トランプ前大統領、出廷前にフロリダ入り 元司法長官は起訴状正しければ「おしまい」と
核兵器情報を含む数百点の機密文書を権限なく自宅に保管していた罪で米司法省に起訴された、ドナルド・トランプ前米大統領は12日、フロリダ州マイアミに近い自分のゴルフ・リゾートに到着した。13日午後にも、マイアミにある同州南部地区の連邦地裁へ出廷する。他方、トランプ政権で司法長官を務めたビル・バー氏は米FOXニュースに対して、起訴状の内容が正確なら、前大統領は「おしまいだ」と話した。
ニュージャージー州にある自分のゴルフ場からマイアミ近くのリゾート施設「トランプ・ドーラル」へと移動した前大統領は、ステーキハウスにいた客たちと記念撮影などしながら歓談。何かを質問されて「何もしてない」「何もなかった」と答えるのが聞かれた。
「ずっと応援してますよ」とバーの客が声をかけると、「どうもありがとう」と前大統領は答えた。
他方、マイアミのフランシス・スアレス市長は記者団に、前大統領の出廷に備えて市内の警備体制を強化していると話した。最大5万人規模の群衆を想定して、警官を配備する方針という。ただし複数の米メディアは消息筋の話として、集まるのは数千人だろうとの見通しを伝えている。
「全員、平和的に行動してほしい」とスアレス市長は話した。
起訴状によると、罪状は37件。前大統領が退任後、フロリダ州の自宅兼リゾート施設「マール・ア・ラーゴ」の大広間やシャワーなどに、機密文書の入った箱を積み上げていたという。さらに、捜査員にうその証言をしたほか、機密文書に関する連邦捜査局(FBI)の捜査を妨害しようとしたという。
アメリカの大統領経験者が、連邦法違反で起訴されるのは史上初めて。前大統領はすでに今年3月末、2016年大統領選直前に元ポルノ女優に支払った性的関係の口止め料をめぐり、ニューヨーク州の大陪審によって34件の事業記録改ざん罪で起訴され、4月に逮捕され、初出廷していた。大統領経験者が起訴されるのは、この時が初めて。
トランプ前大統領は、すべての起訴内容について、全面的に否定。司法省のジャック・スミス特別検察官を「狂人」だと罵倒している。
週末に開いた支持者集会では、今回の起訴を「腐敗した」FBIによる「選挙妨害」だと攻撃。さらに、たとえ有罪になっても2024年大統領選で再選を目指すことには変わりないと強調した。
「手堅い起訴内容」=元司法長官
前日11日には、2019年2月から2020年12月にかけてトランプ政権の司法長官だったビル・バー氏がFOXニュースで、スミス特別検察官による起訴内容は手堅いものだと述べ、「(罪状の)半分も真実なら、(前大統領は)おしまいだ。非常に詳細な起訴内容で、非常に深刻だ」と話した。
バー元司法長官が使った「He is toast」という表現は、「彼はこんがり焼かれてしまう」から転じて「おしまいだ」という意味の慣用表現。バー氏は在任中、トランプ大統領(当時)を強力に支持していたが、辞任後は批判に転じている。
「(前大統領が自宅で)保管していた書類の機密性の高さとその数に、衝撃を受けた。(中略)機密文書を意図的に保持していたという、スパイ防止法にもとづく罪状は手堅い内容だと思う」とも、バー氏は話した。
バー氏のこの発言の直後、トランプ前大統領はバー氏について「不満だらけの元従業員」で、「弱くてまったく無能だった、怠慢な司法長官」だったと攻撃した。
共和党内の実力者の多くは、2024年大統領選の共和党候補指名争いで先頭に立ち続ける前大統領を、正面から批判していない。その多くは今回の起訴について、司法省やジョー・バイデン政権、民主党に批判の矛先を向けている。
BBCがアメリカで提携するCBSニュースが18日に公表した世論調査によると、大統領選の共和党予備選で投票する予定の有権者のうち、76%が今回の起訴について、前大統領の行動がアメリカの安全保障を脅かしたのかどうかよりも、起訴が政治的動機によるものなのかどうかが気がかりだと答えている。
大統領記録法は、大統領や副大統領について、公務に関する記録を退任時に国立公文書館に提出しなければならないと定めている。その上で政府文書は、厳重に管理・保管されなくてはならないとしている。
複数の法曹関係者は、今回の起訴内容を受けて前大統領が有罪となった場合、量刑は相当なものとなり、場合によっては長期の禁錮刑につながる可能性もあると話している。
スミス特別検察官は9日、フロリダ州の連邦地裁が起訴状を開示したことを受け、異例の記者発表に臨み、「この国の法体系はひとつでそれは全員に適用される。法律を適用し事実を集める。それが捜査の結果を決定する。それ以上でも、それ以下でもない」と言明していた。