トルコ大統領、西側10カ国の大使追放を命令 民主化活動家の解放めぐり

President Erdogan

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画像説明, トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領

トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領は23日、アメリカやドイツ、フランスなど10カ国の大使を国外退去処分にするよう命令した。

アメリカ、カナダ、フランス、フィンランド、デンマーク、ドイツ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデンの大使は18日、4年以上にわたり拘束されているトルコの活動家オスマン・カワラ氏の即時解放を求める声明を発表していた。10カ国のうち7カ国は、北大西洋条約機構(NATO)でトルコと同盟関係にある。

北西部エスキシェヒルでの演説でエルドアン大統領は、「外務大臣に必要な命令をして、何をすべきか指示した」と述べた。

大統領は外相に、ただちに10カ国の大使を「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」に指定するよう命令したという。ペルソナ・ノン・グラータ指定とは、外交使節としての信認取り消しや国外追放を意味する外交用語。

大統領は演説で、対象10カ国の大使が「トルコ外務省を訪れてあれこれ命令するなど、あり得ないことだ」とも述べた。

また現地報道によると、エルドアン大統領は演説で、大使らはトルコを理解するか、離れるかの2択しかないと述べた。

ただし、今後のトルコ当局の動きについては詳細は不明だ。

A journalist stands in front of a poster featuring jailed businessman and philanthropist Osman Kavala in October 2018

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画像説明, トルコの活動家オスマン・カワラ氏は裁判を受けられないまま4年以上拘束されている

エルドアン大統領の発言については、現時点で各国大使はほとんど反応していない。ただしドイツの外務省は、関係各国が「緊密な協議」を行っていると述べた。

また、トルコ当局からの正式な通告なども送られてきていないという。

ノルウェー外務省はロイター通信の取材に対し、同国の外交官は「国外追放に相当することは何一つしていない」と述べた。

オスマン・カワラ氏とは

カワラ氏は現在、抗議活動とクーデター未遂の容疑で拘束されている。

2013年に起きた全国的な抗議デモをめぐる罪状について昨年、無罪判決を受けたものの、直ちに再逮捕された。無罪判決は破棄され、2016年に起きた軍事クーデター未遂に関わっていたとして、罪状が追加されている。

カワラ氏は罪状を否認し、エルドアン大統領による反対派の抑圧だと訴えている。

これについて西側10カ国は共同声明で、カワラ氏の裁判の「遅延が続く」ことが「民主主義の尊重、法の統治、トルコ司法の透明性に影を落としている」と批判。「トルコはただちにカワラ氏を釈放し」、迅速な事態の解決を望むとしていた。

欧州評議会もトルコに対し、同氏の釈放を命令した欧州人権裁判所の判決に従うよう最後警告を出している。

トルコ外務省は、共同声明が発表された翌日の19日に各国大使を召喚し、カワラ氏をめぐる「無責任な」声明に抗議している。

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<解説>非常に強気な動き ――エジェ・グクセデフ、BBCトルコ語

カワラ氏をめぐる西側諸国とトルコの緊張関係が続いている。トルコはかねて、政府の批判者を刑事訴追し、法の統治を損なっていると批判を受けているが、カワラ氏の件がその一例だ。

実業家のカワラ氏は、表現の自由と民主化を求める活動を行っていた。

エルドアン大統領は、2013年にイスタンブールのゲジ公園から全国へと波及した反政府抗議運動を、カワラ氏が支持したと主張している。

大統領は、この抗議運動は自分と政府を倒すためのものだったと主張し、カワラ氏の釈放を求める声を、自身への直接攻撃と見なしている。今回のような厳しい対応を取っているのは、そのためだ。

トルコ当局関係者は私に、カワラ氏の裁判がいつ始まるかは分からないと話した。しかし裁判が始まれば、今回声を上げた国は反応するだろうし、そうすればトルコ経済にも影響が出るだろう。トルコ経済はすでに低迷しているが、共同声明に参加した国の中には、同国の最大の貿易相手国も含まれる。

エルドアン大統領の今回の動きは非常に強気だ。おそらく国内政界への力の誇示で、特に1年半後に迫った総選挙を見据えたものだろう。国内向けのレトリックに過ぎないというアナリストもいるが、実際に本気で命令を履行させるつもりかもしれないという憶測もある。先行きは不透明だ。

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