賀英雄教頭は朝日新聞の取材に対し、「そういったことがあった」と事実をおおむね認めた上で、「退学の時期と体罰の時期がずれており、体罰が退学の原因になったとは考えていない」と話した。体罰をした顧問の教諭を処分したというが、内容は「個人情報にあたる」として明らかにしなかった。

 同校では10年ほど前から…

この記事は有料記事です。残り925文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
西晃奈
ネットワーク報道本部|大阪府庁
専門・関心分野
子育て、教育、減災・防災、平和