飲料水のマイクロプラスチックは「健康リスクなし」=WHO

イモーゲン・フォークス記者、BBCニュース(ジュネーブ)

A man poses while drinking from a water bottle in the French city of Lille on 25 July, 2018

画像提供, AFP

画像説明, 世界中の河川や湖、水道水やボトル入り飲料水へのマイクロプラスチックの混入が確認されている

プラスチックが破壊されて細かくなった「マイクロプラスチック」による海洋汚染が世界中で問題になっている中、世界保健機関(WHO)は22日、「マイクロプラスチック」が混入した飲料水について、現状の検出レベルでは健康リスクはないとする報告書を公表した。

マイクロプラスチック問題に関する初の報告書によると、WHOは、大きな粒子と、小さな粒子のほとんどが、体内で吸収されることなく排出されると確認した。しかしこれは、「限られた情報」に基づいたものだという。

WHOは、「われわれは、さらに多くのことを緊急に知る必要がある」と述べ、より大規模な調査を行う必要があるとしている。

報告書の内容

マイクロプラスチックとは、長さ5ミリ以下のプラスチック片のことで、世界中の河川や湖、水道水やボトル入り飲料水への混入が確認されている。

では、人間の健康にとって何を意味するのか?

報告書によると、現状の検出レベルでは、マイクロプラスチックによる健康リスクはないとみられるという。一方で、さらなる調査が必要だとしている。

水に混入したプラスチック片に関する、適切な研究は、過去数年の間にようやく始まったばかりだ。そのため、WHOが認めたように、裏づけとなる情報は限られている。

その上、これまで実施された研究には、基準が設けられていなかった。異なる研究者らが、異なる水源に含まれるプラスチック片の数を測定するために、異なるフィルターを使用していた。

WHOのブルース・ゴードン博士は、「1つの水源からは、1リットルあたり1000のマイクロプラスチックが検出され、別の水源からはわずか1つしか検出されなかったとすれば、それは単純に、使用されたフィルターのサイズによるものだ。研究方法としてかなり信頼度が薄弱なものであると言える」と説明した。

それでもなお、ゴードン博士は、現在用いられている研究が、消費者に「相当の安心感」をもたらしているはずだと主張。WHOも、すべての大きなプラスチック片と、小さなプラスチック片のほとんどが、まったく体内へ吸収されずに排出されると、研究結果が示しているとしている。

何をすべきか

WHOは、排泄物や化学物質の除去といった、適切な下水処理で、マイクロプラスチックの9割以上を取り除けるはずだとしている。WHOが、水中のマイクロプラスチックの定期的な確認を推奨しなかったのはこのためだ。代わりに、水道事業体などに対し、「既知のリスク」に注意するよう求めた。

ゴードン博士は、「ふん便汚染された水を20億人が飲んでおり、年間10億人が死亡している。この事実が、注目されなければならない」と述べた。

一方でWHOは、プラスチック汚染を緊急課題だと捉えており、可能な限りプラスチックの使用を減らし、リサイクル計画を改善するよう忠告している。

研究結果の信頼性は

今回の報告書の重要なメッセージは、プラスチック汚染がもたらす影響について、我々がどれほど無知であるかということだ。

水道水よりもボトル入り飲料水に、より多くのマイクロプラスチックが含まれているとする研究もあるが、原因は不明だ。水源が汚染されていた可能性もあるが、ボトル容器や蓋に使用されているポリマーの影響も考えられる。

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明らかになっている研究結果では、マイクロプラスチックの摂取による健康リスクや、マイクロプラスチックと関連のある化学物質量は最小限だとされている。しかし、これまでの研究では相当のデータが不足しており、今後の研究で修正していく必要があると、報告書の共同著者ジェニファー・ドゥ・フランス氏は指摘する。

「我々は、これまで検出されたプラスチック片の化学成分はもちろん、数や大きさ、かたちを把握する必要がある」

マイクロプラスチックが及ぼす健康への影響に関する今回の報告書は、多くの研究の先駆けとなりそうだ。マイクロプラスチック汚染は、水中だけでなく、空気中や我々の食料にまで及んでいるからだ。今後数年間で、WHOは、この「完全な環境暴露」が、我々の健康にとって何を意味するのかということに着目した報告書が得られることを期待している。