トヨタ・アドハラで見えた会社側の立場、候補者の立場
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記事後半は『PRESIDENT』4/14発売号『ライバル対決!「年収と出世の階段」全図解』原文。 |
- Digest
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- アドハラの本質
- 自動車産業にスーパースターは不要
- デキない8割の人たちをどうモチベートするかが大事
- 40代半ば、同期で600万の開き
- アカデミックエリート優遇の傾向
アドハラの本質
玄関取材ほど実りないものはない。出てくるのは公式発表、大本営発表ばかりで、本当の話はしてもらえない。給与についても、立場上、答えられない。特にネガティブな話はご法度だし、出世競争の話も予想どおり「人事秘です」と言われた。だから私は、いつも広報を通さずに社員を取材している。
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上:トヨタ自動車東京本社。 下:1Fエントランス。大学別の事実上の選考会をやっていた。まだ3月28日なので、倫理憲章違反の疑いが強い。 ![]() |
では、なぜ広報取材が必要なのかというと、「人事秘」がマスコミに出て、トヨタ社内で問題視された場合に、抗議を受けるプレジデント社側としては「丁寧な取材に基づいた記事だ、実際、正式に広報部にも趣旨を説明して取材に行き、確認したでしょう」と言えるからだ。
さらに、どうしてトヨタに限って玄関取材が必要なのかというと、強力な広告主(日本一の年1千億円超)で、かつその立場を利用するからだ。記事が載った同じ号でもトヨタの広告が出ているのだから、気を遣うのも仕方がない。だが、余計な取材時間をとられる私から見たら、これは「アドハラ」(アドバタイズメント・ハラスメント)ともいうべきものだ。
もちろん、トヨタは「そのような圧力はかけない」と否定する(玄関取材時も否定した)。ではなぜ長坂嘉昭編集長がトヨタだけに行ってくるよう言わねばならないのか、説明がつかない。過去の経験や事例から類推して、「やはりこの内容だと、人事秘データだし、行っておいたほうが無難だろう、後で何されるか分からない」と判断したわけである。
『 松下が『宝島』に圧力 警察天下り受け入れの特集6ページがボツに』も同じ構造だが、こういった見えない圧力によって自主規制に追い込むことこそが、ホンモノの圧力、言論弾圧の本質なのだ。
自動車産業にスーパースターは不要
玄関取材で広報担当者が言った話を書いておこう。人事部門に在籍経験もある基幹職2等級のベテランで、かなり社内事情に熟知している様子だった。
給与テーブルがいくらかは、人事秘ですので、出しておりません。報いてあげられる人の数が限られているので、多めに貰えない人をモチベートすることを考えると、公表すべきかは、微妙なところです。自動車産業というのは、スーパースターがいて、その人の力で引っ張れる産業ではない。チームでやらないと。部品点数が多いので、販売も製造も力を合わせてやらないと。
デキない8割の人たちをどうモチベートするかが大事
どの会社でもそうですが、デキる人は2割で、8:2とすると、デキない8の人たちをモチベートして仕事をさせることを考えるのが大事なんです。実際、多めに貰えている人について考えても、お金のことを考えたら、ほかにもっと高い給与の仕事はたくさんありますから、公表するメリットは少ないでしょう。
これが会社の立場からの論理だ。人は立場によって考え方が変わる。これが現在、社員になるか考えている候補者の立場からは、正確な事実を事前に知らせて当然だろう、報酬や出世の仕組みが分からないのでは人生設計できないではないか、となる。自分がデキる2割に入るのか、デキない8割に入るのかは入社前は分からないにせよ、いずれにせよ、相場をつかんでおく必要があるのだ。
そこに、この記事の付加価値がある。以下が、掲載記事の原文である。アドハラをしてでも出したくないトヨタの「人事秘」情報が満載である。
【トヨタvs ホンダ】
トヨタとホンダを比べると、トヨタのほうが、選抜が厳しく、ホンダはぬるい。 トヨタ社内で、社員のほぼ全員が意識している用語がある。「特選」「一選」「二選」「三選」「四選」、そして四選にも漏れてしまった社員が臨む、確率的には絶望的に近い「復活枠」。
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出世の仕組みと報酬水準の図解。 上:トヨタ自動車 下:本田技研工業 ![]() |
これらはつまり、同期入社組で昇格する順番であり、要するに、昇格対象者は、入社年次で上下4年だけ、ということを差す。チャンスは年に一度で
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出世の仕組みと報酬水準の図解。上:シティバンク下:みずほ銀行
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読者コメント
世界の真実や仕組みを知ったのではないだろうか。しかし、奥深くまでは知らなかったはず?
ですが、きっともうきっと気付いておられるような気がします。
ここからは個人的な私見でしかないが、名の知れた大企業或いは軍用転換可能な技術を持った企業が多かれ少なかれ軍需関連の業務を請け負っていることが恐らく珍しくはないとは言え、もしトヨタが危ない橋に関与しているとすれば、下述した出来事が発端となった可能性が懸念される。
奥田氏は、現地で同地の政商と交流し、それにより、自分は絶対に企業経営を成功させることが出来ると自信を持ったと述べられています。
それは、創業家である章一郎氏の娘婿(財務省官僚)が同じく仕事でマニラに派遣されていた為、章一郎氏が娘に会いに現地に赴いた際、奥田氏がその世話役兼案内をしたことがキッカケになったと思われる。
章一郎氏は、官僚めいたトヨタ幹部と違い、奥田氏に新鮮な印象を抱いたそうである。
トヨタの奥田会長は、同社の経理畑出身。
業務で上司と意見が合わずに半ば左遷の形でマニラに7年間も飛ばされていた。
そんな同氏が何故トヨタの社長、そして経団連会長職にまで着任するに至ったのか?
プレジデント買いました。ホンダにいる友達が「そのまんまやん」と笑ってましたけど。のんびり屋さんなんだから、もう。
他の記事や一部読者も指摘なさるように、コンビニ・ファストフードのフランチャイズ方式や派遣労働も、ひとえに使い捨て要員の「歩留まり」に依存したマルチまがい、マルチそのものですね。しかし使い捨て要員が尽く破産したらシステムも破綻します。堤未果のルポを読んでいると、この種の破産・破綻を救うのは移民政策(外国人労働者)か戦争。トヨタはシステム維持のためにこのどちらかに加担していませんか。いや、いますね。
『トヨタの闇』と併せて拝読しました。トヨタシステムの要が収益の再分配法、つまり人事システム(給与体系・キャリアパス)にあることを痛感します。「人間」として認める範囲を狭めると声なき声を抹殺しやすいこともよくわかります。末端の使い捨て要員(派遣・期間工)を大量調達・消費・廃棄することで成り立つシステムが、使い捨てにそぐわない教育・福祉等の人権に絡む公共サービスにも着々と浸透しつつある怖さを感じます。
人事の間では、よく聞く話ですが、やっと公になったかという感じです。広告主が絶対の日経などは書かない話題ですね。これからも、是々非々で
企業について書いて下さい。応援しています。
電機と同じ道を歩むかも?
以前に見た新聞記事によれば、トヨタではサラリーマンの出世は運が9割といった認識も持ち合わせているとか。良い上司に巡り会えなかった人でもスキルアップを果たすにはどうすればよいかまで考えている所はさすが。
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