JR東日本が2021年11月から、駅構内に設置している時計の撤去を進めている。同社によると、2022年1月26日時点で撤去したのは、22駅(山梨県20駅、神奈川県2駅)。
今後、10年程度をかけて、管内の3割にあたる約500駅の時計の撤去を進める計画だという。
多くの人が駅構内の時計を見ていると思うが、なぜ撤去を進めているのか? またこの撤去について、駅の利用者からはどのような声が寄せられているのか?
JR東日本の担当者に撤去の理由と利用者の声を聞いた。
駅構内から時計を撤去する理由
――時計の撤去を始めたのはいつ?
2021年11月になります。
――撤去の対象は何駅?
約500駅が対象で、全体の3割になります。
――撤去するかどうかは、どのように判断した?
「時計の老朽度合」「駅のご利用状況」「保守メンテナンスの軽減」などを考慮して、総合的に判断することとしております。
――駅構内から時計を撤去する理由は?
鉄道をサステナブルなもの(=持続可能なもの)とするため、維持更新投資(=設備の維持管理や劣化設備の取り換えにかける費用)の抑制やランニングコスト(=鉄道を維持・管理していくためのコスト)などの固定費の削減を一層、進める必要があります。
また、生産年齢人口が減少傾向にある中で、メンテナンスなどに係る人手の確保も、課題として認識しています。
そこで安全の確保を前提に、ご利用状況を踏まえながら、設備のダウンサイジング(=設備を簡略化、効率化すること)や低稼働設備(=主に業務用として利用している設備の中で使用頻度の低いもの)の見直しなどを、より積極的に進めております。
その一つが「駅構内の時計」です。
当社はこれまで、列車の発着時刻を知らせる補助設備として、駅構内の必要となり得る場所に時計を整備して参りましたが、「携帯電話・スマートフォンなどの普及によって、多くのお客さまがご自身で時間を確認する手段をお持ちであること」「駅の利用状況」「保守メンテナンスの軽減」などを総合的に勘案して、老朽による取り替えや更新時期を迎えた時計について、一部の駅構内で時計の設置の見直しを行うことにしました。
――駅構内の時計には、どのくらいのコストがかかっている?
駅構内に設置されている時計は、自動で時刻を整正(=正しく整えること)することができます。また、駅構内の地下など電波状況の悪い場所でも、同一時刻となるよう、通信ケーブルを配線しています。
時計や通信ケーブルについては、定期的な取り替えや故障修理が必要となっており、一定のコストがかかっております。
――約500駅に設置されている時計を撤去すると、どのぐらいのコスト削減になる?
概算金額となりますが、年間約3億円程度の削減効果を見込んでいます。
利用者「駅で時間が確認できず不便」
――時計の撤去について、利用者からはどのような声が寄せられている?
お客さまからは「駅で時間が確認できず、不便である」などのご意見をいただいています。
――利用者の意見をどのように受け止めている?
お客さまにはご不便をおかけすることもあるかと存じますが、ご理解をいただけますよう、お願い申し上げます。
――何年かけて、残りの時計の撤去を進める予定?
今後、10年程度をかけて、時計の撤去を進める計画です。
――ゆくゆくは全ての駅から時計を撤去する考え?
現時点では、そのような計画はしておりません。
JR東日本が進めている、駅構内の時計の撤去。「携帯電話・スマートフォンなどの普及によって、利用客自身が時間を確認する手段を持つようになったこと」などを総合的に勘案して決定したということで、時代の流れやライフスタイルの変化にあわせ、駅構内の時計の在り方が変わりつつあることを感じる。
これまでは駅に時計があるのが普通だったが、これからはその当たり前が変わっていくということなのかもしれない。