19歳未満へのジェンダー関連治療を制限へ トランプ氏が大統領令に署名

書類に署名するドナルド・トランプ米大統領の手元を写した写真

画像提供, Reuters

ドナルド・トランプ米大統領は29日、19歳未満の人々に性別適合のための治療や手術を行うことを制限する大統領令に署名した。

トランプ大統領はこの命令で、ジェンダー(性自認)関連治療に対する連邦支援を終了すると述べた。また、保健福祉長官に対し、「子どもに対する化学的・外科的切断を終わらせるため、あらゆる適切な行動を取るよう」呼びかけた。

命令は、二次性徴(思春期)抑制剤、エストロゲンやテストステロンといったホルモン、外科的処置などによる治療を対象としている。

この命令は、法的な挑戦に直面する可能性が高い。

大統領令では、連邦運営の保険プログラムから、未成年者の性別適合に関連する治療を除外するよう指示している。また、連邦助成金を受ける医療機関が、こうした治療を提供することを阻止することも目指している。

アメリカではすでに26以上の州で、子どもや若者に対するジェンダー治療が制限されている。

米小児科学会や米医師会を含む複数の医療団体は、この種の治療が必要だと指摘している。

しかし、特に子どもに対するジェンダー治療での医療介入は議論の的となっている。欧州でも、いくつかの国で治療をめぐる独立調査が行われている。

イギリスの国民保健サービス(NHS)イングランドは昨年、18歳未満に提供するジェンダー関連治療についての報告書を発表。NHSがこれまで、不十分な研究と「非常に乏しい」科学的根拠によるケアを行っており、子どもたちが必要とすることに「十分応えてこなかった」と指摘した。

トランスジェンダーの権利団体は、ホワイトハウスの動きをすぐに批判した。

米自由人権協会(ACLU)で「性的少数者(LGBT)およびエイズウイルス(HIV)プロジェクト」を率いるチェイス・ストランジオ氏は、「この命令は、全国のトランスジェンダーの若者に救命医療へのアクセスを閉ざす明確な計画を示している。家族の役割を無視し、患者と医師の間に政治を持ち込んでいる」と述べた。

一方、保守派はこの命令を称賛している。キリスト教系の法的擁護団体「アライアンス・ディフェンディング・フリーダム」は、これを「正気へのすがすがしい回帰」と呼んだ。

米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)ウィリアムズ研究所の調査によると、アメリカの13歳以上の人口のうちトランスジェンダーは1%未満であり、治療を求める人数はさらに少ない。

トランプ氏は20日の就任演説で、「今日からジェンダーは二つしかないというのが、アメリカ政府の公式方針になる。男性と女性だ」と表明。直後に、「女性をジェンダー・イデオロギーから守り」、「連邦政府に生物学的真実を取り戻す」という大統領令に署名した。

今週初めには、国防当局に対し、トランスジェンダー部隊に関する軍の政策を再検討するよう求める命令に署名した。この大統領令はすでに法廷で争われている。

こうした命令は、ジョー・バイデン前政権が導入したトランスジェンダーに関する政策を撤回するという、トランプ氏の選挙公約を果たすものだ。