ミャンマー総選挙、アウンサンスーチー氏率いる与党が過半数 公平性に疑問も

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ミャンマーで8日に行われた総選挙で、アウンサンスーチー国家顧問兼外相率いる与党・国民民主連盟(NLD)が議会の過半数議席を獲得したことが13日、最新の集計で明らかになった。
NLDの議席は現時点で346と、政権樹立に必要な322議席を上回った。一方、軍部の後ろ盾を得ている最大野党・連邦団結発展党(USDP)はこれに反発。選挙のやり直しを求めている。
13日の最新集計の発表を前に、インドや日本の首相はすでにNLDの勝利に祝意を表している。
ロイター通信によると、NLDの報道官は「地すべり的」勝利を果たしたと説明した一方で、「国家全体を団結させる政府作り」が必要だと述べた。また、民族マイノリティーの代表政党を政権に招くつもりだと明らかにした。
しかし、今回の選挙はロヒンギャを初めとする多くの民族マイノリティーが投票できない仕組みだったことから、総選挙そのものの信頼性を疑問視する声もあがっている。
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ミャンマーでは2017年、軍が少数民族ロヒンギャにジェノサイド(集団虐殺)を行った疑惑が持たれており、今回の選挙は現政権の試金石となっていた。
NLDは国内では人気が高いものの、ロヒンギャ危機に対するアウンサンスーチー氏の対応には国際的な批判が集まっている。
仏教徒が多数派のミャンマーでは2017年、イスラム系のロヒンギャに対し軍が掃討作戦を実行。数千人が死亡、70万人以上が隣国バングラデシュへ逃亡した。
国際社会からは残虐行為との批判が上がったものの、ノーベル平和賞受賞者のアウンサンスーチー氏は軍の対応を擁護した。
ミャンマーはロヒンギャを不法移民と見なし、市民権を与えていない。
何が問題に?
NLDは8日の時点で勝利宣言をしていた。一方の野党USDPはこれに反発し、不正があったと主張しているが、証拠はほとんど提示していない。
USDPは11日に開いた記者会見で、選挙の結果を認めないと表明。「自由で公正で、偏見や不正な活動のない選挙」を求めると述べた。
またミャンマー軍も有権者登録簿に過失があり、「法や手続きの違反が広く行われていた」と主張しているものの、こちらも証拠は提示していない。
国内外の選挙監督団体は、今回の選挙に問題はなかったとしている。
一方で、ロヒンギャの参政権がほとんどはく奪されていることから、総選挙そのものの信頼性を疑問視する声もあがっている。
年初には、出馬を表明したロヒンギャ12人のうち少なくとも6人が、立候補を禁止されている。
こうした事例は、ロヒンギャ以外の民族マイノリティーにも広がっているという。
ミャンマーの選挙管理委員会は10月、西部ラカイン州での投票の大半をキャンセルすると発表した。ラカイン州は、ロヒンギャ危機の中心となった場所。
選管はさらに、シャン州やカチン州といった紛争のある地域でも、「自由で公正な選挙が行えない」として投票を取りやめた。
一連の決定で、ミャンマーの有権者3700万人のうち200万人が投票権をはく奪されたことになり、民族マイノリティーを代表する政党は怒りの声をあげていた。