タイ、ウイグル族40人を中国に強制送還 人権団体や欧米が非難
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タイ当局は27日、少数民族ウイグル少なくとも40人を中国に強制送還したことを明らかにした。人権団体は、強制送還されれば拷問を受け、死に至る可能性があると警鐘を鳴らしていた。
強制送還された人々は、バンコク市内の拘置所に10年以上収容されていた。27日に、中国の新疆ウイグル自治区へ空路で移送されたとみられる。
中国政府は新疆ウイグル自治区北西部で暮らすウイグル族や、そのほかのイスラム教徒の民族の扱いをめぐり、人道に対する罪を犯していると非難されている。集団虐殺が行われている可能性も指摘されているが、中国政府はこれらのすべてを否定している。
タイがウイグルの人々を強制送還したのは、2015年以来。アメリカや国連が、ウイグル族の中国への送還に深刻な懸念を示して以降、送還は秘密裏に行われてきた。
タイ・メディアは27日早朝、窓が黒いビニールシートで覆われた数台のトラックが、バンコクの主要な移民収容施設を出発したと報じた。
その数時間後、航空機の位置をリアルタイムで表示する追跡サイト「フライトレーダー24」は、飛行予定のない中国南方航空の機体がバンコクを出発し、最終的に新疆ウイグル自治区に着陸したことを示した。何人が強制送還されたのかは、すぐにはわからなかった。
タイ政府は後に、40人のウイグル族を中国に送り返したと明らかにした。彼らが10年以上拘束されているのは正しくないと判断し、強制送還を決めたと説明。過去にウイグル族の亡命を認めたトルコを含め、受け入れを表明する第三国はなかったとも述べた。
タイには今も、8人のウイグル族が残っている。うち5人は収容中に罪を犯して服役している。
タイ政府によると、ペートンタン・シナワット首相は最近中国を訪問した際、ウイグル族が中国に送還されれば面倒を見るという確約を中国側から得たのだという。
シナワット首相は27日、強制送還について記者団から尋ねられた際、これを認めなかった。
「世界のどの国でも、法律、国際プロセス、そして人権の原則を順守しなければならない」と、首相は述べた。
中国政府は、中国人の不法移民40人がタイから送還されたと発表したが、それがウイグル族だとは認めなかった。
中国外務省は「送還は中国とタイの法律、国際法、国際的な慣行に沿って行われた」とした。
中国国営メディアは、送還された人々は犯罪組織に「惑わされ」、中国を違法に出国した後、タイで立ち往生していたと伝えた。
人権団体や欧米などが非難
今回強制送還されたのは、新疆ウイグル自治区での弾圧から逃れて2014年にタイ国境で拘束された300人以上のウイグル族の一部。この多くはトルコに移送されたが、2015年に中国に送還された人たちもいた。中国への送還は、各国政府や人権団体の激しい抗議を引き起こした。
「タイ政府は一体何をやっているんだ」と、野党議員のカンナヴィー・スエブサン氏は27日、ソーシャルメディアに投稿した。
「迫害に直面するウイグル族の強制送還はあってはならない。彼らは11年間収監されていた。私たちはあまりにも長い間、彼らの人権を侵害してきた」
このウイグルの人々は、有効なビザなしにタイに入国したこと以外の罪には問われていなかった。収容されていた施設は不衛生で、過密状態にあることで知られていた。5人のウイグル族が収容中に死亡している。
国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(HRW)は27日に声明で、ウイグルの人々は現在、拷問や強制失踪、長期の収監に直面する可能性が高いとした。
「タイによるウイグル族の中国への移送は、タイの法律および国際法上の義務に対する明白な違反行為だ」と、HRWのエレイン・ピアソン・アジア代表は指摘した。
「昨日(26日)まで、タイ政府の高官たちは、同盟国や国連関係国を含め、彼らはどこにも移送されないと、公に表明していた」
アジア人権労働擁護団体(AHRLA)のフィル・ロバートソン氏は、今回の強制送還は「国境を越えた弾圧や、権威主義的な隣国との協力という点で」、タイの現政権は前政権とは異なるという「見せかけ」を「完全に破壊した」と述べた。
同団体は、強制送還は「想像を絶する残酷な」行為だとした。
アメリカのマルコ・ルビオ国務長官は27日、タイによる強制送還を非難するとともに、「ウイグル族が保護を求めるすべての国の政府に対し、ウイグル族を中国に強制送還しないよう」求めた。
ルビオ氏は、オンライン上に掲載された声明の中で、中国は「新疆ウイグル自治区で暮らす、イスラム教徒が大半を占めるウイグル族や、そのほかの民族、宗教的少数派グループを標的としたジェノサイド(集団虐殺)や人道に対する罪を犯している」と非難した。
国連は今回の強制送還を「深く遺憾に思う」とした。欧州連合(EU)もこれに同調した。
イギリスのデイヴィッド・ラミー外相は、イギリスはタイの決定に「最も強い言葉で」反対すると述べた。
新疆ウイグル自治区には約1200万人のウイグル族が暮らしている。その大半はイスラム教徒だ。
ウイグル族はトルコ語に似た独自の言語を話す。文化的にも民族的にも、中央アジア諸国に近いと自認している。ウイグル族の数は、新疆ウイグル自治区の人口の半数に満たない。
ここ数十年では、中国の主要民族である漢族が同地域に集団移住している。少数民族の人口を減らすために、中国政府が画策したものだとされる。
中国はまた、イスラム教徒を標的にし、同地域での宗教活動を禁止したり、モスク(イスラム教の礼拝堂)や墓を破壊していると非難されている。
追加取材:タンヤラット ・ドクソン(バンコク)
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