「欧州はロシアのガス供給停止に備えよ」=国際エネルギー機関

ジョナ・フィッシャーBBC環境担当編集委員

Gas pipeline

画像提供, Reuters

国際エネルギー機関(IEA)は22日、ロシアが今冬にも欧州へのガス供給を停止する可能性があると警告した。

IEAのファティ・ビロル事務局長は、完全に供給が止まる可能性は高くはないものの、欧州は念のために緊急時対策を用意しておくべきだと指摘した。

欧州ではこのところ、いくつかの国々で、ロシアからのガス供給が予定より大幅に減っているという。

ロシア当局は、故意に減らしているとの見方を否定し、技術的な問題だと説明している。

ロシアがウクライナに侵攻する以前、欧州は天然ガス輸入の40%をロシアに頼っていたが、現在は20%まで減っている。

「戦略的」な削減

ビロル事務局長は、ロシアのガス供給の削減は「戦略的」なものだと思うと述べた。供給が少なくなっていることで、欧州各国はガス貯蔵に苦慮するようになり、今年の冬にはロシアの影響力が増すという。

BBCニュースの取材に対してビロル氏は、「ロシアが今後もあちこちでさまざまな問題を見つけ、ヨーロッパへのガス供給をさらに減らす口実を探し続け、もしかしたら完全に停止してしまう、そうした可能性は否定できない」と語った。

ロシアから欧州へガスを運ぶパイプライン「ノルドストリーム1」では先週、輸送可能量の40%しかガスが供給されなかった。多くの専門家は、ロシアの「技術的問題」という説明を疑問視している。

ガス供給の不足は欧州各地で報告されている。17日にはイタリアのエネルギー大手エニが、ロシア国営ガスプロムから供給されるはずのガスが半分しか届いていないと発表した。スロヴァキアやオーストリアでも同様の不足が発生している。

フランス当局は、ドイツ経由のロシア産ガスが6月15日以降、届いていないと述べている。ポーランド、ブルガリア、フィンランド、デンマーク、オランダは、ロシア通貨ルーブルでの支払いを拒否して以降、同国からのガス供給が停止した。

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欧州各国は先月、ガス価格の変動から身を守るために、貯蔵施設を満杯にすることで合意した。最新のデータでは55%程度の貯蔵量を、11月までに80%以上にすることを目指す。

ビロル氏は、現在進行中のガス危機は、石炭火力発電所での発電を増加させたり、可能であれば原子力発電所を延命させたりといった、ガス需要を減らすための緊急短期措置を正当化するものだと述べた。また、ロシアがガス供給を完全に停止した場合には、抜本的な対策が必要になるかもしれないと指摘した。

「欧州で計画的かつ秩序だったガスの配給制度が必要になる可能性は排除できない」

「これが基本シナリオとは言わない。しかし、数年とは言わないまでも、ここ数カ月のエネルギーパートナーとしてのロシアとの経験を考えると、当面はこのシナリオを除外するわけにはいかないだろう」