トランプ氏、ウクライナでの戦争終結の交渉は「直ちに始まる」 プーチン氏と電話協議で合意と

ドナルド・トランプ米大統領

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バーンド・デブスマン・ジュニア(米ホワイトハウス)、マイク・ウェンドリング

アメリカのドナルド・トランプ大統領は12日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と「長い時間、非常に生産的な」電話協議を行い、ウクライナでの戦争を終結させるための交渉を開始することで合意したと述べた。

トランプ氏は、「(アメリカとロシアの)それぞれのチームが、直ちに交渉を開始すること」でプーチン氏と「合意した」と、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。また、両首脳は、米ワシントンとロシア・モスクワを訪問するよう招待し合ったという。

その後、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も、「永続的で信頼できる和平」についてトランプ氏と話をしたと明らかにした。

交戦中の2カ国とトランプ氏の電話会談は、トランプ氏とピート・ヘグセス国防長官が、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟する可能性は低いとする中で行われた。NATO加盟をめぐるアメリカ側の発言は、ウクライナ政府に強い失望感を与えるものとなる。

ゼレンスキー氏は、14日にドイツ・ミュンヘンで開催されるウクライナに関する防衛サミットで、アメリカのJ・D・ヴァンス副大統領とマルコ・ルビオ国務長官と面会するつもりだと述べた。

トランプ氏は、「大規模で、まったく不必要な死と破壊が起きている、このばかげた戦争を止める時だ。ロシアとウクライナの人々に神のご加護を!」とソーシャルメディアに投稿した。

トランプ氏はプーチン氏との直接会談の日取りは設定していないが、その後、ホワイトハウスで記者団に対し、そう遠くない将来にプーチン氏と「サウジアラビアで会うだろう」と述べた。

「我々はこの戦争を終わらせたい。この戦争は大惨事だ」

トランプ氏は、プーチン氏が「平和を望んでいる」と信じているとし、プーチン氏がこの戦争が終わることを望んでいると確信していると述べた。

クレムリン(ロシア大統領府)のドミトリー・ペスコフ報道官は、協力する時が来たというトランプ氏の考えを、プーチン氏は支持していると述べた。

プーチン氏とトランプ氏の電話協議は1時間半近く続いた。その中で、プーチン氏はトランプ氏をモスクワに招待したと、ぺスコフ氏は述べた。

トランプ氏はホワイトハウスで記者団の取材に応じた際、ウクライナが、同国南部クリミアをロシアに一方的に併合された2014年以前の国境に戻れる可能性は低いと語った。ただ、BBCの記者からの質問に答えるかたちで、「あの土地の一部は戻るだろう」と述べた。

ヘグセス国防長官は、12日にベルギー・ブリュッセルのNATO本部で開かれたウクライナ防衛に関する会合で、ウクライナがNATOに加盟する可能性はほぼないと語った。

トランプ氏は、「(ヘグセス氏が言ったことは)おそらく正しいと思う」と同調した。

動画説明, ウクライナ国境、クリミア併合以前に戻る可能性は「低い」とトランプ氏 BBC記者の質問に

ヘグセス氏のNATOでの発言は、ウクライナ政府に打撃を与えることになる。

トランプ政権が前政権に比べて、ウクライナに同情的ではないことは以前から知られていた。ヘグセス氏の発言はどれも、ロシア政府を喜ばせるだけのものだったといえる。

NATO加盟への可能性が否定され、ウクライナはロシアとの戦争で勝てないとの見解が示され、さらには、こう着状態にある前線が将来、どのように保たれるのかという不明確さもある。これらはすべて、11年にわたるロシアのウクライナ侵略に対する具体的な見返りだ。

「ウクライナ抜きでウクライナに関する協議はできない」と、ゼレンスキー氏は繰り返し主張してきた。しかし、トランプ氏とプーチン氏の電話協議は、ゼレンスキー氏不在で行われた。

ゼレンスキー氏は、トランプ氏との電話について、さまざまな問題に関する「有意義な会話」ができたと語った。ゼレンスキー氏はキーウ訪問中のスコット・ベッセント米財務長官とも面会したという。

「ウクライナほど平和を望んでいる国はない。アメリカと共に、ロシアの侵略行為を止め、永続的で信頼できる和平を確保するための次のステップを計画しているところだ」と、ゼレンスキー氏は述べた。

また、「我々はさらなる接触を維持し、今後の会談を計画することで合意した」と付け加えた。

AFP通信によると、アメリカとウクライナの首脳による電話協議は1時間におよんだという。

英ガーディアン紙の11日付のインタビューで、ゼレンスキー氏は、和平交渉の一環として、ロシアが占領するウクライナ領と、ロシア・クルスク州でウクライナが占領するロシア領を交換する可能性を示唆した。

さらに、欧州諸国だけでなくアメリカも、ウクライナのための安全保障パッケージに加わる必要があると主張した。

「アメリカ抜きの安全保障は、真の安全保障とはいえない」

ウクライナにおけるロシア軍の占領範囲を示した地図

ロシアは2014年3月、ウクライナ南部クリミアを一方的に併合。その後、ウクライナ東部で活動する、親ロシア派のウクライナ反政府勢力を支援するようになった。

両国間の衝突と緊張は何年も続いた。そして2022年2月にロシアがウクライナに侵攻し、全面戦争に突入した。

首都キーウの掌握というロシアの試みは阻止されたが、ロシア軍はウクライナ東部と南部の約5分の1の領土を占領し、ウクライナ各地に空爆を行っている。

一方のウクライナ軍は、ドローン(無人機)攻撃や、ロシア・クルスク州に越境攻撃を仕掛け、対抗している。

ロシアとウクライナはいずれも、秘密保持を徹底しているため、死傷者数を正確に把握するのは難しいが、これまでに数十万人の兵士や民間人が死傷したと推定されている。