ロシア政府、BBC特派員のビザ更新せず BBCは「報道の自由への攻撃」と非難

Sarah Rainsford

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画像説明, BBCモスクワ特派員のサラ・レインズフォード記者はベテランの外報記者

ロシア政府はBBCのモスクワ特派員の査証(ビザ)を更新しない方針を明らかにした。これを受けてBBCは13日、「報道の自由に対する直接的攻撃だ」と非難した。

ロシア国営メディアは、モスクワを拠点にするBBCのサラ・レインズフォード記者について、今月末に期限が切れる記者ビザをその後は更新しないと伝えた。イギリス政府がロシア人記者にビザを発行しないことへの報復措置だという。

ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、チャットアプリ「テレグラム」への投稿で、イギリスがロシア人記者に対して行う「ビザに関した迫害」について、ロシアとして反応すると繰り返し警告していたと述べた。

国営テレビ・ロシア24は12日深夜、放送局RTやオンラインメディア「スプートニク」などの政府系メディアの記者が、国際的イベントの取材のためイギリス政府に記者ビザを申請しても、却下されたと伝えていた。

「サラ・レインズフォードは帰国する。モスクワのBBC支局のこの特派員は、ビザの更新を受けられない。というのも我々の専門家たちによると、BBCがマスコミ界で、超えてはならないあらゆる一線を越えたからだ」、「サラ・レインズフォードの追放は、我々からの相応の反応だ」と、ロシア24は伝えた。

BBCのティム・デイヴィー会長は声明で、「サラ・レインズフォードの追放は報道の自由への直接的な攻撃で、我々は全面的にこれを非難する」とコメントした。

「サラは傑出した、恐れ知らずのジャーナリストだ。ロシア語を流暢(りゅうちょう)に話し、ロシアや旧ソ連について客観的に、深く取材した報道をしている。彼女の取材は、世界中でBBCを見ている数億人の人に情報を提供している」

「ロシア当局には再検討を強く求める。その間、我々は引き続きロシア周辺の出来事を客観的かつ中立に報道し続ける」

イギリス外務省はロシア政府の決定について、「またしてもロシア当局が不当な行動に出た」と評した。

レインズフォード特派員はベテラン外報記者で、モスクワの前はハバナ、イスタンブール、マドリードを取材拠点にしていた。

動画説明, 英制裁について「窒息してしまえ」 ベラルーシのルカシェンコ大統領

最近ではベラルーシの人権侵害を取材。今月9日には、べラルーシのアレクサンデル・ルカシェンコ大統領の記者会見で、イギリスの経済制裁について質問した。すると、ルカシェンコ大統領は「イギリスは自身の制裁で喉を詰まらせてしまえ(中略)アメリカの手先だ」と語調を強めた。

イギリスの記者がロシアから追放されるのは約10年ぶり。両国関係が悪化する中、双方の報道関係者への報復的対応も厳しくなっている。

2019年には英放送通信分野の独立規制機関オフコムが、英南部ソールズベリで元ロシア情報将校と娘が神経剤で攻撃された事件の報道について、ロシアの放送局RTが中立ルールに違反したとして罰金を科している。