【米大統領選2024】 世論調査の動きはどうなっているのか

アメリカ大統領選の両候補のイメージ

アメリカの大統領選は11月5日に投票が行われ、有権者はドナルド・トランプ前大統領(共和党)とカマラ・ハリス副大統領(民主党)のどちらかを次の大統領に選ぶことになる。

投票日に向けてこの記事では、各種世論調査の動向を追っていく。

全国の支持率平均は

ハリス候補は7月末に民主党候補となって以来、全国的な支持率では僅差ながらトランプ候補にリードしてきた。

8月末に民主党大会で正式に候補指名された前後では、ハリス氏が最大4ポイントまでリードを広げたものの、その後は差が狭まり続けた。

下の折れ線グラフは、全国的な支持率平均の推移を示す。

ただしアメリカの大統領選は、全国の票数ではなく、人口に応じて各州に割り振られた選挙人(538人)の過半数を得た候補が勝者となる。

ほとんどの州では、その州で過半数の票を得た候補が、選挙人を全員獲得する仕組み(一部の州では、連邦下院選挙区にも割り当てられている)。

このため、全国的な支持率だけでなく、全国的な得票数で勝っても、その候補が選挙に勝つとは限らない。

州の大半では歴史的に、民主党と共和党のどちらの候補が勝つかがほとんど決まっており、実際に選挙の勝敗を左右するのは一部の激戦州となっている。

激戦州の情勢は

両候補は現在、七つの激戦州で接戦を展開している。世論調査は、有権者が特定の候補や論点についてどう感じているかを全般的に説明するため設計されており、選挙結果を1ポイント未満まで正確に予測するためのものではない。下の数字を見るにあたっては、それを念頭に置く必要がある。

さらに、下記の支持率平均を割り出すために使われた個々の調査結果には、統計上の誤差が3~4ポイントあり得る。このため、支持率が示すよりも特定の候補が善戦もしくは苦戦している可能性もある。

11月4日の時点で、ペンシルヴェニア(選挙人19人)、ノースカロライナ(同16人)、ミシガン(同15人)、ウィスコンシン(同10人)、ネヴァダ(同6人)の各州ではいずれも、両候補の支持率の差は1ポイント以内となっている。

他方、ジョージア州(同16人)ではトランプ候補が2ポイント、アリゾナ州(同11人)では同候補が3ポイント、リードしている。

ペンシルヴェニア、ミシガン、ウィスコンシンの3州は2016年大統領選でトランプ候補が勝つまで、伝統的に民主党が優勢な州だった。2020年大統領選ではこの3州をバイデン氏が奪還したことが、同氏の当選に大きく貢献した。ハリス候補が今年の選挙でもこの3州を取ることできれば、大いに有利になる。

3州ではハリス氏が8月初めからしばらく2~3ポイント優勢だったものの、現在はほぼ拮抗している。

アリゾナ、ジョージア、ネヴァダ、ノースカロライナの4州では、トランプ候補がほぼ一貫して僅差で優勢を維持している。

支持率の平均値はどう計算するのか

この記事の表で示した数字は、米ABCニュースに属する統計分析サイト「538」が計算した平均値。「538」は平均値算出のため、全国と激戦州で複数の調査会社が行う個々の世論調査結果を集計している。

精度管理のために「538」は、特定の評価基準に見合う調査会社による調査結果しか使わない。評価基準とはたとえば、回答者の数や調査の時期、調査の実施方法(電話かテキストメールかオンラインかなど)、調査の資金源が明示されているかどうかなど。

世論調査は信用できるのか

現在の世論調査は、ハリス候補とトランプ候補が全国的にも激戦州でも、数ポイント差で接戦状態にあることを示している。これほどの接戦では、勝者を予測するのは非常に難しい。

世論調査は2016年と2020年の大統領選で、トランプ候補に対する支持の規模を低く見積もった。2020年の全国的な世論調査結果と実際の結果の誤差は、40年来で最悪レベルだったと、調査専門家たちは言う。そのため、今回の選挙でも世論調査結果について慎重になることが重要だと言われている。

2016年の誤差については、選挙最終盤に多くの有権者が考えを変えたことや、ヒラリー・クリントン氏を支持しがちな大卒有権者が、回答者に占める割合が高すぎたことなどが理由として挙げられている。

2020年の誤差について専門家は、トランプ支持者の回答を得るのが難しかったことを一因として挙げる。ただし、新型コロナウイルスのパンデミックの最中に行われ、記録的な投票率だった2020年選挙についてなぜ多くの世論調査が予測を誤ったのか、正確に知るのは「不可能」だという意見もある。

世論調査各社は問題を是正するため、有権者の人口動態をより正確に反映するなど、精度改善のためさまざまな措置を講じた。その結果、2022年中間選挙では世論調査業界は結果を正確に予測し、「過去最高の成功をおさめ」たのだと、ABC「538」の担当者たちは話す。

しかし、トランプ候補は中間選挙には出馬していなかった。そのため、調査手法の変更が、行動の予測が難しいトランプ支持者に対応しきれるのかは、実際に開票してみないとわからない。

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日本時間11月6日(水)に行われるアメリカ大統領選挙の開票速報を、BBCニュースチャンネルは終日生放送する。